バリアートショールーム オーナーブログ
2015.2.18

バリの神様① 芸能の神様 サラスワティ

こんにちは、坂本澄子です。

「神々の島」バリ島はたくさんの神様に守られた島。バリの人たちは本当によくお祈りをします。神様への感謝を忘れないのですね。バリの神様は絵画の題材としてもよく取り上げられています。そこで、今日はバリの神様をご紹介したいと思います。

芸能の神様サラスワティ

日本で言えばさしずめ弁天様でしょうか、学問と芸能の女神です。バリのウク暦では210日1度、この神様を讃える日が巡ってきます。今年は5月2日(土)。

この日は本や教科書、舞踊に使われる仮面や冠を村のお寺へ供えに行き、敷地の一角にある家寺に供物とともに捧げます。学校も授業はおやすみ。子供たちは正装して学校に行き、お祈りをして帰ってきます。

ブログ198_サラスワティサラスワティは写真のように4本の手を持つ、大変美しい女神として描かれます。それぞれの手には、ロンタール椰子の葉、伝統弦楽器レバブ、鎖、蓮の花を携えています。

知恵や勉学を象徴するロンタール椰子。昔は紙の代わりにこれに経典を書いてお祈りの際に使っていたのだそうです。レバブは文化・伝統・芸術の発展を表します。また、足元に描かれている白鳥は善悪を見分けることができるとされているんですよ。

『サラスワティ』アクリル画 75cmx50cm 128,000円

この作品はウブド・スタイルと呼ばれる、伝統絵画+西洋絵画が融合し1920年代に誕生したスタイルです。キャンバスの端から端まで細密に描き込まれた美しさはバリの伝統絵画を受け継ぎ、生き生きとした人物描写は西洋から学びました。

ブログ198_サラスワティ2 ブログ198_サラスワティ3

 

<関連ページ>

バリ絵画の主要スタイル

『サラスワティ』作品詳細

2014.10.29

目に見えない大切なこと

こんにちは、坂本澄子です。

ウツワツ寺院より海を感じるこの写真を見てください^o^

この壁の向こうに、見えないけど、地平線まで続く蒼い海を感じませんか?

バリ島最南端。断崖絶壁に建ち、インド洋に沈む夕陽の美しさで有名なウツワツ寺院です。でも、そのことを知らなくても、波の音が聴こえてくる気がするのは、この写真が「見る人の想像力を喚起する」からなのでしょうね。

PS005絵にもこれと同じだと思うことが時々あります。淡く霞むような描き方が、そこに暖かい空気を感じさせ、さらにその向こうに続く景色を想像させる。例えば、ガルー(GALUH)さんの『早暁の静謐』のように。

それとある意味、対極にあると思っていたのがソキ(SOKI)さんの絵でした。

鮮やかな極彩色で、実に細かく描き込んであります。想像して愉しむというより、そのものを見て楽しむ作品だと思っていました。

でも、ソキさん自身からこの作品の説明を聞いたとき、見方が変わったのです。

OY001『バリ島2 〜誕生・生活・死〜』は、人生の様々な局面における祭礼と神々との関わりを描いてほしいと依頼された作品。

「正直、最初は戸惑いました。神様を描いたことがなかったので」とソキさん。

確かに、いつもは神様の姿は描かれていません。でも、ソキさんはご自分の絵を通じて、神様によって守られ、秩序だてられたバリ島の世界観という「目には見えないもの」を表現し続けているのではないかと、思い至ったのです。

80cm×100cmのキャンバスに約20の場面、100人以上の人がぎっしりと描き込まれていますが、ひとりとして意味なく描かれている人はありません。誰もが、それぞれの場面で重要な役割を担っています。

昔読んだ本の「大切なものは、目に見えない」という一文を思い出しました。サン=テグジュペリの『星の王子さま』です。

私たちって、つい目に見えるものばかりを追ってしまいますよね〜。

ソキさん自身にこの作品について語ってもらいました。3分のムービー、ぜひご覧になってみてください!

