バリアートショールーム オーナーブログ
2013.5.12

バリ旅日記① 所変われば品変わる

テラスに座ると、小川のせせらぎ、鳥や虫の鳴き声など、色々な音が聞こえてきます

テラスに座ると、小川のせせらぎ、鳥や虫の鳴き声など、色々な音が聞こえてきます

こんにちは、坂本澄子です。

昨夜遅く、無事ウブドに着きました。実は、乾季のバリは初めての私。満天の星空に迎えられ、今こうして宿のテラスで田園を渡る爽やかな風に吹かれていると、ますますバリが好きになってしまいます。画家さんとの打合せは明日からなので、今朝は少しゆっくりして、先程買い出しに行ってきたところです。額縁の試作品も見せてもらいましたが、あと少し手を入れるとぐっとよくなりそうです。それはまた改めてお知らせしますね。

さて、今日は珍しいものに出会いました。ウブド王族の葬儀です。火葬式は明後日とのことで、王宮前の広場では、ワデ(亡骸を墓地に運ぶための搭状の御輿)とランブー(亡骸を火葬するための牛を象った棺)が造営されているところでした。

これがランブー。 背中の部分が開き、遺体を入れて火葬する。

これがランブー。背中の部分が開き、遺体を入れて火葬する。

バデとランブー、そしてそれを運ぶ村人たちの姿は絵画のモチーフによく取り上げられますが、本物を見るのはこれが初めてで、思った以上に迫力ある姿にビックリ。これが墓地に運ばれていく様子はさぞかし壮観だろうと想いを巡らせたのでありました。ちなみに搭状のワデは層の数が3から11の奇数と決まっており、地位によって層の数、つまり高さが変わるそうです。塔の真ん中あたりに遺体が置かれるため、それを上げ下げするために、鉄パイプを組み上げた、バンジージャンプ台かと思うような階段が使われます。ワデもランブーも金箔をふんだんに使った装飾が施され、これが一瞬で燃やされ灰になってしまうのは残念なほどです。

一方、一般の人たちの葬儀はと言いますと、これがまた一風変わっていました。朝から宿の奥さんが何やら忙しいそう。聞けば親戚の葬儀の準備とか。私「今日ですか?」奥さん「いえ、来月です」私「???」聞き違いかと思いましたが、村人が亡くなると、一旦土葬した後、後日良いお日柄を選び、合同で火葬するのだそうです。今回もなんと31人の合同葬儀。費用もかかることなのですぐには火葬せず、後日合同でこれまた盛大に執り行うのがバリ流なのだとか。後日というのが何年も先になることも。所変われば品変わると言いますが、まさに!の体験でした。

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2013.5.8

バリ絵画を愉しむヒント③ 作品に見るバリの文化と風習

こんにちは、坂本澄子です。GWも終わり、昨日から仕事に戻られた方も多いことと思います。久しぶりに出社する日の前の晩はちょっと憂鬱でも、一日過ぎてしまえば不思議といつものペースに戻っているものです。今週もどうか頑張って下さいね。

GW中、私も嬉しいことがありました。3月にブログを先行して開始し、4月18日に全面公開した、この「バリアートショールーム」ヘの来訪者が1000人を超えました。いいね!やコメントをいただく度に励まされ、さらに内容を充実させていきたいと気持ちを新たにしています。それについては、また改めてお話させて下さい。

今日はシリーズ第三回、前回に引き続き、実際の作品を例にバリの文化と風習を見ていきたいと思います。今回はヤング・アーティスト・スタイルの第一人者、ソキさんの「実りの季節」を取り上げます。まず作品をじっくり見て下さい。これからお話することはどこ描かれているでしょうか。写真をヒントに見つけてみて下さいね。

