バリの新年ニュピは静寂の一日
こんにちは、坂本澄子です。早いもので1月もあっという間に最終週。先日ある方とお話していたら、年齢を重ねるごとに一週間が早くなっていくという話題になりました。私自身も特にこの一年はほんと早かったなぁと驚いています(^o^;
以前、「バリの1月1日はわりと普通の日です」とご紹介しましたが、本当の新年はニュピと言って今年は3月31日になります。月の満ち欠けをもとにしたサコ暦で1年に1度巡ってくるため、その年によって時期が違うのです。毎年だいたい2月〜5月の間にやってきます。ちなみに、バリには西暦とサコ暦とウク暦(1年を210日とする暦で主に祭礼を司る)の3つの暦が同居してる感じです。写真はバリ伝統画家アリミニさんのご自宅ですが、ここに掛かってるのはウク暦のカレンダー。
ニュピは静寂の日。地元の人たちはもちろんのこと、外国人観光客も一切外出ができないので、通りは人っ子一人いない状態になります。学校も会社もお店もお休み、あらゆる交通機関が止まり、人々は静かに瞑想し世界の平和を神様に祈って一日を過ごすそうです。あかりをつけることもできないため、夜になると真っ暗。その分、星がとても綺麗。満点の星空が仰げるかも知れませんね。
ニュピの前日に行われるのがオゴ・ホゴによる浄化の儀式。オゴ・ホゴというのは写真の通り、張り子の鬼のようなもので、鍋を打ち鳴らして家から追い出された悪霊が、通りを練り歩くオゴ・ホゴに乗り移るとされています。最後にこのオゴ・ホゴは悪霊たちと一緒に燃やされて鬼退治。それでもまだ地上には悪霊たちが残っているので、見つからないように、ニュピ当日は家にこもって静かに過ごすという訳です。これは善と悪は永遠に戦い続けるというバリ独特の考え方から来ているんですよ。
ところで、このオゴ・ホゴ。今年はインドネシア大統領選挙を控えているため中止なんだそうです。暴動を避けるためとのことですが、ちょっと残念ですね。
さて、好評開催中のガルー作品展『静謐のとき』、いよいよ31日(金)が最終日。和空間と静寂の作品のコラボ、どうぞお見逃しなく!
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ガルーさんにインタビューしてきました(後編)
こんにちは、坂本澄子です。ここ数日、暖かいですね。東京は4月上旬並みになるとか。 あなたの街はいかがですか?
好評開催中のガルー作品展『静謐のとき』、見に来て下さった方が口々に言われるのは、作品の持つふんわりとした優しさがいいね!ということ。遠景になるほどふわっとぼかして描く遠近法によって、温かみのある空気感が生み出されてるからでしょう。
人気作家のガルーさんはジャカルタやシンガポールの有名ギャラリーからひっきりなしに注文が入り、そのサイズも写真の通り大きなものばかり。畳1帖分のサイズで3〜4ヶ月、もう少し大きなものになると半年がかりだそうです。この間、作品に対する集中力を維持するのは大変なこと。そんなとき、私がお願いする小さめの作品はちょうどよい気分転換になるそう。そんなふうに上手にバランスを取りながら、一点一点思いを込めた作品を描いています。
今日は、そんなガルーさんへのインタビューの後編をお届けしまーす。
Q5 スランプに陥った時ってどうしてますか?
結構、そういうことありますよ(^_^) そんなときは無理して描くのはやめて、バイクに乗ってぱっと出かけちゃいます。主人も画家なんですけども、二人で海を見に行ったり、山に登ったりすることも。自然の大きさにいだかれているうちに気持ちが切り替わり、新たなインスピレーションをもらうこともあります。
これ私たちも使えそうです。仕事でも勉強でも行き詰まったときには机にかじりつかず、一旦横に置いて別のことをやってみる。で、気持ちを切り替えて戻ってくると、別のアイデアが浮かんでくるって結構ありますよね。
Q6 今まで一番嬉しかったことって何ですか?
