バリの新年ニュピは静寂の一日
こんにちは、坂本澄子です。早いもので1月もあっという間に最終週。先日ある方とお話していたら、年齢を重ねるごとに一週間が早くなっていくという話題になりました。私自身も特にこの一年はほんと早かったなぁと驚いています(^o^;
以前、「バリの1月1日はわりと普通の日です」とご紹介しましたが、本当の新年はニュピと言って今年は3月31日になります。月の満ち欠けをもとにしたサコ暦で1年に1度巡ってくるため、その年によって時期が違うのです。毎年だいたい2月〜5月の間にやってきます。ちなみに、バリには西暦とサコ暦とウク暦(1年を210日とする暦で主に祭礼を司る)の3つの暦が同居してる感じです。写真はバリ伝統画家アリミニさんのご自宅ですが、ここに掛かってるのはウク暦のカレンダー。
ニュピは静寂の日。地元の人たちはもちろんのこと、外国人観光客も一切外出ができないので、通りは人っ子一人いない状態になります。学校も会社もお店もお休み、あらゆる交通機関が止まり、人々は静かに瞑想し世界の平和を神様に祈って一日を過ごすそうです。あかりをつけることもできないため、夜になると真っ暗。その分、星がとても綺麗。満点の星空が仰げるかも知れませんね。
ニュピの前日に行われるのがオゴ・ホゴによる浄化の儀式。オゴ・ホゴというのは写真の通り、張り子の鬼のようなもので、鍋を打ち鳴らして家から追い出された悪霊が、通りを練り歩くオゴ・ホゴに乗り移るとされています。最後にこのオゴ・ホゴは悪霊たちと一緒に燃やされて鬼退治。それでもまだ地上には悪霊たちが残っているので、見つからないように、ニュピ当日は家にこもって静かに過ごすという訳です。これは善と悪は永遠に戦い続けるというバリ独特の考え方から来ているんですよ。
ところで、このオゴ・ホゴ。今年はインドネシア大統領選挙を控えているため中止なんだそうです。暴動を避けるためとのことですが、ちょっと残念ですね。
さて、好評開催中のガルー作品展『静謐のとき』、いよいよ31日(金)が最終日。和空間と静寂の作品のコラボ、どうぞお見逃しなく!
<関連ページ>
ついに…『ラーマーヤナ』
こんにちは、坂本澄子です。ついに書くことにしました。
『ラーマーヤナ』ヒンドゥ教の神話で三大神のひとりで宇宙の秩序を司ると言われるウィシュヌ神の化身のラーマ王子が主人公の物語。紀元前2世紀に現在の形にまとめられた古いお話です。絵画のモチーフとして取り上げられることも多く、以前からずっと興味を持っていました。でも、いい加減な知識では書けない。ちょっと勉強しましたよ^^絵に描かれた見せ場を織り交ぜながらご紹介したいと思います。
即位前日に継母の計略にかかりアヨディア王国を追放されたラーマ王子は、妻シータと弟ラクスマナと共にダンダカの森へと追われました。悪いことは重なるもので、シータの美しさに目を奪われた魔王ラワナは家来に彼女をさらってくるよう命じます。家来は黄金の鹿に姿を変え、「あら、きれい」と近寄ったシータをまんまと罠にかけ誘拐します。
(左)ダンダカの森で過ごすラーマ王子と弟ラクスマナ。落ち着いた色調の中に、彼らのすみかとなった美しい森が丹念に描き込まれています。
ラーマ王子は神鳥ガルーダからシータがランカ島(現在のセイロン)にいると聞き、味方になった猿王ハヌマンに自分の指輪を託してシータの元へ行かせます。ちなみに、ガルーダはウィシュヌ神の乗り物で、インドネシアの航空会社の名前にもなってますね。風神ヴァーユの子ハヌマンは対岸からえいやっと跳躍しランカ島へ行き、ついにシータを見つけ出しました。報告を受けたラーマ王子の軍が到着したところで、魔王の手下を相手に一同大暴れ。サル(ハヌマン)とキジ(ガルーダ)を連れて鬼退治に向かうももたろうを彷佛とさせる展開です。ところで、ラワナというのは何かの因果で人になれず悪行を行うことが運命づけられている日本で言うところの鬼の大将なんです。日本の昔話にも似て、親しみを感じませんか? この物語最大の見せ場として絵画に登場することも多い場面。
(右)ガルーダがランカ島に偵察に行き、シータがいることをラーマ王子に報告する下りを絵巻物風に描いた19世紀頃の作品。高温多湿のバリ島は絵画の保存には過酷な環境。残念なことに古い作品が残っていることは少ないのですが、この作品はよい状態で保存されていました。
こうしてラーマ王子はシータを取り戻し、アヨディア王国に帰還します。「いつまでも幸せに暮らしましたとさ」と喜びたいところですが、本当の悲劇はむしろここからなんです。ここが勧善懲悪が基本の日本の昔話とは異なるところ。