 <関連ページ>

「神々の島〜バリ島を描く」Youtube

「2つのバリ島」作家自身が語るこの絵の見どころ

 『バリ島2〜誕生・生活・死〜』・・・注文制作を承ります。詳しくはこちらを

 

2014.10.22

注文制作であなただけの一枚を

こんにちは、坂本澄子です。

少し前のことですが、お客様から「5羽の野鳥の絵が欲しい」とのご相談がありました。バリの野鳥画と言えばつがいが定番。

「え、5羽ですか?!」

ブログ175_5羽の野鳥聞けば、奥様とお嬢様3人の5人家族。森で楽しげにさえずる野鳥たちの姿に、ご家族を重ね合わせたのだそう。

上のお嬢様おふたりは既に成人されており、独立される日もそう遠くないかも知れません。「5人揃って暮らせるのも…」、そんなお父さんのちょっぴり切ないお気持ちがひしひしと伝わってきました。

こんなふうに大切な人との絆を絵で残す、素敵ですね。

新居への引っ越し、ご自宅のリフォームなど、住まいの変化をきっかけに絵を初めて購入される方、結構多いんです。そんなとき、何点も同じものがある版画ではなく、世界でたった一枚の絵、それも、大切なものを託した「本物の絵」を飾ってみませんか?

PP027例えば、蓮池を題材にするなら、友人が訪ねてくれる賑やかな家をイメージして、蓮の花をたくさん描いてもらう。あるいは、奥様と2人を大輪の花に見立てて、やがて生まれてくる子供たちをかわいい莟で表現してみる…とか^_^

こうすることで、いつか「そういえば、あの頃は…」って、歩いてきた道を振り返って、ひとまわり成長した自分と家族を感じることができると思うのです。

「バリアートショールーム」では、注文制作をお受けしています。画家のご指名ももちろんOK。

「でも…、注文制作は高いでしょ?」

いえいえ、そんなことはありません。画家とサイズが同じなら、基本的にはサイト掲載作品と同じ価格です。バリからの配送料の半額だけご負担下さい。

注文制作はこんなふうに進めます。まずは、お問い合わせフォームからお気軽にご相談下さい。

<関連ページ>

ご注文制作の流れ  題材の選び方、経過報告、お支払いなど、作品お届けまでの流れ

 

2014.10.4

想像力up講座:その視線の先にあるものは?

こんにちは、坂本澄子です。秋も深まってきました。空気が澄んで、昼間の景色も夜の街灯りもとてもきれいですね〜。

前回から大人の絵の愉しみ方をご紹介していますが、風景画を愉しむコツは「その風景の中に自分も入ってみること」だと私は思います。

ブログ169_豊穣の女神

そこで、今日はアンタラさんの最新作『豊穣の女神』の風景に入り込んでみたいと思います。

さっそくむっとした熱さが感じられましたか?では、そこには何が見えますか?

やはり、真っ先に目の前の美人に目が行きますよね〜。これはバリ島の神様なんです。『神々の島』バリ島にはたくさんの神様がおられますが、ここに描かれているのは、デウィスリ(Dewi Sri)という「豊穣の女神」なんです。

その他には何が見えますか? 人がたくさんいますね。

171_祈るちょっと拡大してみます。 この小さな塔みたいなものはDewi Sriを祀った祠(ほこら)で田圃ごとに建てられています。右側でひざまずいている女性は豊作を感謝しているようですね。左側の男性は? 丸く束ねられたものがいくつも見えますね。これは刈り取った稲を束ねたものですが、丸い形になるのは、穂先だけを刈っているからなんです。

ブログ171_バンジャールあたりを見回してみると、たくさんの人がいます。何だか楽しそうに働いています。誰々のところはこの前子供が生まれて…、なんて明るい声が聴こえてきそうです。バリ島にはバンジャールと呼ばれる村人たちの自治組織があり、隣組ごとに共同で、農作業、冠婚葬祭、宗教行事など、生活全般に渡る様々なことにあたっています。実りは、家族や隣人たちとの関係を豊かに潤し、それは神様から来るものだと、アンタラさんが教えてくれました。