ソキ「実りの季節」 アクリル/キャンバス

ソキ「実りの季節」
アクリル/キャンバス

日本語タイトルを「実りの季節」とつけましたが、実はこの作品には、①収穫期を迎えた田んぼだけでなく、田植えの水田、まだ実の若い青田も描かれています。バリ島では稲の三期作が行われているため、一つの絵の中に異なる成長段階の田んぼが混在することは珍しくありません。それだけ肥沃な土地なのです。そのため、バリの人たちは神や大いなる自然に対して祈りを欠かしません。

バリのヒンドゥ教には様々な神が存在します。宇宙の創造を司る神ブラフマー、宇宙の維持を司る神ウィシュヌ、宇宙の終わりに世界の破壊を司る神シヴァの三大神、そして女神たちもいます。これらはただ一人の神(唯一神)が別の現れ方をしたものとされています。農業に関係するのはデウィ・スリ。田んぼや稲の女神で、右手に聖水の入った壷を持った姿で描かれます。②バリで田園地帯を歩いていると、田んぼのところどころに灯籠のような形をした祠が見られますが(写真左)、これはデウィを祀ったもの。毎日の祈りと供物はもちろんのこと、収穫の季節には厚い感謝が捧げられます。③女性は供物などを頭の上に乗せて運びます。男性が肩に乗せて運ぶのと対象的ですが、バリの女性は働き者で、最近では建築現場で資材を頭の上で運ぶ強者女性の姿も見られます。

④農作業はバンジャールと呼ばれる自治組織での共同作業で行われ、稲穂の部分だけを刈り取っているのがわかります。また、以前に比べると減りましたが、⑤農作業には牛も使われます。それから、⑥田んぼでよく見かけるのが家鴨(写真中央)。家鴨飼いの少年に誘導され、田んぼを順番に回っていきます。虫を駆除するためですが、田んぼの持ち主から謝礼をもらうのではなく、家鴨飼いは家鴨の肉や卵を売って生計を立てているそうです。⑦時折、鷺の姿も見られます。青々と育った稲を白い鷺の群れが一斉に飛び立つ様は清々しく、そして壮観です。

⑧作中にはペンジョールと呼ばれる竹飾りが見られます(写真右)。これはヒンドゥ教のお祭り「ガルンガン(ウク暦の正月)」に祖先の霊を迎えるためのもので、各家の前に飾られます。弓状に先をしならせた長い竹の先に椰子の葉飾りがついていますが、先祖の霊が迷わず戻ってこれるようにするもの。日本の七夕飾りも元はお盆行事の一部として祖先の霊を迎えるために立てられたと言われ、意外に共通点のある日本とバリ、ちょっと興味深いですね。

以上、バリの風物のご紹介でした。皆さんはいくつ見つけられましたか?

風物詩写真

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2013.5.4

バリ絵画を愉しむヒント② 作品に描かれるモチーフ

こんにちは、坂本澄子です。ゴールデンウィーク後半、いかがお過ごしですか?私は毎日美術館巡りをしており、昨日は上野の国立西洋美術館のラファエロ展へ行ってきました。ルネッサンスの三大巨匠と言われるラファエロ、わずか37年間の生涯のうちに様々な作品を残しています。教会の壁画や天井画など大型の注文を受けた時は、多くの弟子を抱える工房でそれぞれの力量に応じた仕事を割り振ったそうです。それによって弟子が育ち、彼の偉業が後世に伝えられることになったのですね。また、こうした教会内部を目にする機会がない当時の一般の人々のために、その素描画を元に銅版画を作らせ、広く売りさばいたとも言われています。ビジネスの才覚もあった人なのだとちょっと驚きました。

さて、バリ絵画を愉しむヒント、前回はバリの人々の思想、そこから来る文化や風習についてお話しましたが、今日はそれらが実際の作品の中でどのように描かれているかをご紹介します。作品は「バリ島物語」アリミニ作、バトゥアン・スタイル)を取り上げます。このサイト内でも原画を展示販売していますので、あわせて見て下さいね。