ラーマの即位後、人々の間ではラワナに捕らわれていた間のシータの貞潔についての疑いが噂されるようになりました。それを知ったラーマは苦しみ、ついにはシータを王宮より追放してしまうのです。シータは聖者ヴァールミーキのもとで暮すこととなり、そこでラーマの2人の子供クシャとラヴァを生みます。後にラーマはシータに自身の貞潔を証明するよう命じますが、このときシータは大地に向かって訴え、「貞潔ならば大地が自分を受け入れますように」と願いました。すると大地が割れて女神グラニーが現れ、 シータの貞潔を認め、シータは大地の中に消えていきました。ラーマは嘆き悲しみ、その後は二度と妃を迎えることなく世を去ったという悲しい結末です。
冒頭お話したように、ラーマ王子はウィシュヌ神の化身です。そのラーマ王子でもこのような弱さを持ち、時に過ちをおかすのかとちょっぴり切ない気持ちに。でも、この終わりなき善と悪との戦いこそがバリの精神世界そのものなのです。バロンをご覧になった方も多いと思いますが、善の象徴である聖獣バロンは悪の象徴である魔女ランダと永遠に戦い続けます。このように善と悪の行ったり来たりは、バリの文化・風習に様々な形で出てきます。
私も毎年お正月には「今年こそ怒らないぞ」と心に誓うのですが、すぐ些細なことに動揺したり腹を立てたりと本当にダメダメ状態。でも、人間の本質ってそんなものかも知れませんね。
来週からガルー作品展『静謐のとき』が始まります。この作品には悪のかけらも見られない。是非来て下さいね!
あ〜、奥が深い – バリ舞踊とのコラボ
こんにちは、坂本澄子です。昨日バリからガルーさん(Ni Gusti Agung GALUH)の新作2点が届きました。はやる気持ちを抑え、子供の頃のサンタさんのプレゼントのように、一晩眠って今朝開けてみました。朝陽の中で見る風景は写真よりもずっと∞繊細で、田んぼの水面に映る空の色に吸い込まれそうになりながら、しばし我を忘れていました。新春1月に東京・日本橋のGallery KAIでガルー作品展を行います。昭和の空気漂う凛とした空間で静謐な作品をゆっくりとご鑑賞下さい。
好評開催中のバリ絵画展『五感を満たす食卓②バリの妖精たち』、残り6日間となりました。最終日の30日は『バリダンス、ゆく年来る年』が開催されます。バリ舞踊+バリ絵画のコラボをお楽しみ下さい。くわしくはこちらをどうぞ。
さて、今日はそのバリ舞踊のお話です。
ゴメンナサイ、正直に告白します。実は…バリ舞踊って観光客向けのアトラクションってちょっとだけ思ってました。でも、そのイメージが全く塗り替えられてしまうほどの素敵な舞台でした。
23日、渋谷のバリカフェ・モンキーフォレストで、バリ舞踊とバリ絵画のコラボレーションライブが行われました。公演されたのは「Naga Jepang」の皆さん。主宰の荒内琴江先生は’04-’06年にインドネシア国立芸術大学に留学しバリ舞踊を学び、日常生活の信仰の中に生きているバリ芸能の素晴らしさを日本に伝える、まさにバリ舞踊の伝道師です。
舞踊にせよ、絵画にせよ、降臨した神々をもてなし、そして自らも愉しむ芸能・芸術として、バリの人々に大切に育まれてきました。元は村の祭祀で舞う踊りでしたが、’20〜30年代にバリ島に滞在したドイツ人シュピース(バリ現代芸術の父と呼ばれ、絵画の世界でも大きな影響を与えた人です)によって、外国人にも親しみやすい舞台芸術としてリメイクされ、現在は宗教儀礼とは切り離されたプログラムとして演じられています。
皆さんもよくご存知の「ケチャ」と「バロン」は絵画の題材としてもよく取り上げられる大変ポピュラーなものですが、今日は美しい踊り手たちの演目を中心にご紹介します。舞踏宮廷物語を扱ったストーリー性のある壮大な演目、神話の登場人物を扱った演目、鳥や動物たちの舞で構成される花鳥もの、さらには戦いの若き勝利者を扱った戦士ものなど、実に様々な様式があるんですよ。「Naga Jepang」さんの公演プログラムを引用しながら、ハイライトをご紹介しますね。
『オレッグ・タムリリガン – Oleg Tamulilingan』
ミツバチの求愛を描いた踊り。優雅なメス蜂の踊りは女性舞踊の真骨頂とも言え、匂い立つような色香を感じさせる近藤ゆまさんが演じました。対するオス蜂はまるで宝塚の男役スターのような凛々しい荒内琴江さん。おふたりによる恋の駆け引きの様子を愉しませていただきました。美しい衣装、優美な動きに熱い視線が絡み合い、ぴったりと息の合った演技にため息。
『レゴン・クラトン・ラッサム – Legong kraton Lasem』
優美な宮廷物語のレゴン・クラトン。ラッサム王は森で出会ったランケサリ姫の美しさにひと目で心を奪われ、自分の城に連れて帰ります。王は執拗に結婚を迫りますが、既に婚約者のいる姫は頑なに拒み続け、怒った王は姫の国と戦争をすることを決めます。戦いに向かう途中、王の前に不吉の象徴とされる鳥が現れ、「おまえはこの戦いで血を吐いて死ぬだろう」と予言します。王は恐れを感じながらも不吉な鳥を追い払い、戦場へと向かうのでした…。