あなたにはどんな音が聴こえますか。匂いはどうでしょう。

少し先には川が流れていますね。バリ島では雨は北部の山岳地帯に多く降り、その雨水が南部の平野部へと流れますが、1000年以上も続くスバックと呼ばれる仕組み(水利組合)があり、田圃に平等に水が行き渡るようになっています。このスバックのお陰で、バリ島には水を巡る争いがほとんど起こらなかったと言います。

ブログ171_デウィスリ彼方の上空には鳥が群れをなして飛び、どこまでも続く地平線を見ていると心が次第に開いていきませんか。では、ゆっくり視線を手前に戻してみて下さい。稲穂が重そうに実り頭を垂れています。ゆっくりと女神に視線を戻してみると、慈悲に溢れたお顔。でも、女神は一体何を見ておられるのでしょう。この視線の先には何があるのでしょうね。

自由に想像力を働かせて考えてみて下さい。

<関連ページ>

アンタラ特集ページ

アンタラ作品紹介

 

2014.10.1

大きな絵の持つ魅力・魔力② 大人の絵の愉しみ方

こんにちは、坂本澄子です。今日から10月ですね。私が秋の生まれだからなのか、それとも気候のよさがそうさせるのか、色んなことをモリモリやってみたくなっています^_^ あなたはいかがですか?

前回、大きな絵には全体の構図や絵を構成する要素に、画家としたの色んな工夫や苦労があるというお話をしましたが、今日はその続編として、大人の絵の愉しみ方をご提案したいと思います。

美術館やギャラリーで絵を見るときって、どんなふうに見ておられますか?「わあ、きれい」「おもしろい」といった第一印象だけで終わっていたり、はたまた、キャプションをじっくり読んで、「そうか〜」と妙に納得してたりすること、あったりしませんか? 最後にショップで図録を買うと、何だか「見ました」って気持ちになりますよね。そう言えば、小学生の頃、プリントを提出すると、「みました」スタンプが押されて返ってきましたが、ちょっと似てるかも..です(^o^; 実は、私もかつてはそんな一人で、特に誰もが知っている名画と呼ばれる作品だと「この作品はこう見るもの」という先入観に捕われていました。

ブログ170_絵のはじめそんな私の絵の見方が変わってきたのは、バリ島で画家のアトリエを訪問し、絵の描かれるプロセスを見せてもらうようになってからなんです。ほとんどの画家は新たな作品に着手するとき、イメージした構図に従って、キャンバス上に大まかに色をおいていきます。右の写真はその第一段階が終わったところです。旧約聖書の創世記に、神様はまず天と地を創造された。そして「光よあれ」と言われると光が現れた。そして、光と闇を区別されたというくだりがありますが、まさに天地創造をキャンバス上で実行している感じです。

7割完成

7割完成したところ。この後に人物が描かれ、物語性が付加されました

で、構図を作った上に構成要素を描いていくのですが、この時、あたかもその風景の中に自分自身もいるかのような感覚で、見えるものを描いていくのだそう。そこには、風があり、花の香りがただよい、川のせせらぎが聴こえているかもしれません。五感を働かせて感じるものを描いていきます。そして、人物を描くときには、その人と自分の関係。自分自身を描いているとすれば、その時の心情など、細部に渡って描き込んでいきます。

描き手のそのようなプロセスを経て絵が完成しているのであれば、見る方もその絵の中に自らを置いて、五感を働かせてみるのはいかがでしょうか。例えば、小説を読んでいるとき、自然に感情移入し、その物語の中に自分もいるかのようにハラハラしたり、喜んだり、時に涙したりしてますよね〜? それと同じことを絵でもやってみませんかということなんです。 すると、また別の見方ができ、ひとつの作品に奥行きができると言いますか、立体的な愉しみ方ができますよ。

そんなこともあって、最近どうも大きな絵に惹かれてしまう私です^o^ アンタラさんの最新作『豊穣の女神』もそんなプロセスを踏んで描かれています。次回、そんなお話も織り交ぜながら、続きをお話しま〜す。

季節の変り目、お身体に気をつけてお過ごしくださいね。

 

