バリアートショールーム オーナーブログ
2015.10.7

ノーベル医学賞の大村智さんは

こんにちは、坂本澄子です。

昨夜1時間ほどシステムが計画外停止をしてしまいました。その時間にアクセスしてくださった方に深くお詫び申し上げます。

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爽やかな秋晴れですね。夏の布団のまま、お腹を出して寝ていたら、明け方「さむっ」と目が覚めました。朝晩は冷えますので、風邪をひかれませんよう、お気をつけくださいね。

さて、ノーベル賞の発表が始まりました。サイエンスの世界にはいまひとつ縁遠い私。日本人の受賞にもいつもなら「へえ〜、すごいなあ」で終わるのですが、医学賞を受賞された大村智さんの意外な経歴には驚きました。

山梨のご出身、地元の山梨大学(自然科学科)を卒業後、理科の先生として定時制工業高校にお勤めでした。ある日、試験の監督中に機械油だらけの手で試験を受けている学生を見て、大学まで卒業した自分が勉強嫌いでいいのかと一念発起し、薬学を志されたそうです。そして、東京理科大学大学院理学研究科修士課程修了し、その後は北里大学で微生物の研究に没頭されるようになります。

アフリカのガーナに行った時に、細菌感染症のため視力を失い、働くこともできない大人たちが木の下にぼんやりと座っている光景に、何とか彼らが失明せずに済む方法がないかと模索し始め、それが今回ノーベル賞の受賞理由となった新薬開発につながったのだそう。

驚いたのはその後で、大村さんは芸術にも造詣が深く、美術作品の著名な収集家でもあるんです。海外の学会に行くたびに、絵を買って来るのには、亡くなった奥様も閉口されたほどだとか。医学とは畑違いの女子美術大学の理事長(現在は名誉理事長)に就任されたのが1997年。その関係か、女流作家の作品収蔵に積極的で、2007年には私費5億円を投じて故郷である山梨県韮崎市に韮崎大村美術館を建設。収集した1800点を超える作品と共に韮崎市に寄贈し、初代館長に就任されました。また、故郷の山梨県韮崎市のために温泉を掘って経営されているそうで、ロビーには絵画がずらり。本当に多才な方ですよね。

実は以前からちょっとした信念があるのですが、いくつかタイプの異なることを並行してやっていく方が、脳のいろんな部分が刺激されて、結果的に能力が高まり、よい結果が出せるということ。今までお会いした仕事ができる方も「こんなにお忙しくてよく…」と思うほど、タイプの異なる趣味をお持ちで、人間的にも魅力的な人が多かったのです。またひとつ、そのよい実例が増えました^_^

ノーベル賞受賞者のコメントにはいつもそれぞれ深みがありますが、大村さんが言われた、「失敗しても絶対に諦めてはだめ」という言葉がずしりと胸に響いた秋の夜でした。

 

 

2015.10.3

川のある風景

こんにちは、坂本澄子です。

先日、久しぶりに郷里の広島に帰ってきました。ドアツードアで5時間、飛行機派と新幹線派に分かれる微妙な距離ですが、私はいつも新幹線です。本数が多いので、ちょうど来た電車に飛び乗れますし、東京始発でまず座れます。4時間、結構有効に時間を使えますよ。

ブログ230_相生橋ごくごく普通の地方都市ですが、帰省するたびにいいなあと思うのは、川のある風景。広島はデルタ地形のため、市内を6本の川(東から、猿猴川、京橋川、元安川、太田川(本川)、天満川、太田川放水路)が流れています。一番有名なのは本川が太田川と元安川に分かれる場所にかかる相生橋でしょう。これなら「あ!」と思われる方も多いはず。

そこに水があるだけで心和むのは、私たちが青いほしに住んでいるからでしょうか。

ブログ230_ウブドの橋ウブドにもいくつも川が流れています。定宿のあるプネスタナン村から南に下り、モンキーフォレスト方面へ歩いていたときに通った橋がこちら。ガードレールが低くて、おまけに横をバイクがビュンビュンと通り過ぎるスリリングな橋。下を眺めただけで、クラクラするほどの高さです。高所恐怖症の私が、エビのように腰が引けた体勢でシャッターを切った写真です^o^;  はるか下を流れる川や深い渓谷の緑が視界に広がった瞬間、ふっと心地よい風が通り過ぎていきました。