若き勝利者の踊り。女性が男装をして踊るこの踊りは、青年期の若者が感じている自信と不安、喜びや恐れなどを表情豊かに描いています。力強く、躍動感にあふれ、ダイナミックな中にも繊細さを感じる踊りでした。ちなみに私は最前列で鑑賞させていただいたのですが、射抜かれてしまいそうなほどの荒内さんの目ヂカラに圧倒されました。
わかりやすい解説付き、踊り手の息遣いが直接伝わってくる距離での鑑賞とあって、とても身近に愉しむことができました。目や手など常に身体のどこかを動かし表現力豊かなバリ舞踊。その技術的な難易度はもちろんのこと、芸術としての粋を極めるため、荒内先生を始め、短期留学を重ねては研鑽を積む踊り手さんも多いと伺いました。バリ舞踊、これからちょっと目が離せなくなりそうです。
そういえば、バリ島では公演を終えた踊り手さんが衣装メイクそのままでバイクで帰宅するところに出くわすことがあります。まさに日常生活における信仰に芸能が生きる島だと感じさせられます。
<関連サイト>
いよいよ30日まで。バリアートショールームのFacebook pageで毎日作品を紹介しています。
★歳末感謝セール 人気作家の作品が10〜20%off。こちらも12月30日までです。
アルバム『バリの笑顔』の裏話
こんにちは、坂本澄子です。早いものでもう12月、でも、冬になったとは思えないくらい穏やかな毎日が続いています。このあたりは毎年紅葉は遅めですが、徐々に街路樹も色づき、アスファルトを駆けて行く落ち葉に季節の移り変わりを感じています。皆さんの街ではいかがですか?
さて、Facebookアルバムに『バリの笑顔』を毎日掲載していますが、どれもほんとにいい顔ですよね。特に子供たちは好奇心いっぱいで、tomuさんが「フォト!フォト!」と近づいて行くと、「きゃー」みたいな感じで最初は照れていますが、「オッケー」「サンキュー」とカタカナ英語で話しかけ続けているうちに次第にいい雰囲気に。撮った写真をその場で見せてあげると、一瞬でさらにいい笑顔になるので、そこでもう一枚パチリ。そんなふうに撮影したのがこれらの写真なのです。別れ際には手をあわせてありがとうと感謝の気持ちを表すことも忘れません。まさに一期一会ですね。
今日は、アルバムの中ではお伝えしきれなかった周囲の風景やエピソードなどを、写真家tomuさんならではの視点を盛り込みながら、一週間分まとめてお伝えしちゃいます。
このお母さんたちにはジェゴグ(大きな竹を並べて作った木琴のような伝統楽器。節をくりぬいた竹の中を空気が振動し、お腹に響くような深みのある音がするんです)の故郷ヌガラに向かう途中で会いました。近々お祭りがあるのでしょうか、色とりどりに飾られたお供え物を頭に載せて運んでいました。バリ女性のこのバランス力には脱帽です。近くには根っこの下を車が通り抜けられるほどの巨大なガジュマルが植わっていました。バリでは大きな木には精霊が宿ると言われています。黄色は聖なるものの印なんです。この下を何度も行ったり来たりしましたが、中はヒンヤリとしてまさにご神木といった感じ。
このかわいいベビーシッターさんには、ウブド中心部にほど近い田園地帯をお散歩中に会いました。最近はウブドも観光地化が進み、町の中心部はショップが建ち並びとても賑やかですが、ちょっと中へ入ると深呼吸したくなるような一面の緑が広がっています。すれ違う村の人たちはみな笑顔でニコっと迎えてくれましたが、途中数匹の犬たちに囲まれ、ちょっと怖い思いをしたそう。そう言えば、私たちが子供の頃はその辺に野良犬が結構いましたよね。追いかけられて怖い思いをしたとき、母から「石を拾って投げるまねをしたらよい」と教えられたのですが、まさにそれと同じことをバリの人もやっているのを見て、吹き出しちゃいました。この野良犬の追っ払い方を友人に話しても、誰も「そんなの知らないなあ?」と怪訝そう。でも、遠く離れたバリで意外な共通点を見つけて、またひとつ親しみが湧いたのでした。
先日のブログでもご紹介したウブド皇女のガベン(火葬式)会場ではたくさんの笑顔に会いました。この女の子たちはガムラン隊の近くで遊んでいました。声をかけると恥ずかしそうに4人がきゅっと固まって、ちょっとはにかんだ笑顔。ガムランのいい音色に包まれながらの撮影でした。
バティック売りのオネエサンにも会いました。観光客もいっぱいで、お葬式と言ってももうお祭り状態です。輪廻転生を信じるバリでは、お葬式は次の人生のスタートでもあるため、悲しい雰囲気はあまりありません。風船などのおもちゃを倒れそうなくらい載せたバイクがあるかと思えば、その横にはサテを売る即席屋台(ほとんど地面w)があり、「どう?おいしいよ」みたいな感じで話しかけてくるオニイサン。もうすごい熱気です。きっとジャワから出稼ぎに来た人たちでしょう、皆さんとにかく明るい。
