クリキ村の細密画の魅力
こんにちは、坂本澄子です。
長かったステイホームが一段落し、コロナと共存する新しい暮らしのスタイルができつつありますね。皆様はいかがお過ごしでしょうか。
バリ島も自粛生活が続いていますが、画家さんたちは地道に制作に取り組んでいます。
今日はバリ島クリキ村から届いたばかりの細密画をご紹介します。
ライさんらしい丁寧な手仕事が光る作品、どうぞお楽しみください。
『バリの農夫たち』 20x35cm 50,000円(税込)
共同で稲刈りを行う人々。豊かな収穫に誰の顔も穏やか、犬たちや野良仕事を手伝う牛たちも生き生きと描かれています。
丸いお供え物はわずか1cm、そこに竹の編み目を描いているこの細かさ、おわかりでしょうか。
高い椰子の木の間に目を移すと、視界が遠景の山並みへと抜けて行きます。
小さな作品ですが、その中に大きな広がりを感じますよね。
その秘密はていねいに描かれた下絵にあるんです。
この画像は下絵を描いた後、墨で輪郭を取り、陰影をつけているところです。
手前は明暗のコントラスを強くはっきりと、遠景は逆に弱くすることで、霞むような効果を生み出しています。
この上から色付けを行い、手間と時間と愛情とをたっぷりと注ぎ込んで仕上げています。
額縁はバリの木製額縁。木のすべすべした温もりに金泥がアクセントを添える、抜群のマリアージュ。
39x55cmの飾りやすいサイズです。
2−3日でお届けします。
詳しくはこちらをどうぞ!
扉の向こう
こんにちは、坂本澄子です。
夏の暑さもようやく一息つき、
そう遠くない秋の訪れを感じる今日この頃となりました。
今日は私自身の絵のお話を聴いていただけますか。
つい先日、バリの扉をモチーフにした作品3点を仕上げました。
バリ島でよく目にする、細長い観音開きで、
繊細な彫刻と鮮やかな彩色がほどこされた扉。
公と私を区切る場所に置かれているようです。
公道と私邸を隔てる扉だったり、一族が住む敷地内で、家族のスペースと個室を隔てる扉といった具合にです。(バリの伝統的な住居は敷地内に複数の棟があります)
バリ島に行くたびに、細く開かれた扉の向こうにちらりと垣間見える景色に心ときめかせたもので、
そんなバリの扉をいつか絵にしてみたいと思っていました。
小さな習作を描いてみたのが、今年の1月。
その後、大きな絵を3点続けて描きました。
いずれも150cmを超える大キャンバスで、リビングで描いているとまるで壁のよう。自宅で迷路ごっこができそうです。
扉にほどこされた彫刻は、現地で取材してきた写真を見ながら、できるだけ忠実に再現しましたが、
植物の茎の流れるような曲線がとても優美で、描きながらうっとり。
バリの画家さんたちの描く線も、とてもなめらかで繊細。
これはもう技としかいいようがありません。
そのまま描いてはバリの画家さんにかないっこありませんから、自分にしかできない絵を描きたいという思いがむくむくと湧いてきました。
そこで、扉の向こうに対する心のときめきを、別の場所の風景(日本の風景)で表現してみました。
バリ島も好きだけど、日本も大好き。
そんな「どっちも!」を描いています。
例えば、右端の絵ですと、
手前の後ろ姿のネコはバリ島にいる自分とします。
そうすると、扉の向こうに見える一本の木は、日本にいる「もうひとりの自分」になります。
毎日の生活の中でも、対象的な2つの何かの間を揺れるような気持ちで行ったり来たりすることって、ありますよね。
仕事と家庭だったり。
いまはもうどちらかひとつを選ぶ時代ではなく、どっちもほしい。
しかも2つではなく、より多くの顔を持っているほうがよいとされる時代へと移り変わりつつある気がします。
これらの作品は以下の絵画展に出品します。
お近くにこられる機会がありましたら、ぜひお立ち寄りいただければ光栄です!