ブログ230_チャンプアンバリの画家さんにその話をすると、子供の頃に川で遊んで楽しかった話を聞かせてもらえました。ウィラナタさんも少年時代をウブドで過ごし、川で魚を釣ったり、泳いだりしたことが何よりの思い出。棚田と並んで、絵の題材に取り上げられることが多いのも、きっとそんな大切な思い出からインスピレーションを得ているのでしょうね。

2つの川が合流する場所はチャンプアンと呼ばれ、精霊が宿る聖なる場所。ウィラナタさんの作品『pura campuhan (2008年製作)』(写真)も、心洗われるような清らかな情景。水を汲んだり、沐浴する村人たちが神々しいばかりの光の中に描かれています。

ブログ230_谷川の風景そして、こちらはウィラナタさんの実弟ケパキサンさんの作品、森の奥を流れる川を描いた朝の風景です。乾季のウブドの朝はひんやりとした空気に包まれています。川のせせらぎや鳥や動物たちの声がこだまし、五感が気持ちのよい気に満たされていく作品です。

『こだまする谷川の風景』 Kepakisan

アクリル画  作品サイズ:25cmx21cm 

 

 

ブログ230_ウブドの通り左写真はウブド王宮へと続く東西に走る道、Jl. Raya Ubudです。ご存知の方も多いと思いますが、植物が垂れ下がるように茂ったこの場所も絵になる風景ですよね。実際、ここを描いた風景画は何点もみました。

左の壁の向こう側にも川が流れており、近くにはホテルチャンプアン&スパがあります。敷地内にはいくつものヴィラが渓谷に沿うように建てられており、ウィラナタさんが魅せられたヴァルター・シュピースがその昔住んでいた家があった場所でもあります。ドイツ人画家も異国の地に魅了され、幻想的なバリの風景画を描いたのでしょうね。

さて、第5回バリアートサロン(10月17日開催)は、細密画を取り上げます。手の込んだ緻密な仕事はバリ絵画ならではのおもしろさのひとつ。その魅力をご一緒に楽しみませんか? 詳しくはこちらをどうぞ

<関連ページ>

ウィラナタ作品は注文制作もお受けします

ケパキサン作品ページ

第5回バリアートサロン開催のご案内

2015.9.26

身近なところにあるアート

こんにちは、坂本澄子です。

あいにくの雨模様ですが、外に出るとふわっとあまい香りが。もう金木犀が咲いているんですね。慌ただしく暮らしていると、季節の移り変わりを忘れてしまうことがありますが、誰も気づかなくても、褒めてもらえなくても、自然はしっかりと次の準備をしていて、ふとしたときにはっとさせられます。

ブログ227_運河とてもいい季節なので、最近ケン(フレンチブルドッグ♂4歳)とのお散歩の距離がどんどん伸びています。東京・有明は私が引っ越してきた10年ほど前には、東京ビッグサイト以外これといったものもなく、がら〜んとした感じだったのですが、築地市場の移転や2020年のオリンピックでこのあたりにいくつか競技場が作られることもあり、急ピッチで整備が進んでいます。

足を伸ばしてみると、今まで柵で囲われていたところがすっかり取り払われ、運河が見渡せる広い遊歩道ができていたり、オシャレなお店ができていたりともうびっくりです。中でも、おおお!と思ったのがこちらのアート広場。都会に突如出現したサバンナとでも言いましょうか。遠くに高層ビルを眺めつつ、緑の広場には200匹の動物たちが。

ブログ227_豊洲アートシーン

出典:SPORTS X ART SHINTOYOSU 公式ホームページより

 ART ZOOと名づけられたこの場所、ちょっともったいないのは、ビルの工事現場の裏手にあたり、表の道路から見ただけではここにこんな場所があるなんてわからないのですよ。おかげで他には誰もいない中、日が暮れるまで、この不思議な光景をたっぷりと楽しませていただきました。

 

 意外におもしろいのが、何本ものクレーンが上がっている東京の空。日が沈むまで刻一刻と色を変え、表情を変えるところはバリの空と同じ。そこに影絵のように立ち上がったクレーンの無機質さがいい、なんて思うのは私だけでしょうか(笑)

ブログ227_彼岸花

 こうしてみると、身近なところにアートを感じるものが結構あるんです。ケンを撮るつもりで構えたiPhone。ちょうど彼岸花が見頃で、赤と緑と黒のコントラストがおもしろくて、こんな写真を撮っちゃいました。冬を迎えるまでのわずかな時間、あなたもぜひ見つけてみてくださいね〜。

 