この作品はウィシュヌと村人たちの生活を描いたものです。ウィシュヌはヒンドゥ教の三大神の一人、インド神話「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」では化身として勇士となって活躍しており、バリの人たちに大変人気のある神様です。この作品「バリ島物語」の中でも慕われる神として中央部分に描かれ、そこから湧き出る泉が村人たちの生活を潤すという構図になっています。周辺部に描かれた村人たちの生活シーンは前回のブログでもご紹介したバリの風習が描かれています。以下にそれぞれを詳しくご説明しますね。ブログ15_作品解説

 次回も引き続き、作品の中にバリの風習・文化が描かれている例を見て行きたいと思います。作品はヤング・アーティストの草分けソキさんの「実りの季節」です。お楽しみに。

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2013.5.1

バリ絵画を愉しむヒント① バリ人の精神生活

こんにちは、坂本澄子です。バリ絵画には様々なスタイルがあり、風景画や花鳥画のように日本人にも馴染みやすいものから、バリ人の信仰や風物、さらにその背景にあるヒンドゥ教の教えや神話の登場人物を知っていないと理解が難しいものまで多岐に渡ります。そこで、知っているとバリ絵画が面白くなる豆知識をシリーズでご紹介します。1回目はバリ人の精神生活。と言うとちょっと大げさですが、多くのバリ人、特にウブド周辺の村人に共通する価値観をご紹介します。

【神々の棲む島】

”精霊の通り道”を抜けると風情ただよう下町の風景に

バリは年に3回もお米が穫れるほど豊穣な大地、恵まれた自然環境にあります。そのため自然に対する畏敬の念が強く、毎朝夕、祈りと供物を欠かしません。彼らの信仰はヒンドゥ教と古来の土着信仰の融合体であり、精霊を敬う独特な考え方があります。よい精霊だけでなく悪霊もあり、供物(チャナン)を地面に捧げたり、闘鶏を行うのは悪霊を鎮める意味があるそう。精霊は渓谷や道の交わる場所に棲むとされていますが、自由に移動できるよう街の至る所に”精霊の通り道”と呼ばれる幅2〜3mくらいの細い道が作られています。そんな場所を通り過ぎる時には失礼しますとそっと呟くのだそう。

 【共同作業が基本の村の生活】

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穂の部分だけを刈り取る。稲刈りが終わった田んぼ。

昨年世界遺産に認定されたジャティルイの田園地帯。棚田の美しさもさることながら、1000年以上も続く伝統的な水利システム”スバック”(流水の分配という意味)が高く評価されたとのこと。このようにバリの人たちには何かを共有し共同で事に当たるという考え方があります。周囲との調和を重んじるところは、同じ島国の日本と似ているかも知れません。例えば、農作業はバンジャールと呼ばれる自治の最小単位での共同作業で行われます。トラクターの導入など一部機械化もされていますが、大半はまだ手作業。稲刈りもバンジャールの構成員総出で行い、穂先の部分だけを手で刈り取ります。

【バリ暦による祭礼中心の生活】

各家の門口に立てられた竹飾りペンジョール

各家の門口に立てられた竹飾りペンジョール

島民の95%がヒンドゥ教徒。210日で一回りするバリ暦に基づいて執り行われる祭礼を中心に、村人たちの生活が回っていると言っても過言ではありません。祭礼には様々なものがあり、夕暮れと共に伝統楽団ガムランの音色が低く聞こえてきます。特にクンニガン後の一ヶ月はオダランと呼ばれる寺院祭礼が集中しています。手をかけて準備した色とりどりの供物で寺院を埋め尽くし、僧侶が招かれ神々を召喚します。クンニガンは善が悪と戦って勝利したことを祝う行事、祖先の霊が各家に降り立つ日とされています。祖先の霊を迎えるために、各家の門口にペンジョールと呼ばれる竹飾りが立てられた村道の様子は壮観です。ちょっと日本のお盆に似ていますね。

