リトグラフ vs 肉筆画
こんにちは、坂本澄子です。
先日、東京駅まで出たついでに、初めて「東京ステーションギャラリー」に入ってみました。駅舎が改装されてから、丸の内北口を通るたびに気になっていた場所です。
やっていたのは、企画展「パリ・リトグラフ工房idemから ー 現代アーティスト20人の叫びと囁き」。偶然入ったのですが、その日が最終日でした。
パリのモンパルナスにある「idem Paris」は、100年以上もの歴史を持つリトグラフ工房。深緑色の鉄製の扉を開けると、7、8mの天井高の小型体育館のような場所に、年代もののプレス印刷機が重い音を立て、棚にはナンバリングされた大小様々なサイズの石版がずらり、壁にはここで制作された版画やポスターがところ狭しと飾られています。ちなみに、プリントインクや薬品を落として石版は再利用されます。
かつてはピカソやシャガールも制作を行ったこの工房で、ひょっとすると彼らと同じ石版が使いながら、20人の現代アーティストたちが職人と協働で作り上げたリトグラフ作品、120点が展示されていました。
ところで、リトグラフには大きく分けて二種類があるのをご存知ですか?ひとつは複製として版画を作るケース。もうひとつは最初からリトグラフという技法を用いて制作を行うケースです。作品価値が高いのはもちろん後者で、今回展示されていたのもそんな作品ばかり。
日本では一点物よりも、リトグラフやシルクスクリーンなどの版画作品を購入する人の方が圧倒的に多いですし、「バリアートショールーム」の展示会を見に来られるお客様にも、「ガルーさんの作品をリトグラフにする予定はないの」と訊かれることもあります。いままで素通りしてしまっていたリトグラフの魅力に、今日こそ気づくことができるかも知れない、なんて期待もあったのですが…。
やっぱりなんだかピンと来なかったのですよ。モダンアート作品としての、メッセージ性だったり、作家の世界観みたいなものには興味を持ちましたよ。でも、じゃあ、ガルーさんの絵をリトグラフにするかと言われたら、それはやはり違うと思ったのです。工房の卓越した職人技で、あの光の繊細さが再現できたとしても、画家が思いを込めながら時間をかけて筆を運んだ作品そのものとは明らかに違います。
なぜリトグラフなのか。価格的な理由が大きいでしょう。嬉しいことに、バリ絵画は著名作家の一点ものでもちょっと頑張れば手が届く価格。ですから、これからも「世界でたった一枚の絵」にこだわっていきたいと思っています。
ところで、今回の展示会にはひとつ面白い試みがなされていました。『楽園のカンヴァス』の著者原田マハさんの最新作『ロマンシエ』とのリンクです。小説の中に登場するリトグラフ工房「idem」とその展覧会。これがリアルに実現したのが、今回私が見た展示というわけです。
Romancier。フランス語で「小説家」という名のこの作品、さっそく買っちゃいました。外見はイケメン、中身はまるきり乙女。アーティスト志望の主人公、美智之輔の軽快な語り口にぐいぐい引っ張られるように読んでいます。小説がどんなふうにリアルへと繋がっていくのか楽しみ!