 そうそう、バリ雑貨店「ピュア☆ラ☆バリ」の奈々さんが、ブログ「バリ雑貨店スタッフ達のへんてこバリ島生活」の中で「バリアートショールーム」のことを書いてくださいました。クレイジーな画家WECESさんのこと、おもしろいので読んでみてくださいね。 

<関連ページ>

クレイジー画家!?に絵画オーダーをしてみました! | バリ雑貨店スタッフ達のへんてこバリ島生活

第4回バリアートサロン いよいよ明日開催。

ART ZOO 公式ホームページ バリアートサロンの後でいかがですか?お近くです。

2015.9.19

バリ在住16年「神々の棲む島バリ」は本当に

こんにちは、坂本澄子です。

前回のブログ「ウブドでヴィラに泊まるなら」に、たくさんのいいね!をありがとうございました。私もロカパラ・ヴィラのFacebookにアクセスして、改めてじーっくり写真を見ましたが、ため息がでちゃいました。今日はその続編として、オーナーの日暮若菜さんをご紹介します。ヴィラの素敵な写真もあわせてお楽しみくださいませ!

ブログ226_ロカパラヴィラ猫若菜さんはOL時代(懐かしいですね〜、この響き)、海外旅行が趣味でいろんな国を旅してきた後、最後に訪れたのがバリ島でした。そして、一瞬で恋しちゃったのだそう。それからはもう寝ても覚めても「バリ島に住みたい!」という気持ちは募るばかり。

こんなにバリに惹かれたのは、日本にいると、住まいを確保し、食べるために働かなければならない。でも、バリにいれば、外で寝ても寒くはない。バナナはその辺に生えているし、喉が渇けば椰子の木に登ってココナツを採れば、飢えることもない。決して怠けたいわけではないけれど、何だかとっても許されてて、バリの人たちの他人を許す大きな心って、そんなところから来ているのかな、すごいなと思ったのだそうです。

ブログ226_ロカパラヴィラ外観また、ちょうどその頃、アジア通貨危機で、滞在中のわずか一週間のうちに、マッサージ代が一気に倍になるようなスリリングな出来事も経験しました。成熟した日本と違って、これからとても面白くなりそうな国だなという気持ちもありました。

いったんこうと思ったら行動あるのみ、「まずは言葉」と思って、千葉大に通っているバリ人の先生に家庭教師に来てもらったり、海外で生活して行かなくてはならないので、毎月バリ島に通っては、どんな商品が売られているのかなどリサーチしたり。

ブログ226_ロカパラヴィラバルコニー「とにかく、持ち金も皆無だったので、仕事をしなくちゃと言う事で、日本に住みながらインターネットでバリ雑貨店を始めました。そして、貯金も無いのに、そのままバリ島で住み始めてしまいました(恥)今考えると、若さゆえのものすごく無謀な挑戦だったな~と思いますが、結局何とかなっちゃった感じです(笑)」

実際にバリに生活してみると、日本人からみるとひょえ〜!!と思うことも多々あるそう。

「ちょっと具合が悪かったりするとバリアンに行って、そしてみるみるうちに治ってしまったりとかを目の当たりにすると、目には見えない力を感じます。それから、神様を信じているという意味ではほんとにすごいです。一番神様に近い人たちなんじゃないかと思います」

ブログ226_ロカパラヴィラ田園2気がつけば、バリ島に住んで早16年。日本とは全く違ったりと大変なこともありますが、許され続けているうちに、相手のことも許せるようになり、ちょっとやそっとのことでは怒らなくなったそうです。そして、4年前にご主人のアリさんと出会い、ニュークニン村に住むことに。美しい田園風景が広がり、今でももっともウブドらしい場所です。

 

ブログ226_ロカパラヴィラ寝室2「ニュークニン村は私がウブドに長期滞在するようになって最初に住んだところです。まさか、15年後に結婚してここに住む事になるとは夢にも思いませんでした。日本人の友達によく言われるのが、ウブドに来たら「良く眠れる」という言葉。元々、ウブドの地名の由来がObat(薬)から来ているそうで、そう言うパワースポット的な見えない力のある土地なのかなとも思っています。そんなウブドに住む事が出来ている今を、とても幸せに思っています」

私も次にウブドに行く時は若菜さんのヴィラに泊めてもらおうと思っています。きっとウブドを、そして若菜さんのことをもっともっと好きになることでしょう。今からそんな気がしています。