tomuさんの『バリの笑顔』は渋谷バリカフェ・モンキーフォレストで開催中のバリ絵画展『五感を満たす食卓② バリの妖精たち』の作品を彩ってくれています。写実人物画の旗手アンタラ氏は、下地を砂で塗り固め、その上にアクリル絵の具とオイルで描く独自の手法を用いています。そのため、光が吸収されて、温かみを宿した人物がふんわりと浮び上がるように感じられます。また、身につけたイヤリングやバングルには金箔を用いて、そこだけでも熟練した細工職人さながらの仕上がりです。首都ジャカルタやシンガポールの有力ギャラリーが定期的に個展を開き、毎回ほぼ完売の人気作家。その分、お値段は張りますが、バリにふさわしく「愛 Love」と「喜び Joy」をテーマに人間の明るい側面を描く確かな筆遣いは、自信を持っておすすめできます。ぜひ実物をご覧になって下さい。
<関連サイト>
バリ絵画展『五感を満たす食卓②』@渋谷・・・前期:12/1-10, 後期:12/21-30 いずれも同じ内容で展示
Facebookアルバム『バリの笑顔』・・・バリで出会った素敵な笑顔を毎日掲載しています
アンタラ氏の経歴と作品・・・アンタラ氏の全作品6点を展示中
ソキ氏小品のクリスマスセール・・・前回の展示で人気の高かったソキ氏の小品を期間限定の特別価格で
ソキ作品に描かれたモチーフ
こんにちは、坂本澄子です。東京では穏やかなお天気が続いています。昼間はついコートなしで出かけてしまいますが、うっかり帰りが遅くなろうものなら寒い寒い。夜はやはり冷え込みますね。皆さまの街ではいかがですか?どうぞお風邪ひかれませんように。
さて、昨日informationにてご案内しました通り、「バリアートショールーム」初の期間限定セール(ソキ氏の小品が27,000円)を行っています。早いもので今年も後一ヶ月とちょっと。バリが大好きで、その「向こう側」にあるものを伝えたい。そう思ってこの世界に飛び込みました。この一年、私の感じたバリに共感して下さる方々との素敵な出会いがあり、とても感謝しています。そんな気持ちを込めて、日本にもファンが多いソキさんの作品を選びました。手頃なサイズですので飾るところを選ばず、お近くに置いて『バリの向こう側』に思いを馳せていただければ幸いです。
今日は作品に描かれた、私の大好きなバリをご紹介します^0^
バリの一日は祈りで始まります。バリの人たちはとにかく感謝するのです。自らを大宇宙の摂理の一部と捉え、大自然やそこに宿る神々の恵みにいつも感謝しています。チャナンと呼ばれる供物を、室内の神棚はもちろん、敷地内にある家寺、庭先など…ありとあらゆる場所に置いて行きます。生まれたときからずっと自分を見てくれている神様…そんな心の神様ではないでしょうか。
日中は暑くなるので、農作業は夜明けと共に始まります。田植えや稲刈りなどは隣組総出の共同作業で行いますが、普段の作業はひとり、ないしは夫婦でやっています。夜が明け切らぬ広い田んぼの中を歩く農夫の姿には厳かなものさえを感じます。
収穫期には感謝の供物が捧げられ、供物の準備は数週間前から始まります。写真の女性たちは準備した供物を寺に運んでいくところでしょう、カラフルでとても綺麗です。これも神様を喜ばせたいという思いから。街角にプルメリアの花がさりげなく置いてあるのをご覧になったことがあるでしょう?あれも道行く人へのバリ流のおもてなしです。
バリの色彩は本当に豊か。市場を覗いてみると色、色、色。まるでパレットです。絵を見ていても、バリの人たちの色彩感覚は日本人とは違うなぁと思うのは、そのせいでしょうか。クバヤ姿の女性もとても艶やか。こんなふうに毎日を喜んで過ごしているためか、バリの人たちはみな元気で、楽しげ。そして何より、飾らない笑顔がとても素敵なのです。
ソキさんの作品には、そんな村人たちの日常生活と神様への感謝、さらにはその背景にある独特の世界観のようなものが表現されています。
ところで、この写真素敵だと思われませんか?「バリアートショールーム」のお客様からいただいたものです。写真が大好きで4年間毎夏バリに通い詰めて撮りためた写真とのこと。どれも溢れんばかりの色彩。そして、バリの人たちの素敵な笑顔に包まれていました。
この素敵な写真を「バリアートショールーム」を見て下さっている皆様に公開したいとお願いしたところご快諾をいただき、Facebookのアルバムに掲載していくことにしました。シリーズ第一弾は『バリの笑顔』、こちらをクリックしてみて下さい。定期的に投稿していきます。Facebookをお使いの方は「バリアートショールーム」にいいね!して下されば、写真を追加する度にニュースフィードに流れますので、ぜひ!