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ガルー作品ページ この光の繊細さがリトグラフで表現できるでしょうか
東京ステーションギャラリー 100年前の赤煉瓦が残る素敵な美術館
リトグラフ工房 idem Paris 工房の様子がたくさんの写真とともに紹介されています
アタマとカラダのメンテナンスに
こんにちは、坂本澄子です。
最近、私の周囲には心身をよい状態に保ち、アタマをクリアにすることに並々ならぬ関心を持ち、努力している人たちが増えています。
ランニングを始めたと思ったら、いつの間にかフルマラソンを走ってしまう人も結構いて、そんな人に話を聞くと、走り出してしばらくした頃からどんどん体調がよくなり、マラソンに出ることで新たな目標もできて、とても充実していると言います。また、脳の活性化のために、ココナッツオイル入りのコーヒーだけを朝食に毎日続けている人もいます。
確かに、この年代になると、体力や脳力ともに衰えたな〜って感じる瞬間、ありますよね。
実は先日、原っぱに着いたとたんにケン(フレンチ・ブルドッグ14㎏)が猛走、ついて行けずにハデに転倒しちゃいました。顎を擦りむいてトホホな気分。それから、話している時に固有名詞の出てこないことと言ったら…嗚呼、もどかしい^o^;
カラダとアタマにいいことは、人それぞれにやり方があると思いますが、基本的にはカラダとココロが欲するものをよく味わって食べ、一緒にいて心地いい人との時間を大切にし、ワクワクすることを楽しんでいれば、心も身体も脳もイキイキするのではないかと、思っています。
私の場合、走るのは気が重いですが、ケンとの散歩はとてもいい影響を与えてくれています。雨が降らなければ、毎日1時間以上、街を探検するように歩いています。初めての道はもちろん、いつもの道にも何かしら新しい発見があり、それが絵を描く上でもヒントを与えてくれることがあります。
ワクワクするための選択肢は色々あります。旅に出る。絵を鑑賞する。映画をみる。読書する。美味しいものを食べる。オシャレしてショッピングに出かける。ドライブする…などなど、欲張りな私はあれもこれもと。。絵が他のものとはちょっと違うと思うのは、他のものがその時で終わってしまうのに対して(もちろん思い出は残ります)、何度でもいい気分が味わえ、新しい発見があるということです。
そんな絵をアタマとカラダのメンテナンスのアイテムに加えてみませんか?あなたの大切なワンちゃん、ネコちゃんを絵にすることもできますよ。
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気軽に飾れるバリアート お求めやすい価格帯の作品
バリ島の美術館に選ばれた作家たち 長く愉しめるいい作品なら
バリの音と風景画
こんにちは、坂本澄子です。
昨日、JALの機内誌「JAL SKYWARD」の2月号が届きました。前座席のポケットに入っているので、愛読されている方も多いのでは。かく言う私も毎号楽しみにしている雑誌のひとつ。丹念な取材を通じて、その土地の風物や人々の素顔が紹介される旅の記事は、いつも旅情を誘います。
その「SKYWARD」にバリ島が紹介されていました。「音、降る島へ」というタイトルの通り、ガムランの音色に関するお話をテーマに、バリ島の自然や暮らしが丁寧に紹介されており、既に知っていることであっても、的確かつ美しい言葉で綴られると、新たな共感を呼び起こします。
「深い森の中を歩いていると、ふと不思議な感覚にとらわれた。周囲を包み込む様々な音が、突如、整然としたリズムをもつひとつの音楽のように耳に響き始めたのだ」という冒頭の文から、「そう、そう!」と引き込まれ、7ページの特集を一気に読みました。そういえば、私も夜更かしして本を読みながら、風に揺れる椰子の葉擦れや川のせせらぎ、カエルやトッケイの鳴き声などとともに、時折交じるガムランの低い音色。そんな音を、まるで音楽のように感じたことがもありましたっけ。
へえ〜と思ったのは、楽隊を持つバンジャール(村の地域共同体)ごとにそれぞれ異なる音色があるということ。ガムランというのはご存知の通り、青銅と竹から作られる鍵盤打楽器によるオーケストラ。その歴史は紀元前に東南アジア一帯に興った青銅器文明・ドンソン文化にまで遡り、豊富な楽器の種類と編成によって、奏でる音色は随分変わってくるのだとか。