ウィラナタ ご注文制作作品
こんにちは、坂本澄子です。
1月のブログでご紹介したウィラナタさんへの制作依頼。
作品小冊子『光の風景』をご覧になったお客様からのご注文です。
半年の制作期間を経て、先月納品させていただきました。
小冊子に掲載されている元の作品と構図は似ていますが、
画家の新たな工夫が随所にほどこされた、素晴らしい作品に仕上がりました。
天候が急変し、嵐が迫ってきたので、棚田のあぜ道を家路に急ぐ親子の姿です。
細いあぜ道は雨で濡れて滑りやすくなっているので、小さな子供を抱え
場所によって光の強弱や種類、雨脚の色彩や強弱など、前作では表現しきれなかったところを意識しながら描いたそうです。
人々を包み込む雄大な自然は、時として厳しく、破壊的な力を持つこともあります。
それでもなお希望を感じるのは、わずかに明るくなった遠くの空、駆け出した男の子の逞しい生命力のゆえでしょうか。
自然を敬い、共存するバリの画家ならではの視点を感じました。
ウィラナタ作品小冊子『光の風景』『光の風景II』は増刷しました。ご希望の方はこちらからお申込みください。(無料)
◇◇◇関連ページ◇◆◇
SOKI『バリ島』お部屋の中心に確かな存在感
こんにちは、坂本澄子です。
GWを挟み時間がかかりましたが、SOKIさんの『バリ島』の額装が終わり、再びバリアートショールームに戻ってきました。
つやを抑えたマットなシルバーの額縁に包まれて、惚れ惚れするほどの男前の一枚になりました。
今、この写真のテーブルに座り、『バリ島』を前にしてこのブログを書かせていただいています。
黒土の大地がバリ島の輪郭をくっきりと引き締め、盛り上がるように描かれた、バリ島の暮らしの場面。
ソキさんが教えてくれた、それぞれの場面の解説を読み返しながら、絵の上で追っていくと、「ああ、なるほど!」と改めて納得。
ぎっしりと描かれたバリの人たち。「私ってもしかして暇?」と思いつつも数えてみると、その数なんと184人。
愛情を込めて、丁寧に仕上げられたことが、じんわりと伝わってきます。
本体サイズは90x125cmで、横に立つとこんな感じです。
お部屋の中に確かな存在感。
目に入るたびにバリ島のパワーをいただけそうですよ。
作品詳細はこちらのページをどうぞ。
ガルーさんの秘蔵作品
昨年に続き、今年も夏にジャカルタで開催される展示会の準備に大忙しのガルーさん。
大作を3点出品されるとのことで、毎日その制作にかかりきり。
これは当分日本でご紹介できる新作は望めないなあと思っていたら、にっこり微笑んで奥から持ってきてくださった作品が!
しかも、40x60cmの飾りやすいサイズです。
この作品を見た時、数年前にバリアートショールームで扱わせていただいた、夕焼けの小品を思い出しました。
棚田の水面に映る夕映えの空の美しいこと。
3本の高い椰子の木が、奥へと続く風景をより神秘的に見せています。
こちらの作品の入荷につきましては、こちらからお問合せ下さい。
額縁は変更可能です。
『水辺のココカン』制作エピソード
こんにちは、坂本澄子です。
桜の季節がやってきました。
日本中にある何百万本というソメイヨシノは、ただ一本の原木から接木で増されたもので、全く同じ遺伝子を持っているそうです。
そのため、同じ場所に植えられた桜は一斉に花を咲かせるのだとか。
最近では早咲きの桜も増えてきて、2月からいろんな桜を楽しませてもらっています。
さて、今日はラジッグさんの新作『水辺のココカン』を、制作エピソードを交えて、じっくりとご紹介させていただきたいと思います。
きっかけは、ラジッグさんのアトリエで見たこちらの作品でした。
ココカン(シラサギ)の足元の水面を見てください。
横幅1.2mの大作の迫力もさることながら、一目見て惹かれたのは、
水の揺らぎが作り出す水紋のおもしろさです。
見ていると、なんだか吸い込まれてしまいそうです。
ココカンはバリ島ではおなじみの鳥ですが、たまたまこれまで扱ったことがなかったので、これは是非!と思ったわけです。
小さめで飾りやすいサイズにして、
ココカンはつがい、花は蓮
とラジッグさんにお願いしました。
数日後には下絵を送っていただき、制作は順調に進んでいきました。
ところが、8割完成というところで、ちょっとした問題が起こったのです。
元の作品はモノトーンに近いグレイシュな色使いで描かれており、そこから来る静謐さが魅力でもあったのですが、小さくすると少し寂しく感じられたのです。