’95年に招待留学でヨーロッパを3週間に渡り旅行できたことです。ドイツ、フランス、オーストリア、オランダを回りました。ドイツではちょうどシュピースの生誕100周年で、原画を見ることができ本当に感動しました。持参した作品3点と滞在中に描いた4点の合計7点が現地で売れ、プロの作家としての自信にもつながりました。
今でもバリの人が島から出て旅行をすることはあまりありません。バンジャールと呼ばれる隣組ごとにお祭りや農作業などが共同で行われるため、留守にしずらいという事情があるのです。ましてや20年前と言えばインドネシアからの出国が制限されていた時代。招待留学というのはとても珍しいことなのです。画家としてのスタートが23歳。そのわずか4年後ですから、才能に恵まれた人なんですよね。
Q7 今後の目標を教えて下さい
画家としてさらによい作品を描き続けていきたい。
ちなみにガルーさんの好きな画家はと訊いてみると、アンリ・ルソーとルーベンスだそうです。バリ絵画が好きな人にアンリ・ルソーのファンは多いです。実は私も…特にジャングルを描いた作品、素敵ですよね。
Q8 日本のファンへ一言メッセージをお願いします
私の作品を見て、幸せで穏やかな気持ちになってもらえたら嬉しいです。
ガルー作品展、いよいよ来週いっぱいとなりました。26日(日), 31日(金)は私も会場でお待ちしてますので、ぜひ観に来てくださいね! 新作のポストカード2枚組もプレゼントしちゃいます。
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共感は行動で表現される
こんにちは、坂本澄子です。
今日はガルーさんへのインタビューの後編を掲載する予定でしたが、ちょうど今週私自身の作品を出品したグループ展をやっていますので、ちょっとそのお話をさせていただきます。
昨夏、長野県の蓼科湖に行きました。ハイシーズンなのに、湖の周辺はとても静か。すぐ近くにある彫刻公園にも人影はありません。丘陵地をそのまま生かした公園のあちらこちらに人の姿を刻んだ像が置かれ、陽が翳るに従って、怖い程のリアル感を醸し出していました。
ふと湖の方を見ると、残照が淡く湖面を照らし、対岸にある針葉樹や建物が映り込むように影を落としています。
見ている間にも刻一刻とその表情を変え、移ろう光の儚さに魂を掴まれるような切なさを覚えた瞬間、脳裏に浮かんだのはガルーさんの『黄昏の静謐』でした。水面に映った静寂の空もそのまんま。衝き動かされるように描いたのがこの「蓼科湖夕景」です。
仕事の合間に絵を描き始めて16年になります。最近、Facebookなどではっとするほど素敵な写真を見るようになりました。そこからインスピレーションを得て、絵に描かせていただくことがあります。ある方が私のそんな行動を見て「共感は行動で表現されるものですね」と言われました。うまい言い方をされるものだと関心したのですが、この「蓼科湖夕景」も五感で感じた風景×ガルーさんの作品への共感から生まれたものです。技術的にはまだまだ未熟ですが、これからも時空を超えた感動のリレーに加わっていきたいと思っています。
好評開催中のガルー作品展『静謐のとき』、本日3日目を開催します。お目汚しの後は、清らかなガルー作品を見に来てくださいませ!