<関連サイト>
注文制作であなたのこだわりの一枚を② あの作品のその後
こんにちは、坂本澄子です。
開催中のバリ絵画展『五感を満たす食卓』で、バリ舞踏をされている中野愛子さんにお会いしました。降臨した神々を楽しませる捧げものとして、バリ舞踊とバリ絵画はその誕生や発展の歴史において多くの共通点があり、モンキーフォレストのおいしいランチをいただきながら、しばらくその話題で盛り上がりました。
中野さんのお話によると、バリ舞踊では音に反応して、常に身体のどこかを振わせるのだそうです。一方、日本舞踊は「間」の芸術だと言われる通り、動かすことよりも、むしろ、いかにして静止するかに神経を集中しています。絵画もこれによく似て、画面いっぱいにぎっしり描き込むバリ絵画に対して、日本画は余白としての「間」で余韻や余情を表現し、好対照的をなしています。大変興味深いですね。
バリ絵画展「五感を満たす食卓」は来週20日(水)までやっています。詳細はこちらをご覧下さい。また、中野さんは12/23(祝)に同じくバリカフェ・モンキーフォレスト渋谷で、華麗なバリ舞踊を見せて下さいますよ。その時にバリ絵画もコラボできればいいなあと思っています。
さて、今日は11月2日のブログでご紹介したソキさんの注文制作の続編です。
前回はちょうど下絵が終わったところでしたが、その後お祭りも一段落し、あれよあれよと言う間に制作が進み、今五合目くらいまで来ました。明るいエネルギーいっぱいの作品になりそうですね。これから細部が描き込まれていきます。
ビックリしたのはソキさんの服装。作品に合わせてか鮮やかな色の上下です。半年前にお会いした時と比べると随分印象が変わりました。きっと絵を描きながら、ソキさん自身も絵の持つエネルギーを吸収しておられるのでしょうね^o^
注文者のtomu様からは次のようなコメントをいただきました。
「綺麗な吸い込まれそうな青色ですねぇ。心トキメキます。
ソキさん。わざわざ着替えてくれたのかな~。
このように、お客様と一緒にワクワク&ドキドキした気持ちで完成を待つ時間をとても尊く感じています。完成した作品はこんな思い出と共に、見る度にtomu様を楽しく幸せな気持ちにしてくれることでしょう。あともう少しです!