2014.5.10

バリアートのある暮し⑩ バリ舞踊を通じて繋がった縁

こんにちは、坂本澄子です。

国立市S様投稿写真3月の1周年記念展示会、大雨の中来てくださったNさんから写真が届きました。

東京郊外にご主人とお住まいのNさんはバリ舞踊を始めて10年。現地の先生から直接指導を受けるために毎年バリに渡っては、技術や表現力を磨いておられます。最近は舞台に立つことも多く、私がNさんに初めてお会いしたのも、渋谷のバリカフェ「モンキーフォレスト」でのライブ講演でした。

ブラウンを基調にシックにまとめられたリビングからも、バリに特別な思いを寄せておられることが伝わってきます。バティックがタペストリー風に飾られた壁面にANTARAさんの木炭デッサン画がしっくりと馴染んでいますね。

最初は花鳥画にも惹かれておられましたが、画家のANTARAさんがバリ舞踊を題材に子供たちを描いているのを見て、ご自身のバリに対する思いに繋がる何かを感じられたようです。

そこでバリ舞踊について色々と教えていただきました^_^

「バリ舞踊は毎日どこかしらの寺院で行われているオダランに神様をお招きして喜ばせるものなんですよ」とNさん。

アンタラ作品オダランというのは各家にあるファミリーテンプルもあわせるとバリ島の人口に匹敵すると言われるほどの数にのぼるお寺の創立記念祭、バリ暦にそって210日に一度行われています奉納舞踊は観光客向けのプログラムとは異なり、お寺の境内で舞う神聖なもの。

「今でこそ誰でも踊れるようになりましたが、昔は選ばれた人しか踊れないものでした。たくさんの子どもが集められ、そのなかから選ばれた子どもが寺院に預けられて踊りを習ったという、いわば巫女的なものだったそうなんです」

アンタラ作品2ー なるほど、それでNさんはANTARAさんの作品集をあんなに熱心に見ておられたのですね。

「舞踏用の衣装はほとんどが寺院やサンガル(踊りや楽器のグループ)やバンジャール(村組織)の所有物です。 有名な踊り手さんの場合は自分の衣装を持っていたりしますけど。 なかでもグルンガン(冠)には神様が宿ると言われ、寺院に保管されて門外不出のものごあったり、使う前にお坊さんにきちんとスンバヤン(ご祈祷)してもらったり、絶対に腰よりも低いところに置かないなど大切に取り扱われているんですよ」

ー バリの人々にとって舞踊は特別なものなんですね。

アンタラ作品3「本当に奥が深くて、やればやるほど自分がまだほんの入口にしか立っていないと痛感します」

ー なんだか、またバリに行きたくなりました。日本でバリ舞踊が見れる機会ってあるんでしょうか。

「8/2(土),3(日)に東京・阿佐ヶ谷の神明宮という神社で、阿佐ヶ谷バリ舞踊祭という大きなイベントがあります。 関東のバリ舞踊家が100名くらい出演する大きなイベントで、ガムランの生演奏もすごい迫力です!」

舞踊だけでなく、絵画、音楽、彫刻、織物、金銀細工など、バリの芸能・芸術は降臨された神様をもてなすことから始まりました。バリ絵画に向き合うとき、愛や平安な心、厳かな静けさといったものを感じるのは今でもその源流が受け継がれているからかも知れませんね。

<関連サイト>

ANTARA作品ページ ページの下の過去作品のコーナーにかわいらしい子供たちがいますよ

阿佐ヶ谷バリ舞踊際 昨年の写真がたくさん掲載されています

 

2014.4.12

2本の染め糸が織りなす奇跡の模様グリンシン

こんにちは、坂本澄子です。

「バリアートショールーム」一周年記念展示会の2日目(3月30日)のこと。東京の天気は雨と強風で大荒れ。「これじゃ、お客様に来ていただけないなぁ」とため息をついていたら、ガラスの向こうから傘を持って歩いてくる人影が。よく見ると、バリ舞踊をされているNさん。きれいでやさしくて、昨秋公演を見せていただいて以来のファンです。