バリ島のガムランには「コテカン」と呼ばれる特有の入れ子構造のリズム技法があり、人によって楽器を叩くリズムを変えているのだそう。音の数とリズムの違いからくる音の粒ひとつひとつが、まるで「点描画のようにその場を埋め尽くす」というわけです。バリのガムランに感じる多重的な広がりはここから来ていたのかと納得。
絵にもそんな多重的、多次元的な広がりを感じることがあります。女流作家ガルー(Galuh)の描く幻想風景画はそんな不思議さを感じさせてくれる魅力に包まれています。目で見る風景の広がりに加えて、先ほどからの様々な音や土の匂い、足先にあたる柔らかい草の感触などが、まるでその場にいるかのような感覚を伴って迫ってきます。
「私が感じたものを、絵を見る人にも感じてもらい、穏やかな気持ちになってもらえれば。そんなふうに考えて、いつも絵を描いています」と言ったガルーさん。バリの様々な音の中で、今も耳に残る彼女のやわらかな声が、一番心地よいかも知れません。
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ガルー作品ページ 美人人気画家が描く幻想的な風景画
日本の狭い住宅事情には縦長の絵
こんにちは、坂本澄子です。
前回のブログでお話した台湾の故宮博物院、2階の絵画コーナーには水墨画が展示されていました。その多くは山水画で、手前にある人里から遠くの山並みへと続いていく壮大な風景が、墨の濃淡だけで描き出されているのがとても印象的でした。
山水画は下から上へ、近景→中景→遠景の3つに描き分けられているため、下から上へと視線を動かしていくと、近くから遠くへと、まるで絵の中を旅しているような感覚が味わえるとともに、距離だけでなく時の流れを感じることができるのだそうです。そう言われてみると、掛け軸もよく床の間の前に座って見上げるように鑑賞しますが、理にかなっているというわけですね。
バリ絵画でも、近くのものを下に、遠くを上に描くことで、遠近感を表現します。一昨年、ウィラナタのアトリエを訪ねたとき、畳ほどの長さの風景画が立てかけてありました。まだ、製作途中でざっくりと陰影をつけた段階だったのですが、それがかえって水墨画のような魅力を醸し出していました(youtubeで動画公開中)。ウィラナタが山水画を意識したかどうかはわかりませんが、彼の作品のファンは華僑の人たちにも多いのは、そんな共通点から来る懐かしさに惹かれるせいかも知れませんね。
彼のこれまでの作品をみると、ほとんどが注文製作のため様々な大きさの絵があります。きっと、注文主が飾る場所にあわせて趣向を凝らした結果なのでしょうね。今日はその中から山水画を思わせる縦長の風景画をご紹介します。下から上へ、絵の中を旅するようにご覧になってみてください。
『sawah di kaki bukit」山の麓の棚田の風景 Wiranata 2007年 (150x100cm)
見上げるような大作です。手前の近景には、2人の農夫がまだ薄暗い谷間の棚田で田植えをしています。やがて昇ってきた朝日が彼らの影を落とすと、水田の澄んだ水に映り込んだ景色が浮かびあがり、暑い1日が始まります。
中景には、差し込んだ朝日が椰子の葉と戯れています。右側に視線を移すと東屋があり、2人の子供が相撲のような遊びをする姿に、奥に座った老人がやさしい眼差しを向けています。
さらに遠くにも人がいるようです。右手に子供を抱え、頭の上で荷物を運ぶ働き者のバリの女性、男性は窯の手入れをしています。これから草刈りでしょうか。奥では牛が静かに出番を待っています。雲海を隔て、景色はさらに高い山々へと連なっています。のどかで、そして荘厳なバリの朝のひとときです。
「Turun ke sungai」川へ降りる道 Wiranata 2008年 (100x60cm)
こちらも谷間の水田に朝日が差し込む風景を描いた作品。牛を連れて野良仕事へと道を下っていく農夫になったつもりであたりを見回してみると、川を流れる水の音など、実に多くのものが五感に迫ってきます。ノスタルジックな気持ちにさせてくれる色使いもいいですね。
(画像をクリックすると、作品の拡大写真へ)
手狭な日本の住宅事情でも、縦長のスペースならば意外に見つかる