※この記事には続きがあります。あわせてお読み下さいね。(’14/2/15追記)
<関連サイト>
注文制作であなたのこだわりの一枚を
こんにちは、坂本澄子です。今日から3連休。どこかに行こうと計画されてる方、お仕事される方、おうちでのんびりされる方…、それぞれあると思いますが、私はとりあえず、ケン(フレンチブルドッグ♂2歳)と朝の散歩に出かけてきました。いつも行く公園の隣に大きなタワーマンションが建築中で、だんだん高くなっていきます。今32階まで来ました。その横を真っ赤な太陽が昇ってくるのを見ていると、なんだか厳かな気持ちになりました。
さて、「お部屋に絵を飾りたいけど、なかなかこれと思うものに出会えなくて…」と思っていませんか?そんなあなたにおすすめしたいのが注文制作です。「バリアートショールーム」でご紹介している画家はいずれも注文制作をお受けします。GALUH, WIRANATAなどの人気作家は多少お時間をいただきますが、それ以外は1〜2ヶ月でお届けが可能です。通常こんな流れで進めています。
でも、目に見えないものを注文するのって勇気がいりますよね。そこで、ちょうど今まさに進行中の制作例をご紹介します。
「バリ島の不思議な力が湧いてきて元気になりそう」横須賀市 tomu様のケース
以前からSOKIさんの作品が大好き。「見ているとバリ島の不思議な力が涌いてきて元気になりそう。そんな作品を自宅に飾りたい」と秋のバリ絵画展に初めてお越しいただきました。残念ながら、展示作品は今ひとつご希望にフィットしなかったのですが、「バリアートショールーム」の画家のページに掲載しているSOKIさんの過去作品をご覧になられて一目惚れされたのがこれです(写真)。バリ島を形取り、神々の島での生活や祭りを鮮やかに描いた壮大なスケールの作品。
さっそくSOKIさんに問い合わせてみると、「では、あれに似たイメージで描きましょう」と即OK。当初は60cmx80cmの日本間サイズで考えていたのですが、画家からの提案もあり、壮大な作品の魅力を存分に引き出すため最終的に80cmx100cmの迫力サイズで制作中です。
中間報告にtomu様にお送りした写真がこれで、今下絵が終わったところです。10月はガルンガン(バリ島で最も大きなお祭り)や村の祭事があり、長老格のSOKIさんはかなりお忙しかったよう。「ちょっと遅れ気味」と申し訳なさそうでした。
tomu様からはすぐに返信をいただきました。
「おはようございます。制作途中の進捗をご連絡いただけるんですね!!益々。。。感動!!かゆいところ!!あっ!そこ!そこ!とても気持ちの良い朝を向かえられました!バリ島のお祭りは大切な文化と理解してます!家宝は寝て待て。。とも言いますし、何よりもソキさんが気持ち良く制作できる環境の中で私にとって特別な、この作品を仕上げていただければ幸いです。。。ソキさんにそのことをお伝え下さい。大丈夫です」
これを見て、じーんと来ました。私にとっても特別な朝になりました。tomu様の温かいメッセージはもちろんSOKIさんにお伝えして、この後の制作も元気100倍で頑張ってもらっています。最終納品までブログの中で実況中継していきますので、ぜひご一緒に見守って下さいね!
お気に入りの作家がありましたら、ぜひ過去作品をご覧になってみて下さい。あなただけの特別な作品を制作するヒントがそこにあるかも知れません。
※この記事には続きがあります。(’14/2/15追記) あわせてお読み下さいね。
<参考サイト>
SOKI作品 … 極彩色でバリの風物を描くヤングアーティストスタイルの第一人者。その作品はバリ島の主要美術館に所蔵されています。
バリ絵画の主要スタイル … どんな作品が好み? まずはスタイル一覧から。
バリのお祭りガルンガン
こんにちは、坂本澄子です。
この時期、バリの人たちは大忙し。画家さんにお願いしている作品も「11月に入ったら着手するね。ごめんね」という感じです。それもそのはず、210日に一度巡ってくるバリで最も大きなお祭り「ガルンガン」の季節だからです。「ガルンガン」は世の中の善が悪に勝利したことを記念する祝日。この日、各家庭の家寺や村の寺院に神々や自然霊、祖先の霊が降り立ち、バリの人々は様々な供物でもてなし、祈りを捧げます。10日後の「クンニガン」に再び天上界に戻るまで、様々な儀礼が毎日のように続きます。もちろんその準備も大変なもの。
皆さんもバロンやペンジョールは色々なところで目にされると思いますが、この様子はバリ絵画の題材としてもよく取り上げられています。
「ペンジョール」は大きな竹をしならせるように作った竹飾り。各家庭の玄関の右側に立てられます。祖先の霊はこのペンジョールを目印に自分の家に降り立ちます。祖先の霊をお迎えするのは、日本のお盆と同じですね。ペンジョールの独特のしなりは聖山アグン山を表すと言われ、よく見ると先端には、ヤシの葉(シュロの葉が使われることも)を神様の形に切り抜いたラマックと呼ばれる切り紙細工のような人形が取り付けられています。ガルンガンが終わっても35日間はそのままなので、皆さんも写真のような光景をご覧になったことがあるのでは?