次回は今日お話した祭礼や風物が絵画の中にどのように表現されているかをご紹介します。

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2013.4.27

原画の持つ力

こんにちは、坂本澄子です。

春の暖かな日差しが戻り、ゴールデンウィーク初日をちょっぴりウキウキとした気持ちで迎えられたのではないでしょうか。

先日はバリ絵画展「青い海を描かない作家たち」にお越しいただき、また全面オープンしたホームページにも多数のアクセスをいただきましたこと、改めてお礼申し上げます。まだ始まったばかりですが、最高のアートスペースを目指して一歩ずつ進んでいきたいと思います。

3日間の絵画展で色々なお客様とお会いし、人と絵の関わりについて改めて考えさせられました。今日はそのひとつをお話したいと思います。

ユトリロ代表作「ラパン・アジル(1910)」

ユトリロ「ラパン・アジル」(1910)
ポンピドゥ・センター国立近代美術館所蔵

初日の朝、大きな深紅の花束が届きました。このような粋な計らいをして下さるのはどなただろうとお名前を見ると、前職でお世話になったある会社の会長さん。そしてオープンと同時にご本人が入って来られ、まるで映画の一コマのようです。ひとしきりお話する中で、絵画との馴れ初めについてお聞きすることができました。今から30年前、会社を興こされた頃のこと。銀座の老舗画廊で初めてユトリロの作品を生で見て、心を揺さぶられるような感動を覚えたそうです。ユトリロと言えばフランスを代表する近代画家、しかもバブル絶頂期にあって”ものすごい”お値段がついていました。その時決心されたことは「いつかはユトリロの絵を買えるようになりたい」だったのです。その気持ちがつらい時期にあってもその人を支え続け、ついに手にしたのは10年後だったそうです。そして、事業が安定し拡大路線に入った頃、次に惹かれたのが直線的な描写が特徴のビュッフェ。ビジネスに向き合う時の緊張感や研ぎすまされた感覚にぴったり添うような手応えがありました。会長さんは今でもビジネスの重要な場面で気持ちを高めたい時、ビュフェの作品の前に立つそうです。その会社は従業員600人を超える規模に成長し、昨年念願の東証上場を果たされました。

原画には多かれ少なかれ、そのように人を動かす力があると思います。作家のその時の思考や感情がエネルギーとなって伝わってくるのです。それをどう受け取るかは、見る人に完全に委ねられます。それだけに「作品との出会い」は「人との出会い」と同じように重要で、ある時には人生の転機になることさえあります。普段からよい作品に触れる機会を、特にお子さんがいらっしゃる方は積極的に増やしていただければと思います。

バリは島全体が観光業で成り立っており、絵画はハイセンスなお土産品として喜ばれています。しかし、流れ作業で大量生産されるお土産絵画は論外としても、使い回されたパターンを使って作業として絵を描くことと、作家自身の内側から湧き出るエネルギーをキャンバスに表現することは全く異なる次元の活動だと思います。絵画を生活の糧としてではなく、芸術活動として位置づける芸術家集団として、1936年バリ島ウブドでピタ・マハ協会が発足しました。初代会長は近代バリ絵画を代表する画家のイダ・バグース・プトゥ(Ida Bagus Putu)、当時のメンバーにはイ・グスティ・ニョマン・レンパッド(I Gusti Nyoman Lempad)やこのブログでもご紹介したシュピースやボネといったバリ絵画の近代化に影響を与えた外国人画家もいました。その後、協会自体は解散しましたが、その精神は形を変えて現在に引き継がれています。

「バリアートショールーム」は、プリ・ルキサン、ネカ、アルマなど、島内の主要美術館に作品が所蔵され、画家名鑑に名を連ねるクラスの画家の作品を、手の届く価格帯でご提供することを基本コンセプトに据えています。無名の若手作家であっても、表現者としての精神性に優れていると判断すれば積極的に紹介しています。この朝の出来事は、私たちに原点に立ち返る機会を与えてくれました。