一方、ご自宅を新築、改築された際には、1箇所でも絵を中心に空間設計をされると、求心力のある素敵なスペースが作れます。ご注文製作はそんなご要望にお応えします。絵を飾りたい場所の写真をお送りいただければ、無料でコーディネイトのご提案をします。お問い合わせはこちらからどうぞ。
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Wiranata作品ページ バリ島の美術館で作品所蔵される人気アーティスト
バリ島の熱帯幻想風景画 早暁、夕暮れの光の幻想的な風景をお楽しみください
故宮博物院に行ってきました
こんにちは、坂本澄子です。
かれこれ30年前。明け方まで仕事、朝の便を寝過ごして、せっかくの台湾行きを逃した悔し〜い経験を持つ私。(ちなみに会社のコンベンションで上司から大目玉をくらいました)以来訪れる機会がなったのですが、この度ついに、「寒い日本を脱出して、おいしいものを食べて、悠久の歴史に触れよう」と意気揚々と羽田から飛び立ちました。
ところが、、着いた翌日から台湾は40年ぶりの大寒波。台北市内でもみぞれがちらつくほどの寒さに、「台湾って沖縄よりもさらに南じゃなかったっけ〜」 後から知ったのですが、沖縄でも雪が舞う寒さ、本来亜熱帯の一帯がすっぽりと寒気団に覆われたのですね。
今回の旅の目的は国立故宮博物院。79万点もの所蔵品を持つ、世界四大ミュージアムのひとつとあって、朝から大混雑です。7割が中国本土からの観光客で、銀座で見るたくましい彼らの姿はここでも健在でした。3階建ての広い建物ですが、12000点分のキャパの展示スペースは、書物を除いた約10万点をローテーションしているのだそう。全部見るには何年もかかります。
故宮博物院で真っ先に思う浮かぶのは、やはり「翠玉白菜」ですよね。残念なことに、台湾南端にある別館でここ何ヶ月間か展示しているそうで、そこにはありませんでした。私ががっかりしたのを見かねたガイドの曾さんが「故宮博物院のナンバー1は実はこれなんです」と案内してくれたのが、青銅器の展示室にある「毛公鼎」と「宗周鐘」。いずれも西周晩期といいますから、今から3000年近く前に作られたものです。写真では小さく見えますが、「毛公鼎」は直径が47cmもある大鍋で、煮炊きをするのに使用されたものだそうです。
驚いたのは、そこに刻まれた500字の銘文。篆書体(てんしょたい)と呼ばれる漢字の前身を用いて、その時代の有力者の偉業が記録されています。3000年前と言えば、日本では石器のもりで動物たちを追いかけて狩りをした時代ですよ〜。同じ頃、既に階級社会が発達し、文字を持ち、政治が行われていたことを知る、重要な史料です。
ちなみに「翠玉白菜」は貸し出しても、この2点のお宝は門外不出だそう。
同じフロアで、清の乾隆帝のコレクションの展示をやっていました。貴重な材質、珍しい細工を施した作品の数々が並ぶ中、写真の象牙球「鏤彫象牙雲龍文套球」は超絶な工芸で、ひときわ目を引きました。
直径12cmの球体の内側にまた別の球があり、そのまた内側にも…というふうに、全部で24層の球体が重なり、どれも自在に回転するのです。もちろん後から重ねたのではなく、外側の球体から順番に彫り出して形作ったもの。いずれの層もレースのように美しい彫刻がほどこされ、一番外側には龍の姿がありました。貴婦人のように優美な全体像はこちらでどうぞ。
こうして台湾を訪れて思ったのは、中国本土を含めてすごい国だということ。そして、歴史の中で日本との接点が多いことを改めて感じました。漢字もそうですし、展示品の中には、これは日本にもあると思うものがいくつかありました。一方、日本の美術品の多くは、前々回のブログでご紹介した浮世絵のように、海を渡り日本を離れてしまっているのが残念です。経済や技術だけでなく、芸術面においても日本はもっと誇りを持っていいのではないでしょうかね。
お隣の国々との関係が転換期を迎える中、色々なことを考えさせられました。30年前ではなく、このタイミングで行けたことは意味があった、そう思える旅になりました。
絵は非日常への扉
こんにちは、坂本澄子です。
本物の(一点ものの肉筆画)絵のある、心豊かな暮らしをお届けしたくて、3年前にこの「バリアートショールーム」を立ち上げました。バリ絵画にこだわっているのは、特にこれから絵を持ちたいと考えておられる方にとって、よい選択肢だと思うからなのです。
