バリアートショールーム オーナーブログ
2013.3.9

画家紹介②「バリ写実人物画の旗手 アンタラ」

手前の作品に釘付け。階段で微笑んでいるのは夫人のスアーディアラさん

手前の作品に釘付け。階段で微笑んでいるのは夫人のスアーディアラさん

こんにちは、坂本澄子です。

初めてアンタラさんの自宅を訪ねた時、私の目は階段に沿って掛けられたいくつかの絵のひとつに釘付けになりました。朝の湖のほとりで祈りを捧げる司祭。その清々しさにまるで心洗われるようでした。湖面、遠景の大地、そして空、それぞれが違った表情の青で描かれ、雲間から差し込む朝の光にしばし厳かな気持ちになったのでした。それから、作品たちに誘われるように二階へ上がるとそこが彼のアトリエ。大きなキャンバスに向かって絵筆を取っているのが写実人物画家イ・ワヤン・バワ・アンタラさんその人でした。

モデルがそこに立っていると見まがうほどの写実力

モデルがそこに立っていると見まがうほど

それまでにも氏の作品は見ていましたが、いずれも画家の愛情に溢れる眼差しを通して瑞々しいタッチで描かれており、その人物の持つ崇高性が強く表現されているのを感じていました。バリの伝統文化をモチーフにした人物画を得意としています。子供の弾けるような笑顔だったり、舞踏が始まる前の緊張した表情だったり、あるいは母と子の優しい関係性であったりと、すべての作品が温かな愛情、楽しさに包まれています。それを表現するのに一役買っているのがバリ島の砂。これを絵の具に混ぜてキャンバスの下地を作り、独特の柔らかさを出しています。

“Tell you a secret" おしゃまな表情が何とも可愛らしい

“Tell you a secret”
おしゃまな表情が何とも可愛らしい

最近の作品はシンガポールで行われた個展でほとんど売れてしまっていたため、作品集を見ながら、こんな感じでと伝えて出来上がった作品がこれです。イメージがぴったりな上に、途中経過を写真で送ってくれる画家はそれほど多くありません。注文を受けて肖像画を描くことも多いので、注文主とのコミュニケーションを大切にしているのでしょうね。38歳という実際の年齢よりも若く見えるのは、彼の持つ少年のような魂のせいかも知れません。

モダン画はバリ絵画の中では新しいジャンルですが、彼の作品はLARASATIなどの絵画専門オークションでも取引されており、今回セレクトした6人の中で私自身が最も期待している画家の一人です。

 

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2013.3.6

画家紹介①「静謐さ溢れる幻想風景画 ガルー」

こんにちは、坂本澄子です。 今回から6回シリーズで「バリアートショールーム」で作品を扱う画家たちを紹介していきます。第一回目はインドネシアを代表する女性画家ガルーさんです。 同じ女性だからという訳ではないのですが、正直なところガルーさんにはかなり入れ込んでおり、熱烈応援中です。初めてお会いしたのは、ジメジメと蒸し暑い雨期のこと。エアコンのないクルマで汗だくになって到着した私を迎えてくれたガルーさんは、そこだけ涼やかな風が吹いている、そんな印象でした。

シュピースとその作品「風景とその子供たち」

シュピースとその作品
「風景とその子供たち」

父親は高名な画家、 5人兄弟のうち4人までが画家というアーティスト一家。現代バリ絵画の父と言われるドイツ人画家ヴァルター・シュピースの影響を強く受け、その技法を深く研究しました。今や、シュピース・スタイル(熱帯風景画)では一二を争う売れっ子画家と言っても過言ではないでしょう。国内外からひっきりなしに注文が入り、先日アトリエを訪ねた時も着手待ちの大きなキャンバスが並んでいました。バリの画家名鑑に名を連ね、ウブドのプリ・ルキサン美術館でもその作品を見ることができます。 ブログ2_GALUH 多忙な毎日ですが、作品に対するインスピレーションを絶やさないためにも、散策を欠かさないそう。早朝、夜が明けきらぬうちに自らクルマを運転し、お気に入りの場所へ。そして、水田に映り込む空の色が刻一刻と変化していくのをじっと観察する、そんなインプットが心の内部に蓄えられていき、キャンバスの上に再構成されるのです。何よりもイマジネーションを大切にしているガルーさんならではのやり方だと感じました。 インタビュー中、一緒にいるとてもきれいな女性が気になったので、「一番下の妹さんですか?」と訊ねると、意外にも「娘よ」とのお返事。聡明で美しく、画家として成功、同じく画家のご主人に美人の娘さん。天は二物も三物も与えるのだと思った瞬間でした:)

【お詫び】ガルーさんは4人兄弟と記載しておりましたが、その後の取材で5人兄弟であることがわかりました。末の妹さんは舞踏家とのことで、本文を訂正致しました。(2013/06/21)

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2013.3.2

ご挨拶「青い海を描かない画家たち」

初めまして、バリ絵画専門サイト『バリアートショールーム』オーナーの坂本澄子です。4月下旬のオープンに先立ち、オーナーブログを開設させていただきます。今日はその第一回ということで、私のバリ絵画や当サイトに寄せる想いをお伝えしたいと思います。 バリ島というと、青い海に囲まれた南国のリゾート地をイメージする方が多いのではないでしょうか。それを仮にバリの「こちら側」とすると、私とバリの出会いは「向こう側」から始まりました。

ゆっくりと時が流れていく

ゆっくりと時が流れていく

「向こう側」ってどんな世界?「こちら側」が楽園なら「向こう側」は発展著しい新興国?

 

いえいえ、私は皆さまを懐かしくて、凛とした気持ちになれるような世界にご案内したいと思っています。

静謐な朝の風景

静謐な朝の風景

 

水田に映り込む空の表情

水田に映り込む空の表情

「向こう側」とはウブドを中心とした山側の地域。ここでは、白み始めた空の表情を水田が鏡のように映し出す頃、一日が祈りで始まります。どこまでも続く緑の田園風景が空と交わるあたりで、雲がゆっくりとその表情を変えていく、そんな世界です。

 

実は私、つい最近まで最もスピードが早いと言われる外資系IT企業にいましたので、このスローライフとのコントラストは鮮烈でした。でも、それがどこか懐かしいのです。なぜなのだろうと考えると、似ているのです、失いつつある日本の原風景に。夏休みに田舎のおばあちゃんちに泊まりに行って、いとこたちと今日はどんな冒険しようかみたいな、ワクワク感があるのです。日本にいながらそんな非日常にタイムトリップできれば最高だと思いませんか?  そんな訳で、ショールームは「青い海を描かない画家たち」による作品で構成していきます。 でも、バリの絵画もお土産屋さんで売っているようなものがたくさんありますよね。本当によい作品をご紹介するために、以下のような基準で作品を選んでいます。 1)モチーフ:バリの文化や自然の美しさを表現している作品 2)高い技術力・表現力:国内外での実績、客観的評価(美術館所蔵、受賞歴、オークションでの取引)が高い画家の作品 3)独創性:伝統技法に加えて表現者としてのオリジナリティを持つ作品 また、表現者たちの息吹を減衰することなくお届けするために、版画は扱わず、画家オリジナルの原画にこだわっていきます。 当ブログは毎週水曜日と土曜日に更新します。次回はバリ絵画の各スタイルを代表する6人の表現者たちをご紹介しますね。

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