ガルーさんにインタビューしてきました(前編)
こんにちは、坂本澄子です。飛び石で1月開催中のガルー作品展『静謐のとき』、2日目が終わりました。昨年から二度三度と足を運んで下さる方、今回初めて来て下さった方、本当にありがとうございます。ネット上での出会いが、対面というリアルな繋がりになることをとても嬉しく思います。作品も写真で見るのとは随分印象が異なります。「百聞は一見にしかず」、ぜひこの機会にガルーさんならではのふんわりとしたやさしい光の表現を見にお越し下さい。
さて、今回の作品展の開催にあたり、ガルーさんにいくつか質問をしてきました。画家としてのバックグラウンドや人となりを知ると、作品の味わいがまた一層深まってきます^_^
ウブド王族を親戚に持ち、父、叔父(グラカカ氏)が高名な画家という恵まれた環境に生まれ育ったガルーさんは、幼い頃から自然に絵を描き始め、海外に行く人がほとんどいなかった時代にドイツへの短期留学を果たし、流暢な英語を話します。プロの画家としてのスタートは意外に遅く、結婚後のことでした。
【Q1】絵を始めたのはいつ頃?
6歳の時に画家だった父親から紙と絵の具を与えられ、自由に描かせてもらったのが絵との出会いです。その後、趣味で続けていましたが、’91年に女性画家で構成されるスニワティ・ギャラリーが主催する公募展があり、画家の夫に勧められ出品したところ、ウブドで画廊を営むイギリス人女性オーナーの目にとまりプロの画家としてデビューすることに。
【Q2】今の作風(シュピース・スタイル)で絵を描くきっかけとなったのは?
17歳の時デンパサールのアートセンターで初めてシュピースの作品(複製画)を見てとても感銘を受けました。特に、水面への映り込みや光の表現が素晴らしいと思い、夢中で研究しました。それが今の作品にも生かされていると思います。
【Q3】ガルーさんにとっての絵の先生は?
父は11歳の時に亡くなったのですが、最初に絵と出会うきっかけをくれ、教えるというよりも自由に描くのを見守ってくれる存在でした。亡くなった後多くの画材が残され、それを使って絵を描き続けられたことも大きかったと思います。
【Q4】制作にあたってのインスピレーションをどのように得ている?
制作にあたっては構図を最も大事にしています。そのため、普段から風景を見ることを心がけています。最近はウブドもホテルなどの建物が増えてきたので、バイクに乗って生まれ故郷のタバナン近くまで出かけます。見晴らしのよい場所に立って眺めていると、色んなアイデアが浮かんでくるんですよ。また、制作中は作品の風景の中にいるつもりで想像力を働かせています。作品の中に描かれた人物は実は自分自身でもあるのです。
続きは次号で。ガルー作品展、来週の開催日は1月22日(水)と26日(日)です。お待ちしてまーす^o^
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ほんとは教えたくない?! お気に入りの場所
こんにちは、坂本澄子です。寒いですね〜。こんなときバリが無性に恋しくなります。仕方ないので、バリの画家さんたちの作品を見ては空想旅行をしています^ ^
バリ絵画のある暮らしを始めたお客様からのお便りと写真をまとめたページを作りました。それぞれに購入された理由があり、また、その後の楽しみ方があります。是非こちらを見てくださいね。
さて、私がウブドに行くたびに訪れるお気に入りの場所があります。懐かしくて、なんだかほっとする風景、あなたの心にも届くと嬉しいです。
ウブド王宮のある交差点から1ブロック西にある南北の通りがジャラン・カジェン。ジャランは通りという意味です。手形や手書きの文字が彫られたメモリアルプレートの埋め込まれた石畳が続き、バイク屋台で金魚を売るオジさんの姿も。下町の風情溢れる街並みです。
