注文制作であなたのこだわりの一枚を② あの作品のその後
こんにちは、坂本澄子です。
開催中のバリ絵画展『五感を満たす食卓』で、バリ舞踏をされている中野愛子さんにお会いしました。降臨した神々を楽しませる捧げものとして、バリ舞踊とバリ絵画はその誕生や発展の歴史において多くの共通点があり、モンキーフォレストのおいしいランチをいただきながら、しばらくその話題で盛り上がりました。
中野さんのお話によると、バリ舞踊では音に反応して、常に身体のどこかを振わせるのだそうです。一方、日本舞踊は「間」の芸術だと言われる通り、動かすことよりも、むしろ、いかにして静止するかに神経を集中しています。絵画もこれによく似て、画面いっぱいにぎっしり描き込むバリ絵画に対して、日本画は余白としての「間」で余韻や余情を表現し、好対照的をなしています。大変興味深いですね。
バリ絵画展「五感を満たす食卓」は来週20日(水)までやっています。詳細はこちらをご覧下さい。また、中野さんは12/23(祝)に同じくバリカフェ・モンキーフォレスト渋谷で、華麗なバリ舞踊を見せて下さいますよ。その時にバリ絵画もコラボできればいいなあと思っています。
さて、今日は11月2日のブログでご紹介したソキさんの注文制作の続編です。
前回はちょうど下絵が終わったところでしたが、その後お祭りも一段落し、あれよあれよと言う間に制作が進み、今五合目くらいまで来ました。明るいエネルギーいっぱいの作品になりそうですね。これから細部が描き込まれていきます。
ビックリしたのはソキさんの服装。作品に合わせてか鮮やかな色の上下です。半年前にお会いした時と比べると随分印象が変わりました。きっと絵を描きながら、ソキさん自身も絵の持つエネルギーを吸収しておられるのでしょうね^o^
注文者のtomu様からは次のようなコメントをいただきました。
「綺麗な吸い込まれそうな青色ですねぇ。心トキメキます。
ソキさん。わざわざ着替えてくれたのかな~。
このように、お客様と一緒にワクワク&ドキドキした気持ちで完成を待つ時間をとても尊く感じています。完成した作品はこんな思い出と共に、見る度にtomu様を楽しく幸せな気持ちにしてくれることでしょう。あともう少しです!
※この記事には続きがあります。あわせてお読み下さいね。(’14/2/15追記)
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地上25㎝からの風景
こんにちは、坂本澄子です。今日からバリ絵画展『五感を満たす食卓』@バリカフェ・モンキーフォレストが始まりました。バリ伝統絵画15点を展示していますので、東京近郊にお住まいの方、お食事がてら是非お立ち寄り下さい。くわしくはこちらを!
さて、ちょっとプライベートなテーマで失礼します。ウチには人間の長女とワンコの長男がいます。長女はたまにバリアートショールームの仕事を手伝ってくれており、皆様にお会いする機会もあると思いますので、今日は長男ケン(フレンチブルドッグ♂2歳)をご紹介します。
4ヶ月の時にウチに来ました。ワンコを飼うのは初めてだったのですが、あまりのやんちゃぶりに何度も泣きそうに。ケンのご乱行でウチのフローリングはボロボロです。フレンチブルドッグという犬種の特徴みたいですが、人間が大好きで、ペットショップの店長さんに「番犬にはなりませんよ」と念を押された通り、構ってくれる人には誰彼なくすり寄っていきます。ガンコ者の一面もあり、いやな方向へ連れて行こうとすると、すぐに脚を踏ん張ってイヤイヤ。なまじ力が強いので困ったものです。
とまあ、こんなケンですが、先日このブログを読んで下さっている方から、「ケンの目線で見たお散歩日記をつけてみてはいかがですか」と勧めていただきました。地面が近いので、落ち葉が増えたとか、たんぽぽが咲いてるとか、いつも私たちが見ている風景とは違う景色や感じ方に出会えるのではないかとおっしゃったのですね。
確かに、子供の頃って今よりずっと地面が近かったんです。土の匂いがもっと間近に感じられたり、コオロギの鳴く声がすぐそこに聴こえたり。でも、いつの間にかそんなことはすっかり忘れて、自分の視点を中心とした小さな世界に一喜一憂している自分が…。
ところがですよ、バリ(ウブド)を初めて訪れた時、とても懐かしい気持ちになりました。その理由は多分、「大自然に繋がっている」「自分も宇宙の摂理の一部なんだ」という感覚だったのではないかと思います。
街中で大自然に繋がるのは難しくても、いつもと違う視点を持ってみることで毎日がもっと楽しくなるかも知れないと思い、お散歩にデジカメを持ち歩くことにしました。不定期でバリアートショールームのFacebook pageのアルバムに追加していきますので、ワンコを飼っている方もいない方も見てやってください。
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中学校の校庭横の茂みはケンの宝探しの場所。テニスボールがうもれてたり、出てくるわ出てくるわ。かぴかぴになったネズミの死骸までくわえてきたのにはびっくり。校庭から子供たちの声が聴こえると、この通り耳がぴーん。「きゃあ、かわいい〜」と言われようものなら、「俺様、かっこいいだろ」とばかりに、しっぽのほとんどないお尻をプリプリ。人間でいうと二十歳の青年なのでしかたないですね…^o^;ちなみにバニーちゃんのしっぽみたいなのがちょこんとついてます。