グリンシンの衣装に身を包んだ少女たちそのNさん、アンタラさんの個展の作品集をご覧になると興奮気味に「これ、すごいですよ!」。何だろうと覗き込んでみると、舞踊衣装に身を包んだ少女たちが描かれていました。

「これはトゥンガナン村に伝わるグリンシンというとても珍しい織物なんですよ」とNさん。

通常、イカット(絣(かすり)は緯糸か経糸のどちらかを染めて織るのが一般的ですが、このグルンシンは経糸、緯糸の両方をに染めて織るため、ダブル・イカットとも呼ばれています。縦横の糸の柄が合うように、点と点を合わせていくとても緻密な作業を繰り返し、完成して初めて模様になるというもの。高度な技術を要するため、この技法が見られるのは世界でもバリ東部にあるこのトゥンガナン村、インドのパトラ、そして日本の結城紬、備前絣、芭蕉布、大島紬だけなのです。

下の写真の左がイカット(絣織り)、右がダブル・イカット(グリンシン)です。

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赤・黒・白の3色を用いますが、これはヒンドゥ教の3大神であるブラフマー、ウィシュヌ、シヴァを表す色で、グリンシンという言葉の意味はグリン(=病気)、シン(=なし)、つまり無病息災への願いが込められているというわけです。この貴重な織物、トゥガナン村では奉納舞踊などの祭事の盛装として大切に用いられているそうです。

グリンシン拡大図「バリで時々見かける踊りの絵は、衣装の描写が適当だったりするのですが、アンタラさんの絵はとても丁寧に忠実に描いていらっしゃいますね」とNさん。

そうなんです^o^ アンタラさんは美術大学(the Indonesian Fine Arts Institute)で西洋絵画を学んだ画家ですが、絵の題材はバリの伝統的なものを取り上げています。在学時に最優秀デッサン及び絵画学生として表彰された程の写実描写力を持ち、卒業後わずか3年で「バリ・アートフェスティバル」の招待画家になるなど早くから頭角を現しました。人物はもとより衣装の生地にもこだわり(写真)、模様の美しさや丁寧に織り込まれた質感が伝わってきます。

ところで、現在バリに住む人々の多くは14世紀にお隣のジャワ島から渡来した人たちの子孫、トゥンガナン村の村人たちがいわゆるバリ島の先住民と言われています。今でも純血を保つために村人以外との結婚が許されていない特別な村だとか。またまた、ミステリアスなバリの一面を見せてもらいました。

アンタラさんのどの作品も衣装が素敵ですよ。過去の作品(折りたたんである部分)も見て下さいね。

 *****

出典:日本船主協会「海運資料室」

出典:日本船主協会「海運資料室」

さて、ここで前回のクイズの答えです。正解は「東京湾から出て行くところ」です。この船、タンカーなのですが、東京湾に入ってくるときは船内のタンクに石油をたっぷりと載せているので、その重みで船体の中程まで海に沈みます。あの写真はぷっかりと浮いてる感じでした。これはつまり空になった状態ということなのです。ちなみに水面に浮かんだ線を喫水線と呼ぶそうです^o^

<関連サイト>

ぶらりっ バリ雑貨の旅 ・・・ 私の大好きなピュア☆ラ☆バリのナナさんのブログから写真と文章を参考にさせていただきました。いつもながらナナさん、取材力がすごいです!

2014.3.15

観光客とバリの人々との出会いを描く

こんにちは、坂本澄子です。

前回のブログで、ユニークなおサルさんの絵で有名なASTAさんをご紹介しましたが、実は他にも気になっている画家さんがいるんです。

I Ketut Sadiaさん。ジャーナリズムや観光客とバリの人々の出会いを題材に取り上げて注目を集めている画家です。

SADIA作品ウブドから車で30分、バトゥアン村に彼のアトリエを訪ねてみました。ここはオランダ植民地時代も外国人が少なかった地域で、そのため西洋絵画の影響を受けず、バリ伝統絵画の特徴が現在も色濃く残っています。暗めの色彩を用いて神話などの場面をぎっしり描き込むのがこのスタイルの特徴の中、Sadiaさんのポップで明るい作風は異彩を放っていました。