この道を北に向かって道なりに歩くと写真の通り、急に視界が開け、椰子の木と田園風景が。中心部からわずか20分ほどの場所です。初めてウブドを訪れたときに「バリ島ウブド〜楽園の散歩道」(ダイヤモンド社)を片手にお散歩がてら歩いたのがそもそもの始まり。そこは夏休みに泊まりに行ったおばあちゃんちみたいな懐かしい匂いに包まれていました。
田んぼの畦道みたいな細い道が延々と続いており、そんなところにもまだメモリアルプレートが。この道は一体どこまで続いているのだろうと、子供のような探検心がムクムクと湧いてきますが、道はさらに細くなり、やがて用水路ギリギリの道幅はわずか10cm(うーん、これは道とは言えない…^^;)に。足下がかなり危なっかしいので、悔しいけどいつも途中で引き返しています。
驚くのはこんな奥でもビラが建っていること。田園風景は欧米豪の観光客に人気なのですね。こんな細い道、もちろん車は入れません。建築資材をどうやって運ぶのだろうと不思議に思ってると、な、なんと、手で運んでるのです。いや、正確に言うと頭の上に乗っけて。もうお気づきですよね。バリでは頭の上で物を運ぶのは女性だけ。オバチャン(さすがに若い女性はいませんでした^^;)がセメントの袋をガンガン運んでるのです。いや〜、バリの女性って強いわ。
幻想的な田園風景を繊細なタッチで描くガルー作品展『静謐のとき』が今日から東京・日本橋のGallery KAIで始まります。ガルー作品の魅力は数々ありますが、ご本人が最も工夫しているのは構図。いくつかお気に入りの場所があり、新たな作品に着手する前には必ず散策に行き、イメージを膨らませるのだそう。きっとガルーさんにも誰にも教えたくない秘密の場所があるのでしょうね^_^
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ガルー作品展『静謐のとき』の見どころ
こんにちは、坂本澄子です。今日はブログの投稿が遅くなりました〜。というのは、つい先程まで、来週から始まるガルー作品展の設営を行っていたのです。というわけで、今日はその見どころをお伝えしますね。
今回の会場となる東京・日本橋Gallery KAI (KAIは開と書きます)は昭和22年に建った日本家屋を改造した2階にあります。窓から差し込む自然光と天井の梁や建具の木肌の温もり。壁は珪藻土の白壁。この空間に足を踏み入れたとたんに穏やかな気持ちになりました。ガルー作品から感じる匂いと同じです。日本橋の三越本店の向かいを一本中に入った路地の中にこんな静かな空間が残されているなんて…。素敵な場所で作品展が行える幸いに感謝します!
ガルー作品の特徴は水田の水面に映る空の色とやわらかい光。そこでこの展示会は光にこだわってみました。お願いしたのがカナダ人アーティストのエリック・ペティツエさん。エリックさんはパネル画のアーティストですが、ディスプレイ用に和テイストの灯籠を作ったのが好評で、今回それを使わせていただくことに。障子紙を貼った灯籠のふんわりとした灯りは黄昏の風景画によく似合います。一方、窓からの自然光は早朝の凛とした空気によく馴染みます。そんな空間と光とのコラボレーションをお楽しみいただければと思います。
バックミュージックもバリから届いたばかりの音を使います。『グンデール』という、とってもソフトな感じのガムラン楽器を中心に、鳥のさえずりや優しい雨の音、遠くから響く波の音が流れています。新しい年を迎えられた今、もう一度清々しい気分を味わいにお越し下さいね。
そうそう!ご来場プレゼントとして新作のポストカード2枚組をご用意しました。
ご来場をお待ちしてまーす^O^
ガルー作品展『静謐のとき』の開催案内はこちらをご覧下さい。
ついに…『ラーマーヤナ』
こんにちは、坂本澄子です。ついに書くことにしました。