そうそう、8月にプレオープンしたのに、どうして正式オープンは11月なの?って思いませんでしたか。バリ島では、オープン前に大きなお祭りをやる のが決まり。ちょうどよい日が11月になってしまい、それでなのだそうです。やっぱりバリ島は「神々の島」でした。

そんなバリ島の絵画をご紹介するバリアートサロン。第4回は「バリ絵画の歴史と進化」をお話し、代表的なスタイルの作品をご覧いただきます。好評受付中、詳しくはこちらから。

<関連ページ>

ロカパラ・ヴィラ   ・・・ヴィラの素敵な写真がたくさん

バリ島旅行ドットコムagoda ・・・11月オープン、予約受付開始

幻想的な田園風景画  ・・・ ウブドの田園風景を繊細なタッチで描いた作品なら

 第4回バリアートサロン開催のご案内・・・9月27日(日)11:00〜12:00

 

 

2015.9.16

ウブドでヴィラに泊まるなら

こんにちは、坂本澄子です。

この仕事を始めてから、「ウブドに行きたいんだけど…」と声をかけてくださる方が増えてきました。頼りにしていただけて嬉しい限りなのですが、こと泊まる場所となると、実はちょっぴり悩んでいました。

私がウブドで定宿にしているところは長期滞在向け。1、2泊という場合には、ちょっとオシャレで、ウブドらしくて、日本人の視点でお勧めスポットを教えてくれる、しかも安心で、かつ、お値段手頃なところをおすすめしたいですよね〜。

17-2_若菜さん家族そんなヴィラが11月にオープンします。

オーナーはバリ在住の日本人女性、日暮若菜さんとご主人のアリさんです。若菜さんとはバリつながりで親しくさせていただいており、たまにメールをいただくと、とってもあったかい気持ちになれるんです。その若菜さんのヴィラとあっては、何がなんでも応援したくなりました。8月のプレオープンにさっそく泊めてもらった友達の感想を含めて、ご紹介させていただきますね。

 

ブログ225_ロカパラヴィラウブド南部のニュークニン村。近くにはモンキーフォレストもあります。道路はキレイに掃き清められ、ペンジョールが風になびいていました。見上げると、みずみずしいプルメリアの花が咲いています。

通りから小路を少し入った所にロカパラ・ヴィラはあります。入り口からは想像出来ないほど奥に広がりがあり、冷たい水が気持ち良さそうなプールが見えて来ます。敷地内には3階建てのタワー棟、独立棟ヴィラなど12部屋。泊めてもらったのはタワー棟の3階でした。

ヴィラの朝食部屋の中はとても風通しがよく、乾季だったこともあり涼しくクーラー要らず。広いバルコニーから緑の田園風景を眺めながら、新鮮なバリのフルーツたっぷりの朝食をいただきました。朝のひんやりとした空気が、1日の始まりをしゃんとした気分にしてくれます。また、夕方になると、夕日が椰子の木立の向こうに沈んでいくのを、ビンタンビール片手にずっと眺めていました。

「ああ、ウブドっていいなぁ」としみじみ感じます。いつまでもそこにいたくなるような心地よい空間は、若菜さんのおもてなしとセンスの良さに溢れていました。

インドネシア語で「パラダイスのような場所」を意味する『ロカパラ・ヴィラ』、Facebookでもっとたくさんの素敵な写真をご覧になれます。バリ島旅行.comで11月からの予約も開始したそうですので、よかったらぜひアクセスしてみてくださ〜い。

ところで、若菜さんはバリ島に住んでもう16年になります。初めてバリを訪れたのはあちこち海外旅行をした最後の最後。海外旅行通の若菜さんがバリに一目惚れして、「ここに住みたい!」と思ってからの行動力は「これは運命?」と思えるほど。そして、3年前にご主人のアリさんと出会い、それまで外国人として外側から見ていたバリとは違う一面も見えてきたそうです。土曜日のブログでは、そんな若菜さんの人柄あふれるエピソードをご紹介したいと思います。

9月27日(日) の第4回バリアートサロンもまだ残席があります。今回は「バリ絵画の歴史と進化」と題して、バリ絵画の様々なスタイルの絵をお楽しみいただきます。

<関連ページ>

第4回バリアートサロン「バリ絵画の歴史と進化」開催のご案内

緑いっぱいの花鳥画はいかが?