ちょっと変わった木がありました。錦木(ニシキギ)という名前は、紅葉の美しさに由来してついたと言われるほど鮮やか。よく見ると枝のところどころに翼のようなものが出ています。触るとコルクみたいな手触り。物事にはすべて理由があると言われますが、この植物はどのような宿命をおっているのでしょうね。
ふと空を見上げると、枝と空の雲がダンスしていました。刻一刻と姿を変える雲は、まるでアーティストですね。
バリアートのある暮らし⑦ 絵の世界に空想旅行
こんにちは、坂本澄子です。朝晩ちょっと寒くなってきましたね。お散歩も一枚上着が多く必要になりました。次回あたり、うちの長男ケン(フレンチブルドッグ♂2歳)をご紹介します^o^
さて、今日は10月の絵画展でお会いしたお客様から嬉しいお便りをいただきました。こういった絵の楽しみ方、ほんといいですね。私も真似してみます。
絵は飾るものではなく、鑑賞するものと実感 小金井市A様
『アグン好日 -Good Day-』を購入してから、3週間が経ちました。
日々眺めているとどこか懐かしい風景に癒され、いい気をもらい、悪い気を吸い取ってくれるような感じがしています。時間帯によっても、絵が見せる情感が違うのも魅力のひとつですね。とりあえず、決まった壁掛けにはせず、あちこちに置いて楽しんでおります。
私のお気に入りは、夜目の前に持ってきて、音楽を掛けて、お酒を飲みながら鑑賞することです。不思議なことですが、絵と対話できるというか、その世界に引きずり込まれ、結構な時間が経ちます。
今更ながら、絵は飾るものではなく、鑑賞するものだと実感しました。近い内にウブドに行こうと思ってましたが、しばらくは想像の対象として、楽しもうと考えてます笑。
カラフルでリズミカル、眺めていると楽しくなります 江東区W様
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お二人とも絵の持つ魅力を存分に楽しんでおられ、本当に嬉しいです。これからも、楽しい時もちょっと疲れた時も元気をくれる存在であるよう願ってます!
来週12日からスタートするバリ絵画展『五感を満たす食卓』(@渋谷バリカフェ・モンキーフォレスト)にも遊びに来て下さいね。ヤングアーティストと細密画を中心に15点を展示します。東京近郊にお住まいの方はお食事がてら是非どうぞ!
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バリ絵画展『五感を満たす食卓』への思い
こんにちは、坂本澄子です。三連休はゆっくり過ごされましたか。私は前職時代の同僚たちとホームパーティをやりました。今回で4回目になりましたが、それぞれ得意料理を1品ずつ作りお互いを楽しませるという趣向でやっており、回を重ねるごとにお料理の内容もグレードアップしています。御陰さまで、美味しいお料理とお酒、楽しいおしゃべりを堪能することができました。
さて、来週に迫ったバリカフェ・モンキーフォレストさんとのジョイント企画『五感を満たす食卓』にも同じような思いを持っています。気の置けない仲間たちとはもちろんのこと、おひとりで来ていただいても、①ジャワ人のシェフが作る本場のインドネシア料理(味覚)、②バリの一流画家の描く絵画(視覚)、③心地よいガムランの音色(聴覚)、④食欲をそそる香り(嗅覚)、⑤テラスからの秋の風(触覚)が楽しめます。
私も皆様になったつもりで五感で楽しんでみようと、ふらりと渋谷のお店に行ってきましたので、今日は私の好きなメニュをご紹介します。
奥のカウンターの角っこの席に座りました。まずは、ビンタンビール、暑い日にもゴクゴク行ける軽めのピルスナーです。つきだしのエビせんはドラゴン社のもの。お店の方の説明によると、ここのが一番美味しいとのこだわりから、いつもブランド指定で仕入れているとのこと。確かに!
お料理一品目はガドガド。ゆで野菜(キャベツ、もやし)とゆでタマゴのスライスにピーナツソースがかかっています。ここまではよくある普通のガドガドですが、このお店では先程出て来たエビせんを砕いたものと混ぜ合わせていただきます。違った食感がお口の中で出会い、ピリ辛ソースが絡まると、もうビールが進むこと。いい気分になってきました。目の前にある壁にアリミニさんの細密画を飾ったら、見てるうちにイマジネーションをかきたてられて、空想旅行ができちゃうかもと思いました^_^
二品目はイカのスパイス炒め(チュミ・チュミ・チャー)。ポップな色使いの野菜たちがまるでソキさんの絵に似て、何だか元気がでてきます。たっぷりのイカにふわっと薫るニンニク醤油味が食欲をそそりますw
おなかも結構いい感じになってきたので、〆にヌードルを。インドネシアで麺といえば、バミゴレン(焼きそば)が最もポピュラーですが、ここはあえて外してバミゴドック(インドネシア版ラーメン)を選びました。おそらく醤油系なのですが、どこか南国風のスープがこれまたうまい!大満足の夕食でした。
坂本一押しの珍味はテンペ。大豆を発酵させチーズのように固めた健康食品なのですが、これを黄金色にカリっと揚げたテンペゴレンはあと引く美味しさ。ビールやアラック(ココナツが原料のインドネシアのお酒)のおつまみにぜひお試しを。
ということで、今回の絵画展は仲間との楽しい食事を盛り上げる元気の出るヤングアーティスト・スタイルの作品と、ひとりの時間をゆっくり愉しめる細密画を展示します。気に入った作品がありましたらご購入いただけますので、お店のスタッフにお声掛け下さいね。私も期間中何度かお邪魔しますので、見かけたらお声かけて下さいませ!