『ラーマーヤナ』ヒンドゥ教の神話で三大神のひとりで宇宙の秩序を司ると言われるウィシュヌ神の化身のラーマ王子が主人公の物語。紀元前2世紀に現在の形にまとめられた古いお話です。絵画のモチーフとして取り上げられることも多く、以前からずっと興味を持っていました。でも、いい加減な知識では書けない。ちょっと勉強しましたよ^^絵に描かれた見せ場を織り交ぜながらご紹介したいと思います。
即位前日に継母の計略にかかりアヨディア王国を追放されたラーマ王子は、妻シータと弟ラクスマナと共にダンダカの森へと追われました。悪いことは重なるもので、シータの美しさに目を奪われた魔王ラワナは家来に彼女をさらってくるよう命じます。家来は黄金の鹿に姿を変え、「あら、きれい」と近寄ったシータをまんまと罠にかけ誘拐します。
(左)ダンダカの森で過ごすラーマ王子と弟ラクスマナ。落ち着いた色調の中に、彼らのすみかとなった美しい森が丹念に描き込まれています。
ラーマ王子は神鳥ガルーダからシータがランカ島(現在のセイロン)にいると聞き、味方になった猿王ハヌマンに自分の指輪を託してシータの元へ行かせます。ちなみに、ガルーダはウィシュヌ神の乗り物で、インドネシアの航空会社の名前にもなってますね。風神ヴァーユの子ハヌマンは対岸からえいやっと跳躍しランカ島へ行き、ついにシータを見つけ出しました。報告を受けたラーマ王子の軍が到着したところで、魔王の手下を相手に一同大暴れ。サル(ハヌマン)とキジ(ガルーダ)を連れて鬼退治に向かうももたろうを彷佛とさせる展開です。ところで、ラワナというのは何かの因果で人になれず悪行を行うことが運命づけられている日本で言うところの鬼の大将なんです。日本の昔話にも似て、親しみを感じませんか? この物語最大の見せ場として絵画に登場することも多い場面。
(右)ガルーダがランカ島に偵察に行き、シータがいることをラーマ王子に報告する下りを絵巻物風に描いた19世紀頃の作品。高温多湿のバリ島は絵画の保存には過酷な環境。残念なことに古い作品が残っていることは少ないのですが、この作品はよい状態で保存されていました。
こうしてラーマ王子はシータを取り戻し、アヨディア王国に帰還します。「いつまでも幸せに暮らしましたとさ」と喜びたいところですが、本当の悲劇はむしろここからなんです。ここが勧善懲悪が基本の日本の昔話とは異なるところ。
ラーマの即位後、人々の間ではラワナに捕らわれていた間のシータの貞潔についての疑いが噂されるようになりました。それを知ったラーマは苦しみ、ついにはシータを王宮より追放してしまうのです。シータは聖者ヴァールミーキのもとで暮すこととなり、そこでラーマの2人の子供クシャとラヴァを生みます。後にラーマはシータに自身の貞潔を証明するよう命じますが、このときシータは大地に向かって訴え、「貞潔ならば大地が自分を受け入れますように」と願いました。すると大地が割れて女神グラニーが現れ、 シータの貞潔を認め、シータは大地の中に消えていきました。ラーマは嘆き悲しみ、その後は二度と妃を迎えることなく世を去ったという悲しい結末です。
冒頭お話したように、ラーマ王子はウィシュヌ神の化身です。そのラーマ王子でもこのような弱さを持ち、時に過ちをおかすのかとちょっぴり切ない気持ちに。でも、この終わりなき善と悪との戦いこそがバリの精神世界そのものなのです。バロンをご覧になった方も多いと思いますが、善の象徴である聖獣バロンは悪の象徴である魔女ランダと永遠に戦い続けます。このように善と悪の行ったり来たりは、バリの文化・風習に様々な形で出てきます。
私も毎年お正月には「今年こそ怒らないぞ」と心に誓うのですが、すぐ些細なことに動揺したり腹を立てたりと本当にダメダメ状態。でも、人間の本質ってそんなものかも知れませんね。
来週からガルー作品展『静謐のとき』が始まります。この作品には悪のかけらも見られない。是非来て下さいね!