ロカパラ・ヴィラ Facebook

バリ島旅行.com

 

2015.8.29

私事で恐縮ですが

こんにちは、坂本澄子です。

今日は私事で恐縮ですが、嬉しいことがありましたので、どうかおつきあいください。

私も以前から趣味で絵を描いていましたが、今回思い切って応募してみた二科展に初入選しました。つらかった時に私を支えてくれたある風景を描いたもの。今日はそんな私の絵にまつわる思いをお話させていただきたいと思います。

世界に繋がる窓2

30歳を過ぎた頃、駅前で見かけた絵画教室のポスターがきっかけで、小さな娘を連れて絵を習い始めました。休日くらいは何か一緒にできればと思ったのです。いろんな意味で大変な時期でしたが、不思議と絵を描いていると、他のことは忘れられるんです。そんな自分に、いつか絵に関する仕事ができたらいいなあと漠然とした憧れを思っていました。

外資系企業に勤めていたこともあり、外国人の家庭に招かれることが多かったのですが、どのお宅もお部屋を飾ることの上手なこと。住まいという空間を心地よいものにするためのエネルギーが全然違う、ひいては、生活の質も違うと感じていました。家族の写真やちょっとした記念の品がオブジェとして飾られ、ポスターや複製画ではない本物の絵がさりげなく暮らしの中に取り込まれているのがとても印象的でした。

私が贈った絵はダラスの自宅に飾られている

私が贈った絵は今もダラスの自宅に飾られている(手前)

中でも、英語の先生だったサンドラとは、一昨年アメリカに帰国するまで10年に渡り親しくさせてもらいました。母親のような存在だった彼女が整えた部屋はとても居心地がよく、夫婦揃ってアート好きの自宅には大小様々な絵が飾られていました。ご贔屓の作家だったり、友人が描いた絵だったり、私がクリスマスにプレゼントした絵ですらも、ベッドルームに飾ってくれていました。審美眼といいますか、自分なりの美のモノサシをちゃんと持っているのです。また、それぞれの絵とご自身の個人的な経験がちゃんと紐付いている、それが毎日の生活を豊かにしているのだと感じました。

そんな絵のある暮らしに憧れていた頃、勤続記念に長期休暇が取れ、たまたまバリ島を訪れました。そこで様々なアートや作家と出会い、こんな魅力的な絵が、しかも、手の届く値段で買えることに正直驚きました。これなら、日本で「本物の絵のある暮らし」を提案できるかも知れない。漠然とした思いが、現実味を帯びてきたのはその時からです。物販というよりも、サンドラの家で感じたような、絵があることで作り出される精神的な作用や生活の質といった「物質的な価値以外の何か」を感じてもらえる仕事がしたいと思いました。

出会いと偶然に導かれ、長年過ごしたIT企業を卒業し、絵画の世界に飛び込んだのは3年前のこと。最初は何もかもが初めてのことで、バリ島で画家を訪ね絵を買ってくることも、日本で絵画展を開くことも、ウェブサイトを作り、ブログに文章を書くことも何もかもが試行錯誤の毎日、でも、とてもエキサイティングでした。

しかし、それも一巡すると、できないことの方がだんだん目につくようになってきました。日本で絵を売ることは想像していた以上に難しく、次第に手元資金も少なくなり、焦る気持ちだけが日々強くなるばかり。また、営業として外を飛び回っていた前職と違って、1日のほとんどの時間を一人で過ごすことの孤独さといったら。独立した経験をお持ちの方なら、誰でも一度は通られた道ではないでしょうか。

何かしなくてはいられない焦燥感からか、夜が明ける前によく目が覚めました。マンションの19階の窓の外はまだ薄暗く、眼下に広がる高速道路や建築中の街並み、次第に明けゆく空と海を見ながら、弱い自分と戦っていると、そんな早朝でも高速を走っている車や外を歩いている人が結構いるんです。あのトラックは、この前絵を運んでくれた運送会社の車かも知れない、犬を散歩させているあの人は来月ジョイントで展示会をする住宅メーカーの人かも…などと想像を巡らせると、私のこの小さな仕事も、多くの人々の協力で成り立ちお客様へと繋がっている、そして、それはいつかまた私のところへ戻ってくる。そんな目に見えない繋がりを感じて、とても勇気づけられました。感謝から祈るような気持ちでした。バリの人たちのように。

それからは、せっかくできた時間を大切にして、毎日絵を描き、バリ絵画はもちろん、絵に関する勉強をし、美術館やギャラリーに足しげく通うなど、自分が望んだ、絵の世界を「楽しむ」毎日を心がけました。その頃の自分を思いながら描いたのが、入選作品『世界に続く窓』です。これまでしてきたことが小さな実を結び、方向性として間違っていなかったと嬉しく思うとともに、またひとつ次の視界が開けたように感じました。