「バロン」は善を象徴する聖獣で、日本の獅子舞のように中に人が入って、写真(ソキ「バロンの行列」)のように村中を練り歩きます。子供たちがやっている子供バロンに遭遇することも。ちなみに、バロンに対して悪の象徴は「ランダ」と呼ばれる未亡人の魔女。時に子供を食いちぎるとんでもない魔物です。厄介なのは、死んだと思ってもすぐにまた生き返るゾンビのような性質。つまり、バロンとランダとの戦いは永遠に繰り返されるというわけです。なんだか、良心とちょっと悪い心の間で葛藤が繰り返されるのに似ていますね。「あ、またやっちゃった。成長してない」と自己嫌悪に陥るのもこんな時(^^;;
ところで、バリ島には古くから精霊信仰があり、ウブドの市街地にはいくつかの場所に「精霊の通り道」があります。わずか1〜2m程度の細い道なのですが、村の共同体や地方自治体がお金を出して作っているそうです。また、大きな木やチャンプアン(2つの川が合流する場所)には精霊が宿ると言われており、尊いものを表す黄色い幕が張られています。先祖の霊や自然に宿る霊を大切にしていることが随所に感じられますね。
こんなバリの風習と人々の生活を描いた作品を本場インドネシア料理を楽しみながら鑑賞いただけるミニ絵画展を企画しました。
バリ絵画展『五感を満たす食卓』
期間:11月12日(火)〜20日(水)
展示内容:
★アリミニ…バリの伝統絵画を女性ならではの色彩感覚と流れるような構図で描いた作品
★ライ …クリキ村に伝わる細密画。小品ながら1ヶ月以上かけて丁寧に仕上げた芸術作品
★ソキ …極彩色でポップな作風に思わず元気が出るヤングアーティスト・スタイル。
その第一人者ソキ氏の小品と若手作家ヌアダ氏の作品
ウブドのいまむかし
こんにちは、坂本澄子です。バリとお隣のロンボク島で撮った写真を送っていただきました。向こうの写真を見ていつも思うことは、色彩の豊かさです。原色のパレットのような色のフルラインナップ。その色彩感覚の豊かさが、絵画の世界でもあの美しい色使いを生み出すのだなあと感じています。
さて、前回に続き今日も歴史のお話を。今日のバリの文化の原型はお隣のジャワから伝わったものです。14世紀、ジャワではマジャパヒト王国が全盛時代で、その傀儡政権であるゲルゲル王国がバリ全土を支配していました。その後、イスラム勢力の侵攻により、マジャパヒト王国が滅ぼされ、バリに逃れた王宮の廷臣、僧侶、工芸師など知識階級の人々によって古典文学、影絵芝居、音楽、彫刻など多くの文化がもたらされたのです。バリが古代ジャワ文化の継承者とも言われる所以です。
しかし、11世紀頃には既にバリ独自の王国や文化が存在していたのですよ。これがバリ最古のペジェン王国です。ゴア・ガジャ遺跡やイエ・プル遺跡など、ウブド近郊にその史跡を見ることができます。ウブドは古代バリの中心地だったということですね。
写真はゴア・カジェン遺跡。左写真の入り口を入ると、中は右写真のように洞窟になっていて、ここにはヒンドゥの三大神プラフマ(宇宙の創造を司る)、ウィシュヌ(宇宙の秩序を司る)、シワ(宇宙の終わりの日に破壊と再生を司る)を表すという三体のリンガ(男性のシンボル)が祀られています。
バリ、とりわけウブドでは、現在もバリ暦に従って祭礼中心の生活が営まれています。私が常宿にしているコテージのご主人テギさんも週に1〜2回はサルン(腰巻き)を巻いてお寺に行き、祭礼やその準備に携わっていました。仕事を度々休まなければならないので、ホテルやレストラン、タクシーなどバリの観光産業に従事しているのは地元の人ではなく、ジャワからの出稼ぎ労働者が多いのはこのためです。ウブドの人たちは農業に携わる人が多く、パンジャールと呼ばれる隣組の単位で、田植え、稲刈りなどを共同作業で行っています。バリの気候は温暖でお米は年に2〜3回とれるので、共同体での生活はまさに生活の基盤。絵画に描かれている農作業の風景や神様に恵みを感謝し供物を捧げる祭礼の様子は、現在進行形の姿なのです。
しかし…、そんなウブドにもここ数年で観光開発の波が押し寄せてきました。ウブドの中心部近くに住む画家ガルーさんのお宅も周囲の田んぼが次々に埋め立てされ、新しいヴィラが建っているとのこと。ちなみにガルーさんも隣に貸家を一軒立てたところ、マッサージ店がテナントとして入ったそうです。安くて質がいいと地元でも評判のお店の2号店で、1時間のオイルマッサージがなんと600円。ガルーさんもさっそく利用されたのかと思いきや、ご主人のしてくれるマッサージの方がいいんですって。あら〜、仲のよろしいこと。失礼しました〜。しかし、あの繊細な作風は目を酷使します。きっと首筋から肩にかけてコリコリでしょう。ご主人も画家です。ガルーさんがプロの画家になったのもご主人の勧めで女流作家ばかりの絵画展に出展したことがきっかけだと伺いましたが、今をときめく人気作家、色んなところにご主人のやさしいサポートがあるのですね^o^
とまあ、便利になるのはよいことですが、初めてバリを訪れた際に思い出させてもらった大切なこと、特に、自らを大自然の一部として素直に受け入れ、そこに宿る神々に感謝の祈りを欠かさないバリの人々の素朴な思いが失われないようにと切に願う今日この頃です。
<参考サイト>
★ガルー 繊細な筆遣いと色合いの幻想風景画
バリの暮らしがわかる絵画たち
★アリミニ 女性画家らしいちょっとかわいい作風
★ライ この細密さはスゴイ、細密画の代名詞クリキスタイルの作品
★ヌアダ ウブドの農村風景をポップな極彩色で
なぜウブドには画家が多いのか?