新年あけましておめでとうございます
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。
バリ島は大晦日の夕方から雨が降り始め、新年は祝福の花火(爆竹?)の音と、降りしきる雨の中でスタートしたそうです。バリではニュピと呼ばれる新年の祭礼がありますが、バリ暦ではもう少し先のこと。官公庁や学校はお休みですが、一般のお店や会社は1日も普通に営業しています。
皆さまはどんなお正月を迎えられましたか?私は郷里の広島に帰り、母の作ってくれたおせち料理とお雑煮をいただきました。広島のお雑煮はすまし汁ですが、牡蠣が入っているんですよ。地方によっていろんな味付けや具材がありますね。
今年は9連休の方も多いと思います。その分交通ラッシュが分散されUターンも3日はまだ空いていると思いきや、日中の新幹線の指定席は満席。広島始発の自由席に乗り込むつもりで駅に行ったら、なんと有楽町の線路脇火災で東海道新幹線は運転全面見合わせ中、一旦帰って午後に出直しました。ようやく新幹線に乗れたものの、前方に電車が詰まっているせいか、途中かなりのノロノロ運転。通常広島ー東京間4時間のところを6時間かけて帰京しました^^;
新年早々とんだ災難と思うところですが、実はこの6時間、結構楽しめました。いつもは斜め読みのFacebookの友人たちの近況もじっくり読めましたし、まとめて書き物をしたりと…かなり集中できましたよ。そして、今年「バリアートショールーム」の活動をどんなふうにしていくかについても考える時間を持つことができました。
今年はギャラリー展示はもちろん、パートナーシップによる作品展示を含めて、バリ絵画に親しんでいただく機会をもっともっと増やしていきます。昨年11月にスタートしたインドネシアレストランのモンキーフォレストさんとのタイアップ企画『五感を満たす食卓』も2月に第三弾を予定しています。今回は一足早い春を感じていただけるよう花鳥画をメインに。そして、ギャラリー展示は1月にガルー作品展『静謐のとき』@ギャラリー開(東京・日本橋)、3月には一周年感謝展示即売会など、今年も毎回テーマを設けた展示会を定期開催します。
なかなか実現できていないのが地方での展示。本当にごめんなさい。ガルー作品展は設定日以外でも1月31日までの平日、ご連絡をいただければ作品を見ていただくことが可能です。出張などで東京に来られる機会がありましたら、contact@balikaiga.comまでご一報下さいませ。幻想的な熱帯風景画にきっと心ゆさぶられることでしょう。
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この8ヶ月を振り返って
こんにちは、坂本澄子です。今年もいよいよ押し詰まってきましたね。週2回(水、土)お届けしているこのブログ、今回が今年最後になります。この1年間応援して下さった皆様のご厚情に心から感謝します!今日はこの一年を振り返りつつ、この「バリアートショールーム」がめざしていることを改めてお伝えしたいと思います。
3月にブログを先行スタートし、4月の第1回以来、3ヶ月に一回、毎回違ったテーマで展示会を開催し、”ほんもの”のバリ絵画をご紹介してきました。
第1回絵画展のテーマは、『青い海を描かない作家たち』でした。わずか数日の非日常を愉しむ”海辺のリゾート”としてのバリではなく、いつまでも心に何かを訴えかけてくるようなウブドを伝えたくて、このネーミングを使用しました。「バリの向こう側」と併せて、マーケティングに関する著書を何冊もお書きになっている中山マコトさんに命名いただいたものです。
ここに込めた想いは、最近色んな人がメッセージしていると感じています。例えば、12月18日のブログでご紹介した高畑勲監督の最新作『かぐや姫の物語』(スタジオジブリ)もそうですし、来年の公開予定のバリを舞台にした映画『神様はバリにいる』(堤真一さん主演)もそう。日本人が失いつつある大切なことを「忘れないでね」と語りかけているように思うのです。