しかし、絵を持つ目的はあくまでも、「感性を高め、豊かな時間を過ごすこと」ですから、このブログではバリ絵画に限らず、いろんなことを書かせていただいています。前回も浮世絵の話に「???」と思われた方も多いかも知れませんが、作品は何であれ、それをどう楽しむかという点では同じではないかと思っています。
そんな私がどんな人間かを知っていただきたくて、今日は私自身が描いた作品の中から気に入っているものをふたつご紹介したいと思います。どうぞおつきあいくださいませ。
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絵は30代半ばから描き始めました。週末に子供と一緒に何かしたいと思っていたところ、たまたま駅前で絵画教室のポスターを見つけました。それ以来、細く長いおつきあい。私にとっては絵を描くことは、非日常への扉のようなものなのです。身近に見たものを描きながらも、ちょっと別世界に行ってみたいという願望が現れているかも知れません。
『月夜のミモザ』(2010年パステル)
ミモザは春先に黄色い小さな花を房のように咲かせます。大阪に住んでいた頃、駅から自宅まで続く急な坂道を、私はよく仕事のもやもやを抱えたまま帰っていました。
ちょうど中間点あたりにその樹はありました。息が上って中断した思考の隙間に、夜目にも鮮やかな色彩が飛び込んできました。私はしばらく呆然と満開の花を見ていました。花の向こうにはぽっかりと満月が浮かんでいました。孤独な気持ちにそっと寄り添うように、花と月の精が舞い降りてくるように感じました。
『虹色のバラ』(2014年ミクストメディア)
友人が転職したときに、仲間うちでお祝いにプレゼントしたバラです。お礼代わりに送られてきた写真には、ワインボトルに飾られた姿が写っていました。「どうしてこんな色になるのだろう」と考えながら、いつまでも眺めていました。
そのうち、ガラスの中の小さな空間が、自分の内面の世界に重なりました。物理的にはちっぽけな空間ですが、無限に広がっていく小宇宙のように思えてきました。そこに咲く花はこんな色をしているかも知れません。
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冒頭に書かせていただいた、バリ絵画がよい選択肢である理由ですが、私は次のように考えています。
- 16世紀から受け次がれてきた伝統的技法が西洋技法と出会い、磨かれさらに進化、質の高い作品が多い
- 著名作家の作品でも手が届く価格で購入できる(物価水準の違いによるもの)
- 幅広いジャンルがあり、好みにあうテイストの作品が選べる
まずは「お求めやすい価格帯の作品」から、非日常への扉をあけるきっかけ作りはいかがでしょう。それとも最初からいいもの志向でいきますか?
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気軽に飾れるバリアート ・・・お求めやすい価格帯の作品がずらり
バリ島の美術館に選ばれた作家たち ・・・バリ絵画を代表する著名作家の作品
コレクターの視点で見た浮世絵のおもしろさ
こんにちは、坂本澄子です。寒いですねー。先週までの暖かさにすっかり油断していました。お風邪などひかれませんよう気をつけてくださいね!
さて、先日上野の森美術館に『肉筆浮世絵 美の競艶』展を見に行ってきました。
日本美術蒐集家であり、シカゴ美術館の理事でもあるロジャー・ウェストン氏所蔵のコレクションから厳選された129点が紹介されています。それでも会場に収まりきらなかったようで、前期・後期に分けて展示されていました。(前期も行けばよかったと後悔しきり。。)
美人画に焦点をあてた作品構成は、当時の人々の生活がどのようなものだったかを窺い知ることができる興味深い内容。例えば、下記の2点(『時世粧百姿図』より。初代歌川豊国の作)はいずれも遊女たちの寛いだひとときを描いたものですが、官許の吉原(左)と品川(右)とでは随分雰囲気が違うんだなあと。
品川の遊女たちの逞しいこと。お客が残したワタリガニを手づかみで食べる三人組の豪快な食べっぷり。そして、はだけた浴衣姿で、あるものは三味線を弾き、あるものは窓際からぼーっと遠く海を眺めるといった具合に、苦界に暮らしつつもつかの間の休息を楽しむ様子が感じられます。