できるだけラジッグさんの画風は尊重しつつ、もう少しだけ色味をプラスできないかと相談してみました。
すると、こちらの意をくんで下さり、蓮のピンクと水の青さを調節していただくことができました。
その結果、絵に華やかさが加わり、とても素敵な仕上がりになりました。
先日、完成品が日本に届き、現物を目にしてその思いはさらに強くなりました。
それでは、「水辺のココカン」、その詳細を拡大画像でじっくりとご覧ください。
サイズは50x40cm。
蓮のピンクと水の青さがとてもきれいです。
中心部の花は明るく、端にいくほど深みのある色合いになっています。
葉陰を背景に、ココカンの羽根の白さが際立ちます。
水のグラデーションは竹筆を使って、淡くぼかした絵の具を幾度も塗り重ねて、描き出されています。
集中力と根気を必要とする丹念な手仕事です。
水辺の草のシャープな輪郭線にも竹筆が使われています。
図案化された雲が絵の雰囲気によくあっています。
モダンなボックスフレームに額装していますので、リビングや寝室、玄関など、様々な場所に飾っていただけると思います。
ご注文はこちらからどうぞ。
ラジッグさんの作品ページも是非ご覧になってください。
幻想的な満月の夜
こんにちは、坂本澄子です。
桜の開花がカウントダウンに入ってきましたが、
春の暖かさと思えば、冬の寒さに逆戻りの繰り返し。
冬物のコートがなかなか片付けられませんね。
今日は幻想的な風景画が持ち味の、ワルディタ(WARDITA)さんの新作をご紹介します。
’76年バリ島パヤンガン村生まれ。
まだ40過ぎの比較的若い画家さんですが、技術的な腕前はもちろん、心を映し出すような表現に長け、いつまでも見ていたくなる作品です。
シュピース・スタイルの画家として、自然と共存するバリ島の暮らしを描き続けています。
では、早速ご紹介します!
満月の夜に寺院の境内の大きなガジュマルの下に村人たちが集まり、奉納舞踊が行われているところです。
水に映る月光が幻想的な静寂さを感じさせ、青白い光と松明の温かみのある光の対比が、おもしろい効果を出していると思います。
鹿やうさぎ、猿たちなど野生の動物たちも静かに見守っている姿が、何とも微笑ましいですね。
そしてもう一点、こちらはアトリエで現在制作中の作品です。
水田に映る空の光の移り変わりがとても美しく、
朝靄のかかる遠景へと視線が運ばれていくように感じました。
制作途中ですが、素晴らしい作品になると予感させます。
詳しくはお気軽にこちらからお問い合わせください。
お待ちしています!
ヤングアーティストスタイルの新星
こんにちは、坂本澄子です。
今日はヤングアーティストスタイルの画家、SUJAさんをご紹介します。
今まで気がつかなかったことが正直悔やまれます。
それくらい、すごい画家、いい作品です。
さっそくまいりましょう。
1点目は、『チャロナラン』を題材にしたバリ島らしい作品です。
神社の境内でチャロナラン劇を行う近景から、遥か遠くのアグン山まで、視界が爽やかに広がっていきます。
アグン山の麓にはカルデラ湖があり、湖面を航行する船も。
デザイン的なシンメトリーな構図とポップな色使いが、ヤングアーティストスタイルの特徴ですが、SUJAさんの作品の魅力は、風景画としても十分楽しめるところ。
そして、人物の表情がひとりひとり丁寧に描きわけられているため、人々の活気が伝わってくるとともに、品のよさも感じます。
バロンとランダの金の装飾やふわふわした毛の質感にも、画家の力量がしっかりと表れています。
2点目は、『羽衣伝説』の物語を題材にした作品です。
ある日、水浴びをしていた7人の天女たち。その様子を隠れ見ていた男に、体に纏う布を隠されてしまい、天に帰れなくなった末娘の天女。仕方なく天女はその男の妻になり…
バリ絵画ではよく取り上げられるモチーフ。
バリ島できっとご覧になったことがあるでしょう。
しかし、SUJAさんの絵は一味も二味も違いました。
深い熱帯の森にいるような風景の臨場感。
そして、水の描写が素晴らしいと思いました。
木々の緑を映し込んだ色使いと天女の肌が見えるような透明感。
画家がきっと最もこだわった箇所ではないでしょうか。
3作目まいりましょう。
アグン山を背景に、プサキ寺院を臨む壮大な作品です。
低くココカン(白鷺)が舞い、さまざまなお祭りの場面が俯瞰するように描かれています。
SUJAさん、サインがまた素敵なんです。
絵の一部としてサインを描くセンスはさすがです。
作品の中、探してみてくださいね。
お問い合わせはこちらから、お気軽にどうぞ!