私が出会ったバリ(ウブド)には、「大自然に繋がり、恵みを与えてくれる神様に感謝し、自分と関わる人たちを大切にして生きる」素朴な生き方が残っています。まわりを見渡せば、子供の頃におばあちゃんちの田舎で見たような懐かしい田んぼの風景が広がっています。それが第2回『緑に抱(いだ)かれる午後』でウブドの風景写真と共にご紹介した作品でした。
私もほんの1年前までそうだったのですが、現代社会で生活している限り、日々の慌ただしさに追われ、時に気持ちがささくれ立ってしまったり、人とのつながりがギスギスしてしまったりと、色々ありますよね。じゃあ、皆でバリに引っ越そうという訳にも行きません。そんなとき、自分を取り戻せる時間が一日の中にほんも少しでもあれば、今日はどんなに疲れていても、また、明日から頑張ろうと思えてくると思うのです。
そこで、自分自身に向き合うための時間を持ちませんかと発信したのが、第3回『秋の夜長に〜すてきなひとりぼっち』です。日本から4000km離れたバリ島ですが、その文化風習には同じ島国・農耕民族ゆえに共通するものがいくつもあります。それらをご紹介することで、日本人のある意味、心の原点に触れてみました。
美術館に行かれる方は多いですが、ご自宅に”ほんもの”の絵のある生活を送っておられる方は少ないと思います。あっても、リトグラフなどの版画(作品の右下に15/80といった番号がふられていますが、これは80点の版画を作ったうちの15点目という意味です)で、世界にたったひとつのオリジナルの作品をもつ人は非常に限られます。
理由は色々あると思いますが、一番大きな理由は絵が高価だからです。一流と言われる作家の肉筆には力があります。単に絵を描く技術だけでなく、想いがありそれが見る人の心を揺さぶります。でも、地元の美術館で作品が展示されているような作家の原画は少なくとも数百万円はします。ところが、インドネシアの物価はまだ日本の5分の1以下なので、最低価格が安定し、オークションなどの二次流通でも実積を持ったクラスの画家の作品が数十万円の金額で購入できるのです。「バリアートショールーム」でご紹介しているガルーさん、ウィラナタさん、ソキさん、アリミニさん、アンタラさん…、いずれもそうです。
ぜひ最もくつろげる場所に「世界で一枚のあなただけの絵」を持つ生活をして下さい。同じ持つなら一流作家の作品を。そして、そこに描かれた「バリの向こう側」を大切なものを思い出すきっかけとしていただければと思います。そのために、「バリアートショールーム」は来年もいい作品をお届けしてまいります。そんな想いに共感いただける方は是非来年もこのブログを読んでいただければ幸いです。次のテーマは『心の中の神様』です。画家さんたちにこのテーマで制作をお願いしました。その第一弾、新春1月にガルー作品展を日本橋Gallery KAIで開催します。詳細は来年1月10日にこのサイトを見て下さいね。
それではどうかよいお年を!
あ〜、奥が深い – バリ舞踊とのコラボ
こんにちは、坂本澄子です。昨日バリからガルーさん(Ni Gusti Agung GALUH)の新作2点が届きました。はやる気持ちを抑え、子供の頃のサンタさんのプレゼントのように、一晩眠って今朝開けてみました。朝陽の中で見る風景は写真よりもずっと∞繊細で、田んぼの水面に映る空の色に吸い込まれそうになりながら、しばし我を忘れていました。新春1月に東京・日本橋のGallery KAIでガルー作品展を行います。昭和の空気漂う凛とした空間で静謐な作品をゆっくりとご鑑賞下さい。
好評開催中のバリ絵画展『五感を満たす食卓②バリの妖精たち』、残り6日間となりました。最終日の30日は『バリダンス、ゆく年来る年』が開催されます。バリ舞踊+バリ絵画のコラボをお楽しみ下さい。くわしくはこちらをどうぞ。
さて、今日はそのバリ舞踊のお話です。