当時のファッションもおもしろいです。着物の柄や色からその頃の流行が窺え、鮮やかな色と渋い色を組み合わせた粋な配色には描き手のセンスさえ感じました。また、人物の生き生きとした表情も面白く、一点ずつ丁寧に鑑賞していたら、あっという間に閉館時間。名残惜しく、会場を後にしました。
ウェストン氏は自分のギャラリーの静かな空間で、蒐集したこれらの作品を飽かず眺めながら、同じ絵師による複数の作品、同じ画流の異なる絵師、異なる画流の作品などを隣同士に並べては、顔、髪型、着物、落款などの違いを研究し、そこに描かれたものから背景にある、日本の文化・慣習などへと理解を深めていったそうです。バリ絵画もそうですが、風俗画には描かれた背景にある、その土地や時代の文化へと広がっていく楽しみがありますね。
今回展示されていたのは、量産可能な版画ではなく、大名や豪商などから注文を受けた絵師が高価な画材を使って腕を振るった一点物の肉筆画ばかり。見応えたっぷりのコレクションでしたが、ウェストン氏はいったいいくら投資したのでしょうね(笑
それぞれの国や地方に素晴らしい作品がありますが、私が特にバリ絵画を専門にご紹介しているのは、著名作家の作品でも手の届く価格であることに魅力を感じているからなのです。物価水準の違いから来るメリット。これは気軽に美術蒐集が楽しめるチャンスかも知れませんよ。
「どんな作品があるの?」と興味を持たれた方は、ぜひ「バリ島の美術館に選ばれた作家たち」をご覧になってみてください。
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バリ島の美術館に選ばれた作家たち 美術館が作品所蔵する著名作家の新作が購入できます
バリ島の風俗画 バリ島の伝統的な暮らしを人気作家SOKIが描きます
細密画にもおもしろいものがいっぱい
大切な思い出をアートで残す2
こんにちは、坂本澄子です。昨年12月にご紹介した、「大切な思い出と花束をアートで残す」の第1号作品が完成しました。
ご注文くださったのは大田区のN様、外資系企業で管理職をされているキリリと素敵な女性です。つい最近、新たなステージを求めて転職され、以前の職場の同僚が集まった場で贈られた花束は、主役のバラが春の花たちにつつまれていました。そのパーティに参加していた関係で、今回の制作は私が担当させていただきました。
淡い紫のバラは今お花屋さんでも人気の品種で、「パフュームパープル」というその名の通り、とても優美な香りがするんです。その香りとともに春の風を感じながら描いていきました。背景にあるアルファベットはその日集まった方々のイニシャル。素晴らしい未来を予感させるよう、広がっていく構図にしてみました。
N様には「世界でたったひとつの私だけの絵。思い出の残り方が写真とは違って、心が豊かになる気がします」と喜んでいただき、私も本当に嬉しく思いました。
一作目を私自身が描かせていただいたことで、このご注文制作を続けていく上でとても重要なことを学んだ気がします。描くという行為は、その方の大切な思い出を共有すること。それはとても重いものでした。
お差支えない限りで、その花束を贈られたシチュエーションや、ご自身の思いを教えてくださいませ。描き手としてその思いを胸に制作に取り組めるよう、私はもちろん、バリ島の画家にもしっかりと伝えてまいります。
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「バリアートショールーム」では、大切な思い出と花束を、絵にしてお届けします。写真をお送りいただくだけで、約1ヶ月後には「世界にひとつだけの絵」が完成です。
超初心者向け『スターウォーズ』のススメ
こんにちは、坂本澄子です。
先日、『スターウォーズ』を観てきました。『スターウォーズ』を観たのは、実はこのエピソード7が初めて。いままで何度も話題になりながら一度も観なかった最大の理由は続きものだから。途中から仲間の輪に入っていくおっくうさに似ていたかも知れません^o^; その私がついに重い腰を上げたのは、長く続くものの魅力って何だろうと思ったからなんです。