さて、先週ご紹介したソキさんの『バリ島』、その後の写真を送っていただきました。
先週はまだざっくりとした彩色の段階でしたが、左下の島の部分から、徐々に細かな描きこみが進行中しています。
3月半ば過ぎには完成した姿をお目にかけられると思います。
どうぞお楽しみに!
アトリエ訪問④ ソキ
こんにちは、坂本澄子です。
バリ島のアトリエ訪問、いよいよ最終回となりました。
トリはやはりこの方、ソキさんです。
バリ絵画に新風を吹き込む鮮やかな作風で、「ヤングアーティスト」と呼ばれる、新進アーティストの第一人者として一世を風靡したのが’60年。
以来ずっとバリ絵画の第一線を走り続け、日本にも多くのファンが。73歳になられる現在も、絵に対する情熱は健在です。
さっそくアトリエを見せていただくと、完成した作品に混じって、『バリ島』の下絵を発見!
バリアートショールームでも、制作のご依頼が多い作品です。
今回の滞在では、かなりの数のギャラリーを見て回りましたが、どこに行ってもソキさんの絵がありました。
でも、この『バリ島』だけは、ついぞ目にすることはなく、いわば幻の人気作品。
そんなこともあり、思わず、「もう売約済みですか?」と身を乗り出すと、ラッキーなことにまだフリーとのこと。
もう少し進んだらお声かけてくださいと、お願いしておきました。
そして、1ヶ月。
大作のため、まだ五合目あたりですが、お早めにご紹介したくて、写真を送っていただきました。
90x125cmの大迫力サイズです。
これなら、ぎっしりとつまったバリ島のエネルギーを毎日たっぷり浴びれますね。
これから細かい描きこみを行い、完成は3月中旬の予定です。
そして、もう一点。
『バリ島』と同じく、青い海を描いた作品が完成しました。
こちらは祭礼の様子と海を水平分割した、ソキ作品では珍しい構図です。
1:2の横長サイズは、ソファの上などにすっきり飾れて、お部屋を華やかにしてくれますよ。
価格等の詳細につきましては、こちらからお気軽にお問い合わせください。
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アトリエ訪問③ ウィラナタ-後編
こんにちは、坂本澄子です。
今日はバリ島アトリエ訪問記、ウィラナタの後編をお届けします。
その小さめの絵は、ウィラナタさんの描くいつもの作風とは違っていました。
新しい題材、技法に挑戦するとき、小さめの習作からスタートすると話してくれたことを、まさに実践中というわけです。
昨年は10点の絵を描いたそうです。
大きな作品が多く、しかも緻密な描き方を思うと、その集中力には驚くばかり。
でも、それよりすごいと思ったのは、よくこれだけ新しい絵のイメージが次々と湧いてくることです。
「そのインスピーレーションは、一体どこから?」
「風景を見て回ることと、あともうひとつは、インターネットで西洋の風景画を見ること」
それを聞いて、ようやくいつもと違うと感じた理由がわかりました。
光と人物の関係がいつもと逆になっていたのです。
西洋絵画は人物に光を当てて描かれることが多いのに対して、ウィラナタさんの作品の多くは逆光で描かれています。
すると、カメラを向けた時と同じで、人物は暗くなり、周囲を包む風景へと、見る人の意識は広がります。
それが幻想的とも言える独特の雰囲気を作り出し、作品の魅力ともなってきたのですが、ウィラナタさんはそれで満足することなく、新しいことにチャレンジされていたわけです。
現在の洗練された作品は、このような人知れぬ努力の積み重ねがあったからこそだったのですね。
もう一点、描き始めたばかりの作品がありました。
そのときは、まだざっくりとした明暗と配色程度だったのですが、それが先日ほぼ完成し、写真を見せてもらいました。
ペネノン(Penenon)とは、ウィラナタさんの村に伝わる、伝統的な陶磁器を作る場所のことで、日本の窯とは違い、このように屋外にあるのが一般的だとか。
このように特徴的な形をしており、飲み物や硬貨を入れて使われるそうです。
陶磁器を焼く女性、天日干しされた壺を確認する男性、沐浴する女性…
光の中で滲んで見えるような、あの逆光の世界です。
残念ながら、この作品は注文を受けて描いたものだそうで、みなさまにご提供することはできませんが、ウィラナタさんの作品に関心を持たれた方には、過去作品の小冊子を差し上げています。(残数わずか)
今回の訪問で、ウィラナタさんの絵に向き合う真摯な姿を目にし、ますます応援したいと思うようになりました。
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