ゴメンナサイ、正直に告白します。実は…バリ舞踊って観光客向けのアトラクションってちょっとだけ思ってました。でも、そのイメージが全く塗り替えられてしまうほどの素敵な舞台でした。
23日、渋谷のバリカフェ・モンキーフォレストで、バリ舞踊とバリ絵画のコラボレーションライブが行われました。公演されたのは「Naga Jepang」の皆さん。主宰の荒内琴江先生は’04-’06年にインドネシア国立芸術大学に留学しバリ舞踊を学び、日常生活の信仰の中に生きているバリ芸能の素晴らしさを日本に伝える、まさにバリ舞踊の伝道師です。
舞踊にせよ、絵画にせよ、降臨した神々をもてなし、そして自らも愉しむ芸能・芸術として、バリの人々に大切に育まれてきました。元は村の祭祀で舞う踊りでしたが、’20〜30年代にバリ島に滞在したドイツ人シュピース(バリ現代芸術の父と呼ばれ、絵画の世界でも大きな影響を与えた人です)によって、外国人にも親しみやすい舞台芸術としてリメイクされ、現在は宗教儀礼とは切り離されたプログラムとして演じられています。
皆さんもよくご存知の「ケチャ」と「バロン」は絵画の題材としてもよく取り上げられる大変ポピュラーなものですが、今日は美しい踊り手たちの演目を中心にご紹介します。舞踏宮廷物語を扱ったストーリー性のある壮大な演目、神話の登場人物を扱った演目、鳥や動物たちの舞で構成される花鳥もの、さらには戦いの若き勝利者を扱った戦士ものなど、実に様々な様式があるんですよ。「Naga Jepang」さんの公演プログラムを引用しながら、ハイライトをご紹介しますね。
『オレッグ・タムリリガン – Oleg Tamulilingan』
ミツバチの求愛を描いた踊り。優雅なメス蜂の踊りは女性舞踊の真骨頂とも言え、匂い立つような色香を感じさせる近藤ゆまさんが演じました。対するオス蜂はまるで宝塚の男役スターのような凛々しい荒内琴江さん。おふたりによる恋の駆け引きの様子を愉しませていただきました。美しい衣装、優美な動きに熱い視線が絡み合い、ぴったりと息の合った演技にため息。
『レゴン・クラトン・ラッサム – Legong kraton Lasem』
優美な宮廷物語のレゴン・クラトン。ラッサム王は森で出会ったランケサリ姫の美しさにひと目で心を奪われ、自分の城に連れて帰ります。王は執拗に結婚を迫りますが、既に婚約者のいる姫は頑なに拒み続け、怒った王は姫の国と戦争をすることを決めます。戦いに向かう途中、王の前に不吉の象徴とされる鳥が現れ、「おまえはこの戦いで血を吐いて死ぬだろう」と予言します。王は恐れを感じながらも不吉な鳥を追い払い、戦場へと向かうのでした…。
若き勝利者の踊り。女性が男装をして踊るこの踊りは、青年期の若者が感じている自信と不安、喜びや恐れなどを表情豊かに描いています。力強く、躍動感にあふれ、ダイナミックな中にも繊細さを感じる踊りでした。ちなみに私は最前列で鑑賞させていただいたのですが、射抜かれてしまいそうなほどの荒内さんの目ヂカラに圧倒されました。
わかりやすい解説付き、踊り手の息遣いが直接伝わってくる距離での鑑賞とあって、とても身近に愉しむことができました。目や手など常に身体のどこかを動かし表現力豊かなバリ舞踊。その技術的な難易度はもちろんのこと、芸術としての粋を極めるため、荒内先生を始め、短期留学を重ねては研鑽を積む踊り手さんも多いと伺いました。バリ舞踊、これからちょっと目が離せなくなりそうです。
そういえば、バリ島では公演を終えた踊り手さんが衣装メイクそのままでバイクで帰宅するところに出くわすことがあります。まさに日常生活における信仰に芸能が生きる島だと感じさせられます。
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いよいよ30日まで。バリアートショールームのFacebook pageで毎日作品を紹介しています。
★歳末感謝セール 人気作家の作品が10〜20%off。こちらも12月30日までです。