こんにちは、坂本澄子です。朝晩、ちょっと肌寒くなってきました。これから冬に向かうわずかな間、日本の素晴らしい秋を楽しんで下さいね。
南緯8°に位置するバリ島には季節がほとんどありません。あるのは雨期と乾期です。先日、ブログをお読みいただいたtomu様から「バリに住む友人が、雨期に入って洗濯物が乾かないと嘆いてます」とお便りをいただきました。雨期と言ってもずっと雨が降り続くのではなく、昼過ぎ頃からスコールが1〜2時間降るという感じなのですが、湿度が90%を超えることも多く(ちなみに梅雨時の東京で平均75%)、晴れ間に洗濯物を干しても大人のTシャツだと2日くらいかかりますし、その辺にパンでも置いておこうものなら翌日にはカビちゃってます(^^;;これでも山側のウブドは海側に比べるとまだしのぎやすい方なのですけどね。
さて、私が初めてバリ(ウブド)を訪れるきっかけとなったのは、「画家が集まっている芸術村」があると聞いたことから。興味津々出かけてみてビックリ、本当に画家が多いんです。「バリアートショールーム」がおつきあいしている画家さんたちも、お父さん、兄弟、ついでに隣の家のオジサンまで画家という環境に生まれ育ち、「物心ついた頃にはもう絵筆を握ってました」という人がほとんど。最近は美術学校に行く画家も増えましたが、身内から手ほどきを受け、見よう見まねで描き始め、次第に自身のスタイルを確立していくのがウブド流です。
それにしても、どうしてここまで画家が多いんでしょう?その理由は歴史の中にありました。バリ州の現在の8つの県の原型は17世紀、8つの王国が群雄割拠していた時代に遡ります。特に、イスラム勢力から逃れたジャワの知識階級が住み着いたクルンクン王国には様々な古代ジャワ文化がもたらされ、絵画の分野では、物語の場面を描いた古典絵画(現在のカマサン・スタイル)が発展しました。
ところで、バリのヒンドゥ教の神様というのは普段はお寺にはいません。ガルンガンなど特別な時に降臨する神様を楽しませるためのいわば捧げものとして、舞踊や音楽、絵画・彫刻などの芸術が育まれたのです。そのため、他の7王国にもそれぞれに腕のいい職人がいました。
ところが…、東インド株式会社を設立したオランダはその勢力をインドネシアにも広げ、19世紀末になるとその支配はバリ島にも及びました。他の王国がオランダに徹底して抵抗する中で、ギャニャール王国(ウブド)だけはオランダと同盟し他王国を滅ぼすことに加担したため、王族中心の旧体制を維持することに成功したのです。芸術のスポンサーは主に王族ですから、弱体化した他王国から多くの職人がギャニャール王国に移り住み、シュピース、ボネなどの外国人画家を招聘し積極的に絵画を保護したウブドに画家の多くが集まったというわけです。こう言うと、仲間を裏切り、芸術の中心となったウブドに対して複雑な気持ちを抱かれるかも知れませんね。でも、ウブドにも古代培われた素晴らしい文化がありました。この話は是非別の機会にさせて下さい。
今でもデンパサールからウブドに続く地域は『芸術街道』と呼ばれ、様々な文化が集まっています。木彫りのマス村、銀細工のチュルク村などは、お土産を探しに行かれたことがあるのではないでしょうか? それから舞踊はプリアタンが有名ですね。ウブド市街地にはたくさんのギャラリーがあり、これらを回ってみるのはバリ観光の楽しみのひとつです。ただし、画家が多いということは作品の質も玉石混淆。中には、お土産用に同じパターンで大量製作された作品もありますから、気をつけて下さいね^_^
* * * * *
今週から、一点から見れる『プライベート絵画展』をやっています。前日のお昼12時までにご覧になりたい作品と時間枠を予約いただくだけ。10月の開催日は23, 25, 26, 30日です。詳しくは開催案内をどうぞ。
<関連サイト>
スタイル別に絵を探す … バリ絵画を代表する主要スタイルとおすすめ作品
10万円以下で絵を探す … おウチに帰るのが楽しくなる!気軽に飾れるバリ絵画