絵画展でも気に入った作品にじっと見入っておられる姿が見られました。写真画像では伝えきれない作家の想いをそれぞれに感じ取っておられたのではないでしょうか。バリの伝統スタイルはインド神話や登場人物、その祭礼に集う村人たちが題材になっていることが多く、その意味や背景にあるものを知ることで更に味わいが増します。会場でも解説の掲示などの工夫をしましたが、来週からは「バリ絵画をもっと楽しむ法」と題して新シリーズをスタートします。どうぞお楽しみに。

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2013.4.23

「バリ絵画展」たくさんのご来場ありがとうございました

こんにちは、坂本澄子です。バリ絵画展「青い海を描かない作家たち」に多くの方にご来場いただき、誠にありがとうございました。中には冷たい小雨まじりの中、遠方から足を運んで下さった方もあり、感激致しました。これだけまとまった形でバリ絵画を見たのは初めてという方も多く、スタイルの豊富さとそれぞれの奥深さを楽しんでいただけたのではないかと思います。

限られたスペースではありましたが、バリ絵画を代表する6つのスタイルから合計27点の作品を厳選して展示しました。入口を入ってすぐ左がバリ絵画の伝統的なスタイル、正面が細密風景画のシュピース・スタイル、右奥が熱帯花鳥画及びモダンと時代を追って見ていただける展示構成にしていました。バリ絵画の歴史と各スタイルの解説をじっくり読まれるお客様も。

ライさんの細密画は男性に人気

ライさんの細密画は男性に人気

アンケートを拝見しますと、気に入った画家のトップ3は僅差で、ガルー(細密風景画)、ラバ、エベン(いずれも熱帯花鳥画)が並び、田園風景や緑に抱かれるような花鳥画に親しみを感じた方が多かったのと、バリ絵画ならではの細密画も人気で、特に男性の方がライさんの作品の前で足を止めてじっくりと見入っておられるのが印象的でした。画面にぎっしりと描き込まれたこのスタイル、モチーフの意味がわかるとバリの文化や人々の生活が見えてくるのも楽しみのひとつです。描かれているものの背景を知っていただきたいと、解説やバリの風景のスライドーショーなど、展示上の工夫もしましたが、それぞれに楽しんでいただけたようです。

最期にアンケートのコメントの一部をご紹介します。常設やさらに多くの作品展示を希望される声などありがたいご意見ばかりで本当に励まされました。次回もどうぞお楽しみに。アンケート

 

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2013.4.20

素晴らしい出会い

こんにちは、坂本澄子です。昨日からバリ絵画展がスタートし、同じタイミングでホームページを全面公開しました。ブログだけが先行した状態だったにも関わらず、多くの方に「バリアートショールーム」を訪れていただき、時には温かい励ましのコメントをいただきました。本当にありがとうございます。

今日はこのホームページを立ち上げるにあたり、大変お世話になった株式会社シンクマックスの加藤朝子社長、そして以前のブログにも書いた中山マコトさんとの出会いをご紹介したいと思います。

バリ絵画に強く惹かれながらもキャリアチェンジへの第一歩が踏み出せなかった頃、たまたま駅の本屋で目に入った「フリーで働く!と決めたら読む本」がきっかけでした。そのタイトルは、私のその時のもやもやした心の中にすっと入っていくのを感じました。引き寄せられるように手に取ると、電車の中で降りる駅を乗り過ごしてしまうのも構わず、むさぼるように読みました。まるで私のために書かれたと思えるくらい的確に、不安に思っていたことのひとつひとつに対する答えがそこにありました。もうお分かりかも知れませんが、その著者が中山さんです。