ジョージ・ルーカスが9つのエピソードからなるこの壮大な物語をひっさげ、『スターウォーズ』を世に出したのがかれこれ40年前。製作費用は乏しく、登場人物も無名の役者ばかり。撮影技術も進んでいない中、第1作目にエピソード1ではなく、あえて4を選んだことが、結果的にこのシリーズの大ヒットに繋がりました。この時、ハン・ソロ役に抜擢され、その後スターダムにのし上がったのがハリソン・フォード。C-3POやR2-D2などすっかりおなじみのロボットたちもここから生まれました。
で、感想ですが、素直に楽しめました。ほとんど息をつく間もなく観客をグイグイ引っ張っていく展開とアクションは、『ミッション・インポシブル』『007』など今話題の他の映画と比べて全くひけをとりません。
エピソード4で、宇宙船が画面を覆い尽くすように現れるオープニング・シーンの斬新さに当時驚かれた人は少なくないと思いますが、今回の始まりも少し形を変えながら、やはり「おおおー」と思わせてくれました。そして、何度も現れる惑星の町や大宇宙を見下ろす広角映像には最新のCG技術を駆使し、リアリティ満載。
一方、人間関係を丁寧に描写するあたりは、ヒロイン、ヒーローが代替わりしても『スターウォーズ』らしさに溢れていると思われた人は多いのではないでしょうか。物語が進むにつれ、ヒロインの出自が徐々に明かされていくあたりは、説明というよりは、観る人に自然に想像させるような作りになっています。随所にちりばめられたヒントは、観るたびに新たな発見をさせてくれそう。エンディングで謎の一部に対する答えを暗示され、「あー、次も絶対観るぞ〜」と思いながら、映画館を後にしたのでした。
3作で1セットですから、後何年も楽しめますよ。私のように今まで縁がなかった方にも、エピソード4、5、6をみて予習するという手間をかけてでも是非!とオススメしたい映画です。長く続くものは、それらしさを大切にしながら、時代が求めるものを取り入れて絶えず進化していますね。そうそう、観るならやっぱり3Dがおすすめですよ〜。
ということで、今回はバリ絵画とは関係ありませんでしたが、バリアートショールームもそんなふうに進化させていきたいという思いはしっかりと新たにしました^o^
お部屋にシミュレーション
こんにちは、坂本澄子です。水曜日のブログをお休みさせていただき、ゴメンナサイ。新年最初の一週間、「やっと終わった〜」と週末を迎えられた方も多かったのではないでしょうか。寒さも増してきましたので、お身体には気をつけてくださいね。
さてさて、最近お問合せが増えてきました。めちゃめちゃ嬉しいっ^o^ だって、展示会以外ではお客様と直接触れ合う機会があまりなく、こうして黙々と発信する日々、結構孤独なんですよ〜。
で、そのお問い合わせ、どんな内容かと言いますと、新居に飾る絵を探しておられる方、それから注文制作のご相談が多いんです。結婚でお引越し、マイホーム購入..など様々ですが、新生活への夢と希望いっぱいのオーラが文章からじわじわ〜っと伝わってきます。いいですね〜。オメデトウゴザイマス。
先日も、あるお客様から絵のサイズに関するお問い合わせをいただきました。「新築した自宅のリビングに大きな絵を飾りたいけど、どのくらいの大きさの絵を選べばいいの?」
そのお気持ち、よくわかります。実際の作品を見て選んでも、飾ってみたら意外に大きかったor小さかったというのはあります。ましてや写真だけでは、なかなか感じがつかめませんよね。壁の大きさはもちろんですが、飾ったときのしっくり感は、部屋全体の大きさや家具、建具とのバランスも影響しているのです。
そこで最近こんなサービスを始めました。お部屋の写真を送ってくだされば、ご希望の作品を飾ったところをシミュレーション画像でお届けするというもの。
例えば、こんな感じ。
同じ縮尺で作品を合成してお返しします。(1日程度お時間ください)
額縁で印象が変わることも結構あります。
いかがですか、ちょっとイメージ湧いてきませんか。気に入った作品が見つかりましたら、お問い合わせフォームでお気軽にご依頼ください。もちろん無料です。
この合成作業、かなり原始的な方法でやってます。画質等についてはこの程度でお許しください〜^o^;
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バリ絵画とインテリアのヒント 小物を使ったアレンジの参考にどうぞ