今回の入選を励みに、これからも「本物の絵のある暮らし」をご提案する活動を続けていきたいと思います。

<関連ページ>

第100回記念二科展公式ホームページ 9月2日〜14日@国立新美術館

 

2015.8.19

バリ舞踊とガムランの調べに酔いしれる濃密な時間

こんにちは、坂本澄子です。

先日、「阿佐ヶ谷のバリ舞踊祭」で素晴らしい踊りを見せてくださったあのお二人が8月30日(日)17:00〜再び舞台に立ちます。山室祥子さんと荒内琴絵さん。日本におけるバリ舞踊の第一人者です。

ブログ220_山室祥子+荒内琴絵山室さんは阿佐ヶ谷のバリ舞踊祭では天照大神(アマテラスオオミカミ)に扮し、後半はバリの伝統舞踊『タルナ・ジャヤ(若き勝利者の舞)』で迫真の踊りを見せてくださいました。ど素人の私でさえ、最初から最後まで目が離せなかったほど。アメリカ人のガムラン奏者と結婚され、現在はアメリカ在住。いまや、里帰りのときにしか、その壮麗な舞は見ることができなくなりました。

一方の荒内さん。暴れん坊の弟神・須佐之男命(スサノオノミコト)を舞い、その役柄にふさわしい力強い踊りを披露されました。荒内さんの踊りはこれまでも何度か見せていただきましたが、独特の目力をはじめ、表情豊かな表現力は人をそらせません。

8月1日のブログ「夏恒例!阿佐ヶ谷バリ舞踊祭」もぜひ読んでみてください。山室さん、荒内ブログ220_ガンプーさんの舞がどれだけ素晴らしかったか、その雰囲気を感じていただけるのではないかと思います。なお、今回の演目は『森の王者の舞』『悪い精霊の仮面舞踊』などバリの伝統舞踊、創作舞踊を中心に行われます。

お二人がいかに類稀な踊り手かをわかっていただいたところで…、でも、それだけじゃないんです!またまた、日本でガムラン奏者といえばこの人、櫻田素子さん率いるガムラングループ「トゥラン・ブーラン」から6名の精鋭プレイヤーによる特別チームが演奏をつとめます。

実は、この公演、山室さんのアメリカ帰国前に緊急企画されたもの。あいにく私自身はその日は所用で東京を離れており、どうしても間に合いそうにありません。しかし、こんな機会はそうあるものではありません。せめてこのブログを読んでくださっているバリファンの皆さまにお伝えしたい。そんな気持ちでご紹介させていただいています。

会場は目黒のチャベ。インドネシア大使館員も通う、知る人ぞ知るインドネシア料理の名店です。30席の半分は既に予約が入っているそうですので、ご興味あればどうぞお早めにお申し込みください。詳しくはこちらのご案内をどうぞ。

天界と人間界をつなぐバリ舞踊。その奥深さを2人の名手が舞い、ガムランの伴奏が盛り上げます。本格インドネシア料理とともに、南国の濃密な夜に身を委ねるひとときを過ごしてみませんか。

最後にバリ舞踊を描いたアンタラ氏の作品をご紹介します。

ブログ220_ガンプー現在のバリ舞踊の原型になった古典舞踊劇、ガンプーに登場するプトゥリ(お姫様)です。「バリの伝統芸能を世界に伝えたい」と語る氏の作品は細部に至るまで正確に再現した描写が特徴。衣装に使われた伝統的な織物の柄まで忠実に描いています。アンタラ氏のバリ舞踊をモチーフにした作品はご希望の演目で制作を承ることも可能です。お問い合わせはこちらのコンタクトフォームからどうぞ。

<関連ページ>

アンタラ特集記事

アンタラ作品ページ

2015.8.1

夏恒例! 阿佐ヶ谷バリ舞踊祭

こんにちは、坂本澄子です。

今年もやってきました、阿佐ヶ谷バリ舞踊祭。昨年もこのブログでご紹介したので、覚えてくださっている方もおられるかも知れませんが、阿佐ヶ谷の七夕祭りにあわせて、神社の能楽堂を舞台に行われる2日間の舞踊祭です。毎年100名を超える国内有数のバリ舞踊家やガムラン奏者が一同に会し、バリの伝統舞踊から現代の創作舞踊まで様々な種類の演目を楽しめます。今年で14回目。