実は、Sadiaさんを紹介してくれたのは、同じく画家の兄のBendiさんなのです。アジア芸術への玄関口としての役割を担う福岡県立美術館。ここで企画展を行ったこともあるというBendiさんの作品をプリ・ルキサン美術館で見てご自宅を訪ねたのです。アトリエにはたくさんの作品があり、どれもすばらしいかったのですが、お部屋に飾ることを考えたときに、バトゥアン・スタイルに特徴的な暗めの色遣いがちょっと気になりました。するとBendiさん、「弟の作品なら気に入るんじゃないかな」となった訳です。

制作中のSadia氏アトリエに伺った時、Sadiaさんは写真のように大きな作品を制作中。中国の方からの依頼とのことで、中国風の建物とバリの人々が描かれていました。そういえば、ここ数年中国からの旅行者が急増しており、バリと中国を融合させた作品の注文が多いとか。日本+バリをテーマに描いてもらうとどんな作品になるのでしょうね。いつかお願いしてみたいと思っています。

バトゥアン村ところで、バトゥアン村はウブドとは趣が異なり、時の積み重ねを感じるしっとりした住宅街です。どことなく生まれ故郷の街並みに似ているような気もしますね^_^

「バリアートショールーム1周年記念 展示即売会」では、バリ絵画の様々なスタイルの作品約40点がご覧いただけます。バトゥアン・スタイルARIMINI氏の作品を展示します。ぜひ遊びに来て下さいね。3月29日(土), 30日(日)@表参道でお待ちしています!

「バリアートショールーム1周年記念 展示即売会」開催概要

 

2014.3.12

個性を持った動物が楽しい

こんにちは、坂本澄子です。

河津桜先日、南房総に出かけました。早咲きの河津桜、以前は伊豆半島の南にある河津町まで行かないと見れませんでしたが、最近では河津町から贈られたという苗木が千葉県のあちらこちらに植えられており、千倉のお寺の境内でも美しい濃紅の花を咲かせていました。地面にはノースボール(マーガレットに似た白い花)が一面に咲いていて、一足早い春の一日。東京はまだ寒〜いと思いながらふとみると、お向かいの高校の桜の莟も大きくふくらんで、今か今かと春を待っていました。

この春、新たな門出を迎える方も多いのでは。「絵のある暮らし」を始めてみませんか。美術館に行った時だけ見るものでもなく、ポスターや版画のように印刷されたものでもなく、作家の思いやエネルギーがぎっしり詰まった生の作品に触れる毎日、いいですよ。嬉しいときも哀しいときもそっとあなたによりそってくれる一枚の絵を探しませんか。「バリアートショールーム1周年記念 展示即売会」ではバリ絵画の一流・実力作家の作品40点を展示します。ぜひ見に来てくださいね。

さて、今日は芸術における動物のお話です。

サルの石像バリに行くとまるで人間みたいに個性を感じる動物の石像や絵画に出会うことがあります。

例えば、ウブドのモンキーフォレスト。自然の地形を生かした奥行きのある広い園内には、何千匹というおサルさんたちが生息しています。ここに置かれたたくさんの動物たちの石像の表情豊かなこと。赤ちゃん2匹をだっこ&おんぶしているこのおサルさんもまるで肝っ玉母さんって感じじゃありません?

絵画の世界でも動物たちがユニークな存在として描かれた作品がたくさんあるんです。

「Celebration」I Wayan ASTA プリ・ルキサン美術館所蔵

「Celebration」I Wayan ASTA
プリ・ルキサン美術館所蔵

初めてウブドでアトリエ巡りをしたときに気になった画家さんがいました。ASTAさん。サルを主人公に神話、現代生活など様々な題材を描く作品に定評があり、プリ・ルキサン美術館にも作品が展示されています。(写真左)

運動会の親子のサルたちの人間臭い表情、そして、毛の一本一本まで神経を集中して描いたとわかる緻密な仕上がりに、しばし釘付けになりました。

 