中山さんは今では著書を20冊以上(私が読んだのはその当時最新作でした)もお持ちの、業界でも知る人ぞ知るマーケティングのプロです。しかし、独立当初は色々なご苦労もされ、もがきながら学んだ経験とそこから来るアドバイスがご自身の言葉で熱く語られていました。その中で特に私の心を捉えたのは、万人にウケることを目指すのではなく、「あなたの能力を心から必要としているのはどんな人なのかを徹底的に考えよ」という言葉でした。まさにタイトル「フリーで働く!と決めたら読む本」が好例の通り、あるピンポイントな状態にある人(=自分の能力を生かせる相手)にシンプルだが一旦刺さると抜けない言葉で語れと言われていました。私はバリ絵画の物販自体をやりたかったのではなく、私の生き方、考え方を含めて共感して下さる方(お客様)と絵画という表現手段を通じて一生もののおつきあいをしたいと思っていましたが、それが市場として存在するのかについては不安がありました。それに対する答えが上記の言葉だったのです。私は背中を押されるのを感じました。

中山さんは私のやりたいことを一通り聴いて下さった後、そのメッセージを「必要としている人の心」に届くようにするためのホームページの設計図を提案し、それを構築する制作会社としてシンクマックスの加藤さんを紹介して下さいました。加藤さんもWebマーケティングのプロとして素晴らしい働きをして下さいました。私は時々思いつきで突っ走ってしまうところがあるのですが、加藤さんのいい意味での頑固さが、最初に決めた基本コンセプトという根幹部分で軸足がぶれてしまわないよう守ってくれました。それは「ここに、あなたが知らないバリがある」に表現されています。スタッフの坂東さんも初めてだらけの私の質問にいつも迅速に対応して下さいました。お二人に共通していたのは、「それは私たちの仕事の範囲ではありませんと線を引く」事なく、自分たちの価値は私のビジネスが成功して、つまりその先のお客様に何らかの価値を与えて、その結果としてビジネスをいただけて「なんぼ」だという姿勢を貫き、常に同じ目線で物事を一緒に考えて下さったということです。私も前職でITに関わった経験がある者として、最期の一週間はシステムの稼働に不安がありましたが、最期まで仲間として一体感を持ち続けることができたのは、まさにこの点によるものと思います。

私は前職時代にも優秀な仲間と志を同じくし苦楽を共にして働くことに大きな喜びを感じていましたが、今回も同様、ここにご紹介した仲間たちがいなければこのサイトは実現できなかったし、新たなビジネスのスタートをきる事もできなかったと思います。この場をお借りして、中山さん、加藤さんに深くお礼を申し上げると共に、素晴らしい仲間がこのホームページ、そして私の活動そのものを支えてくれているのだということをお伝えしたいと思います。まだ始まったばかりで、改善すべき点、新たに取り組むべき点が多々あると思いますが、このサイトが皆様のお気に入りのひとつとなり、皆様に対する何らかの価値を提供する場となりますよう努力を続けていきたいと思います。

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2013.4.17

表現者としての私

こんにちは、坂本澄子です。いつもバリ絵画のご紹介をしているので、今日は私自身が絵を描くことについて、お話をさせていただきたいと思います。

近日公開予定の「バリアートショールーム」の私のプロフィールの中でも触れているのですが、自分の楽しみで絵を描いています。最初は見よう見まねで、次に好きな画家の作品を模写をかなりやりました。マグリット、ゴッホ、マチス、クレイ、ルソーなど。ようやくオリジナルな作品が描けるようになったのはここ2〜3年でしょうか。

縁あって5年前から東京荒川区の絵画教室に通っていますが、明輪勇作先生がふと口にされた言葉によって大変勇気づけられたことがあります。それはこんな言葉でした。「人生の後半戦の入り口が絵の世界ではむしろ新人。これまでの人生でいいものがいっぱい蓄積されている。後はそれを取り出しキャンバス上に再構成する技術さえ身につければ、いい絵が描けるようになるよ」

坂本澄子「ウブドの思い出」 パステル P30

坂本澄子「ウブドの思い出」
パステル P30

以来、絵を描くことは私にとって心を解きほぐす時間、自分の内側にあるものをアウトプットする機会へと変わっていきました。そんな中いつか描きたいと思っていたのがバリの風景。私が行くのはなぜかいつも雨期で、昼過ぎから強いスコールが降ります。大抵1〜2時間降るとやんで、雲間から明るい空が顔を出すのですが、水田に映った空がイメージとして頭の中にありました。それを取り出して表現してみたい。明輪先生の熱心なご指導の下、その作品が先日ようやくでき上がりました。中央美術協会の東京中美展に出品、優秀賞をいただくことができ、二重の喜びとなりました。