DSCF6963大きな樹々に囲まれた広い境内には時折心地よい風が吹き、昼間のうだるような暑さがすっと引いていきます。境内にチャナンを供えて回る踊り手の皆さんの姿。バリ舞踊が天界と人間界をつなぐ神聖なものであることを思い出させてくれます。毎年、この場所を提供してくださっている阿佐ヶ谷神明宮の神主さんも相通じるものを感じられたと伺いました。

 

初日は9つのプログラムが披露され、いつもながらバリ舞踊の幅広さと奥深さに魅了されました。中でも特に素晴らしかったのが、第2部の『クビャール”光”〜日輪の女神、天の岩戸幻想〜タルナ・ジャヤ』です。阿佐ヶ谷神明宮への奉納舞踊として演じられたもので、ここに祀られている天照大神の『岩度隠れ』伝説を取り入れた創作舞踊と伝統舞踊を組み合わせた珍しい演目。

私たちにも馴染みのあるストーリー展開の中、ガムラン隊の素晴らしい演奏、14名の踊り手それぞれの役に応じた迫力のある踊り、そして、工夫を凝らした衣装…と、見所満載。ラストに天照大神が舞うバリ伝統舞踊『タルナ・ジャヤ(若き勝利者の舞)』は圧巻でした。私は舞踊はまったくのド素人ですが、その見事さにただただ引き込まれます。会場も静まり返り、その一挙手一投足を追っていました。

そこで、写真とともにその内容をご紹介したいと思います。動きについていけず、ピントが合っていないものもありますが、雰囲気だけでも感じていただければ幸いです。

DSCF6954天照大神(アマテラスオオミカミ)は 、古事記によると、弟神、須佐之男命(スサノオノミコト)の暴挙に困って天の岩戸にお隠れになり、世界は闇に沈みました。

写真は、須佐之男命の乱暴ぶりをあらわす激しい舞。手前はそれに合わせて楽器をうちならすガムラン隊。

ちなみに、須佐之男命は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治したことでも有名ですね。

DSCF6966(左写真)松の前で向こうを向いて座っているのが、岩戸にお隠れになった天照大神。その手前で舞っているのが、「困った、どうしよう」と知恵をしぼる八百万の神々の姿です。

 

 

 

DSCF6969そこに現れたのが天宇受売命(アメノウズメ)。岩戸の前で楽しそうな舞を披露し、その姿を見た神々は大笑い。天照大神は「外は真っ暗闇のはずなのに一体どうしたのだろう」と訝しく思い、岩戸をほんの少しだけ開けます。

そこをすかさず、怪力の天手力男神(タメノダジカラオ)がグイと引っ張り出し、再び光と喜びに満ちた世界が戻ってきました。

DSCF6985ラストの「タルナ・ジャヤ」は、「成功を勝ち取り、大人の世界に足を踏み入れた」若者の自信に満ちた気持ちを表現した踊り。もとは2人で踊るものだったそうですが、ダイナミックな動きが多くふたりの動きを合わせるのが難しいこともあり、最近では単独で踊ることが多いそう。

踊り手の力量が要求される踊りだと思いますが、本当に素晴らしかったです!

 

 

この阿佐ヶ谷バリ舞踊祭は入場無料。出演者はもちろん、運営を行うスタッフの方々も含めてすべてボランティアによって成り立っています。踊りを習うためバリの先生のもとに通い、衣装を揃えられるだけでも経済的には相当な負担のはずですが、バリに惹かれた人にお会いするたび、その分野は何であれ「この魅力を伝えたい」という強いエネルギーのようなものを感じます。

今日も8月2日(日)17時開演。昨日とは違うプログラムが楽しめます。インドネシア料理やビール、雑貨を販売する屋台もありますので、ぜひ行ってみてはいかがでしょうか。

<関連サイト>

バリ舞踊祭公式サイト

 

2015.7.22

夏が来ると思い出す情景

こんにちは、坂本澄子です。

暑中お見舞い申し上げます。梅雨が開け、いよいよ夏本番を迎えました。南半球にあるバリ島はいまは冬。ウブドでは朝晩気温が20℃前後まで下がると、友人からメールがありました。先週のガルンガンの後も小さなお祭りが続き、バリの人たちはみな忙しくしているそうです。