出典:画家名鑑「BALI BRAVO」

出典:画家名鑑「BALI BRAVO」

翌々日、常宿のご主人テギさんにお願いしてASTAさんのアトリエに連れて行ってもらいました。さすがバリの村組織。しかも同じ画家ということで多少面識もあったようです。そうそう、テギさんは元は画家なのです。

アトリエで見せていただいた作品は、ゴルフ場でプレイするおサルさんとギャラリーという設定の擬人化されたおサルさんたち。ぜひ作品を扱いたかったのですが、作風を生かすために最低でも新聞紙見開きくらいの大きさからしか描かないとのことで半年〜1年かけてようやく1点仕上げているそう。この作品も行き先は決まっており、しばらく先まで予約で埋まっていました。仕方なく断念し、「また来ますね」と後ろ髪を引かれる思いでアトリエを後にしたのでした。でもまた、いつかご縁があればいいなあと思っています。

他にもバリ島の美術館では、興味深い動物画が色々見れますよ。

<関連ページ>

「バリアートショールーム」1周年記念 展示即売会

深い緑に包まれるような鳥獣画はいかが?

2014.3.5

「闘鶏」大地への流血で悪神を鎮める

こんにちは、坂本澄子です。ひな祭りも終わり、いよいよ春がやってきますね。

精霊の通り道「神々の棲む島」バリ島。バリ・ヒンドゥ教には古来からの精霊信仰が融合しているので、精霊ロ・ハルス(Roh Halus)を敬う風習が今でも残っています。ウブド市街地のところどころに作られた細い路地。祖先の霊や精霊の通り道と言われているんですよ。自治体や地域住民がお金を出し合って作っているそう。年配の人ほど信仰深く、この女性もここを横切るときにそっと黙礼をしていました。

天界の神に対し、地界には悪神ブト・カロ(Bhuta Kala)がいて、人間を病気や災いで苦しめると言われます。神々や精霊への供物はチャナンと呼ばれて祭壇に置かれますが、悪神ブト・カロが悪さをしないように地面に供える供物をチャルと言います。闘鶏による大地への流血もこの悪神への捧げものとされているんです。

今日はその闘鶏のお話。

バリの民家の軒先に1羽ずつ竹で編んだ籠に入れられた雄鶏をよく見かけます。これは闘鶏用に男たちが手塩にかけて(まるで恋人のように!)育てているもの。一旦負けてしまうと、即刻肉にされるという過酷な運命が待ち受けていますが、これが村の男たちにとっては儀式であると同時に、何よりの娯楽なんです。

しばしば絵画のモチーフとしても取り上げられます。写真の2点はプリ・ルキサン美術館所蔵の作品で、いずれもウブド・スタイルで描かれたもの。男たちがそれぞれの場所を陣取って闘鶏に興じている姿が生き生きと描かれていますね。オランダの植民地だった1920年代にルドルフ・ボネなど西洋画家の影響を受けて、骨格や筋肉を意識したよりリアルな人物像が描かれるようになりました。庶民の生活が題材として登場するようになったのもこの頃です。

闘鶏

闘鶏(プリルキサン美術館所蔵)

ところで私、ニワトリと言うとちょっと哀しい思い出が…。子供の頃ニワトリを飼ったことがあるんです。お祭りの夜店で買ったヒヨコのピーちゃんが大きくなり、白い大きなニワトリ(ハクショクレグホン)に^^;  それが毎朝5時前からコケコッコーと鳴き出すので、ご近所迷惑とうちの母がハラハラしどおし。そして、ついにある日、知人の田舎に連れていかれちゃったのです。「広い場所に行けてよかったじゃない」と母。ところが20年以上も経った頃、もう時効だと思ったのか、「実はあれは食べられたのだ」とカミングアウト。「えー、何。いまさらっ(泣&怒)」

だからという訳ではありませんが、「バリアートショールーム」には残念ながら闘鶏の作品はありません(^0^;  でも、豹やカエル、文鳥などを描いたユニークな鳥獣画はありますよ。3月29、30日の「バリアートショールーム1周年記念 展示即売会」@表参道で全作品(約40点:バリ直送品を除く)を公開。是非見にきて下さいね。開催概要はこちらです。