バリの画家さんたちも同様に絵に向き合う時様々な想いがあるのではないかと思います。今度、アトリエを訪ねる時にはそんなお話も聴ければと思っています。

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2013.4.13

【4月19〜21日】五感で楽しむアートスペース

夕刊フジの人気連載コラム「人生二毛作」で紹介していただきました。

バリ絵画の専門サイト「バリアートショールーム」へはこちら

こんにちは、坂本澄子です。バリ絵画展「青い海を描かない作家たち」の開催まで後一週間となりました。会場で皆様とお会いできるのを楽しみにしています。今回、作品そのものはもちろんですが、絵を鑑賞する場にもこだわっています。題して「五感で楽しむアートスペース」。 私のビジネスの屋号を「アートスペースエス」とすることにしました。サイト名は変わらず「バリアートショールーム」です。いずれも名付け親はマーケティング業界で知る人ぞ知る中山マコトさん。中山さんとの出会いについては別の機会に譲るとして、素敵な名前をつけて下さったことに心からお礼申し上げたいと思います。ちなみに、エスはSpecialのSだそうです。 この「アートスペースエス」のゴールとして「五感で楽しむアートスペース」を目指しており、今回実験的な試みを幾つかやってみたいと考えています。今日はそれらをご紹介させていただきますね。

ゆっくりと時が流れていく

自然の奏でる音に包まれて
ゆっくりと時が流れていく

まず、視覚。一番はやはりバリ絵画の素晴らしさを皆様ご自身の目で確かめていただくことです。作品をより楽しんでいただくために、私の好きになったバリ島ウブドを知っていただきたい。そのためのお手伝いとして、現地で撮って来た1000枚以上の写真をスクリーンショーで上映します。 次に、聴覚。バリを訪れる度に感じること、それは自然の作り出す音です。ヴィラのすぐ下を流れる小川のせせらぎ、その向こうの田んぼから聞こえてくるカエルの声。椰子の木が風にそよぐ葉音。夜になると虫の鳴き声に交じって聞こえてくるガムランの音色。これらをバリから持ち込みたかったのですが、質が問題でした。そこで、バリの音ではないのですが、音の研究家の伝田文夫さんがこだわりにこだわって全国各地で自ら録音して来られた最高の自然音をモーツァルトに乗せてお届けします。 そして、嗅覚。バリと言えば朝夕捧げるお線香なのですが、狭いギャラリーに煙が充満しまっても…。そこで、バリの太陽の恵みをいっぱいに受けて育ったハーブのアロマをふんわりと。 味覚については悩みました。考えに考え、バリならではということで、ルアック・コーヒーを取り寄せました。コーヒー好きの方は会場で「ルアック・コーヒー」とお声掛けてください。希少なもののため、1日7杯限定でご用意。なくなりましたら何とぞご容赦下さい。

GALUH「残照の家路」 アクリル/紙 23㎝x31㎝

GALUH「残照の家路」
アクリル/紙 23㎝x31㎝

残念ながら触覚については今回ご用意できませんでしたが、次回に向けて、皆様からもアイデアをいただければ幸いです。その代わりにと言っては何ですが、GALUHさんの最新作がぎりぎり間に合いました。小品ながら、朱色に染まる残照がとても印象的で存在感のある作品です。是非会場でご覧になって下さいね。 では、27点の作品たちとご来場をお待ちしています。

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2013.4.10

「人物描写にリアリズムを与えたオランダ人 ボネ」

こんにちは、坂本澄子です。花冷えという言葉の通り、ぽかぽか陽気の翌日はまたコートが欲しくなったりとなかなか落ち着きませんね。どうか体調を崩されませんように。私はと言えば、昔から「元気で長持ち」が取り柄、御陰さまで風邪もひかずに頑張っています。