さて、夏が来ると思い出す情景ってありませんか。

私にもあります。確か、小学校3年生だったと思います、遠い親戚のおばあちゃんのうちに行ったときのこと。そこは広島県北部にある山あいの町で、青い田圃がどこまでも続き、隣の家はと言えば、何百mも歩いていくようなところでした。土間には牛が1頭、裏庭にはニワトリ。毎朝卵を取りに行くのが私の仕事になりました。湧き水で顔を洗うと、冷たい水にシャキッと目が覚めたものです。

ある夜、蛍を見に連れていってもらいました。街灯もまばらで、たよりは足元を照らす懐中電灯と月明かりだけ。闇の中を進むと、やがて、あちらに一匹、こちらにも一匹とほのかな光が。まるで呼吸をしているように、時々ふっと明るさを増します。

「懐中電灯を消して」

あたりはまた闇に包まれました。虫の鳴く声に混じって田圃を流れる水の音。稲の青い匂いと足元にやわらかい草を感じながら、蛍の光を追っていました。

 

『満月の夜に 〜Fullmoon Galungan』 WIRANATA

『満月の夜に 〜Fullmoon Galungan』 WIRANATA

この作品を初めて見た時、そんな子供の頃の情景が鮮やかに甦ってきました。

『満月の夜に』は、画家のウィラナタが子供の頃の記憶を紡ぎ合わせて描いた作品です。4000km離れた南洋の島で、同じように心の風景を持つ画家と出会えたことに感激しました。60x80cmの大きさは、窓から外の風景を見ているような臨場感があります。ウブドの田圃で見る蛍は見過ごしてしまいそうなほどの小さな光ですが、バリにいて日本を思い出す瞬間でした。

みなさまも、この夏素敵な思い出をたくさん作ってくださいね。

<関連ページ>

ウィラナタ作品ページ

 

2015.3.28

ヤングアーティスト派の巨匠

こんにちは、坂本澄子です。

暖かくなってきましたね。若葉の緑も次第に濃くなり、ケンの散歩道で見かける名も知らぬ可憐な花々が、黄色、ピンク、紫と目を楽しませてくれています。気分も上々です^o^

絵にも、こんなふうに見る人の気持ちを高揚させてくれる作品がありますよね。バリ島ではオランダ人画家アリー・スミットに師事した若い画家たちが、まさにそうでした。1956年にウブドのペネスタナン村に腰を落ち着けたスミットは、自分を慕ってやってくる地元の若い画家たちに、色鮮やかな絵の具を与えて、自由に描かせました。彼の色使いに魅せられた画家たちは、バリの伝統絵画に特徴的な細密さに、極彩色を取り入れるようになったのです。かつてのヤングアーティストたちは、今では巨匠と呼ばれるように。今日はそんな画家の作品をご紹介します。

LONDO – 1948年バリ島ペネスタナン村生まれ。アリー・スミットの最も初期の弟子のひとりです。家鴨使いとして家計を助けていた少年時代、アリー・スミットと出会い、彼の主宰する”Young Artist Organization”に加わったことから、大きく人生が変わったのです。では、さっそくその作品をご覧ください。

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『村の生活 〜 稲刈り風景』 LONDO  アクリル画 40cmx60cm  106,000円

ヤングアーティスト派の作品は左右対称で並行的な構図が一般的ですが、LONDOの作品は少し高い位置から俯瞰したものが多く、のびやかな広がりを感じます。そして、細部に目を向けると、色使いに画家のセンスが。例えば、田圃で虫をついばんでいる家鴨たちには茶色の中にピンクをアクセントに使ったり、田圃の水に深い群青を混ぜたりと、ドキッとする配色が見られるんですよ。

ブログ205_ロンド作品LONDOの作品はバリ島のアルマ美術館に所蔵されており、展示室で見ることができます。私も実際に見てきましたが、氏の作品の特徴である効かせ色が使われており、明るい気持ちになりました。(注:効かせ色とはファッション雑誌でよく使われる言葉で、アクセントカラーとか、回りと調和しつつ、ちょっと洒落た色使いをいいます。読者の方からご質問をいただきましたので、注釈を追加します)

氏の作品はLALASATIなど絵画オークションでも、安定した価格で取引されています。

『村の生活 〜 稲刈りの風景』、ぜひ現物をご覧いただき、元気の素をチャージしてくださいね。5月18日(月)〜23日(土)の「春のバリ絵画展」@東京・京橋にて展示販売します。

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『春のバリ絵画展』

『村の生活 〜 稲刈り風景』LONDO ・・・作品詳細、ご注文はこちらから

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