ウブドのアトリエで制作活動を行うボネ

ウブドのアトリエで制作活動を行うボネ

さて、今日は「バリ絵画に影響を与えた外国人」シリーズの最終回、人物描写において西洋の解剖学に基づく表現力をもたらしたオランダ人画家を紹介します。

それまでのバリ伝統絵画の人物描写は、斜め横向きで顔や身体を描き、どちらかと言えば画一的かつ平面的な表現でした。芸術解剖学は人体の構造、つまり骨組みや筋肉のつき方を学び、より写実的に人物を描写する基礎学問です。1920年代、オランダ統治下にバリを訪れた外国人画家の中でも、このような技法をもたらすことでとりわけ大きな影響を与えたのはルドルフ・ボネではないでしょうか。

1895年にオランダの商家に生まれ、アムステルダムの美術学校で伝統絵画についての学術教育を受けました。その後イタリアに渡り、教会の壁や天井を飾る壮大なフレスコ画に感銘を受けます。シュピースがアジア的なものに憧れ、絵画だけでなく舞踊、儀礼など芸術全般の広い範囲に於いてバリの伝統にのめり込むように活動したのに対して、ボネは西洋絵画の学術的伝承という役割を意識していました。バリにやってきたのは1929年で、40年以上に渡りバリで活動しました。彼はパステルを用いた人物画を得意とし、しなやかな体躯を持つバリの若い男たちを好んでテーマに取り上げ自ら制作を行う傍ら、学術的な見地から西洋の技法を紹介しています。

ウィレム・ジェラルド・ホフカー「グスティ・マデ・トゥウィ嬢の肖像Ⅱ」(1943)

ウィレム・ジェラルド・ホフカー「グスティ・マデ・トゥウィ嬢の肖像Ⅱ」(1943)

同時代に活躍したオランダ人画家として私が一票を投じたいのは、ヴィレム・ジェラルド・ホフカー。彼はボネと同じくパステルを使って、バリの若い女性の柔らかで滑らかな肌を巧みに表現しています。その瑞々しさは素晴らしいです。余談になりますが、私がこの「バリアートショールーム」でご紹介しているアンタラさんの作品に惹かれたのもほぼ同じ理由からです。脱線ついでにもうひとつ。戦前のバリは男性も女性も上半身裸だったため、1922年、ドイツ人医師グレゴール・クラウスの写真集「バリ島」でその様子が紹介されると、バリは一躍「最期の楽園」ともてはやされ、オリエンタリズムが一気に広まります。ヨーロッパから訪れる観光客が急速に増えたのはこの時期でした。

デワ・プトゥ・ベディル「ジョゲッド・ピンギタン・ダンス」(1975)

デワ・プトゥ・ベディル「ジョゲッド・ピンギタン・ダンス」(1975)

前回ご紹介したシュピースやボネらの活躍により、バリ絵画は西洋技法を取り入れその表現力を増し、“ウブド・スタイル”と呼ばれる様式へ進化していきます。それまでテーマとしては宗教的な物語が中心だったのに対して、祭礼、農耕、闘鶏、機織りといった村人たちの日常生活が取り上げられるようになり、その中で人物が生き生きと描かれるようになったことも特徴のひとつです。写真の作品を見ても、踊り手たちの筋肉の動きがよりリアルに表現されているのがわかります。

ボネはバリの芸術家協会「ピタ・マハ」創設の主要メンバーとして、バリ絵画の芸術的地位の確立に尽力すると共に、1956年には、ウブド王宮の当主チェコルダ・スカワティと共に「プリルキサン美術館」の設立に携わり、バリ絵画の発展に大きく貢献しました。「プリルキサン美術館」ではバリ絵画の作品が年代を追って紹介されており、その歴史と進化を知ることができます。ウブド中心部の便利な場所にありますので、バリ行かれる機会があれば是非立ち寄ってみて下さいね。

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