バリ絵画展『五感を満たす食卓』
期間:11月12日(火)〜20日(水)
展示内容:
★アリミニ…バリの伝統絵画を女性ならではの色彩感覚と流れるような構図で描いた作品
★ライ …クリキ村に伝わる細密画。小品ながら1ヶ月以上かけて丁寧に仕上げた芸術作品
★ソキ …極彩色でポップな作風に思わず元気が出るヤングアーティスト・スタイル。
その第一人者ソキ氏の小品と若手作家ヌアダ氏の作品
注文制作であなたのこだわりの一枚を
こんにちは、坂本澄子です。今日から3連休。どこかに行こうと計画されてる方、お仕事される方、おうちでのんびりされる方…、それぞれあると思いますが、私はとりあえず、ケン(フレンチブルドッグ♂2歳)と朝の散歩に出かけてきました。いつも行く公園の隣に大きなタワーマンションが建築中で、だんだん高くなっていきます。今32階まで来ました。その横を真っ赤な太陽が昇ってくるのを見ていると、なんだか厳かな気持ちになりました。
さて、「お部屋に絵を飾りたいけど、なかなかこれと思うものに出会えなくて…」と思っていませんか?そんなあなたにおすすめしたいのが注文制作です。「バリアートショールーム」でご紹介している画家はいずれも注文制作をお受けします。GALUH, WIRANATAなどの人気作家は多少お時間をいただきますが、それ以外は1〜2ヶ月でお届けが可能です。通常こんな流れで進めています。
でも、目に見えないものを注文するのって勇気がいりますよね。そこで、ちょうど今まさに進行中の制作例をご紹介します。
「バリ島の不思議な力が湧いてきて元気になりそう」横須賀市 tomu様のケース
以前からSOKIさんの作品が大好き。「見ているとバリ島の不思議な力が涌いてきて元気になりそう。そんな作品を自宅に飾りたい」と秋のバリ絵画展に初めてお越しいただきました。残念ながら、展示作品は今ひとつご希望にフィットしなかったのですが、「バリアートショールーム」の画家のページに掲載しているSOKIさんの過去作品をご覧になられて一目惚れされたのがこれです(写真)。バリ島を形取り、神々の島での生活や祭りを鮮やかに描いた壮大なスケールの作品。
さっそくSOKIさんに問い合わせてみると、「では、あれに似たイメージで描きましょう」と即OK。当初は60cmx80cmの日本間サイズで考えていたのですが、画家からの提案もあり、壮大な作品の魅力を存分に引き出すため最終的に80cmx100cmの迫力サイズで制作中です。
中間報告にtomu様にお送りした写真がこれで、今下絵が終わったところです。10月はガルンガン(バリ島で最も大きなお祭り)や村の祭事があり、長老格のSOKIさんはかなりお忙しかったよう。「ちょっと遅れ気味」と申し訳なさそうでした。
tomu様からはすぐに返信をいただきました。
「おはようございます。制作途中の進捗をご連絡いただけるんですね!!益々。。。感動!!かゆいところ!!あっ!そこ!そこ!とても気持ちの良い朝を向かえられました!バリ島のお祭りは大切な文化と理解してます!家宝は寝て待て。。とも言いますし、何よりもソキさんが気持ち良く制作できる環境の中で私にとって特別な、この作品を仕上げていただければ幸いです。。。ソキさんにそのことをお伝え下さい。大丈夫です」
これを見て、じーんと来ました。私にとっても特別な朝になりました。tomu様の温かいメッセージはもちろんSOKIさんにお伝えして、この後の制作も元気100倍で頑張ってもらっています。最終納品までブログの中で実況中継していきますので、ぜひご一緒に見守って下さいね!
お気に入りの作家がありましたら、ぜひ過去作品をご覧になってみて下さい。あなただけの特別な作品を制作するヒントがそこにあるかも知れません。
※この記事には続きがあります。(’14/2/15追記) あわせてお読み下さいね。
<参考サイト>
SOKI作品 … 極彩色でバリの風物を描くヤングアーティストスタイルの第一人者。その作品はバリ島の主要美術館に所蔵されています。
バリ絵画の主要スタイル … どんな作品が好み? まずはスタイル一覧から。
バリのお祭りガルンガン
こんにちは、坂本澄子です。
この時期、バリの人たちは大忙し。画家さんにお願いしている作品も「11月に入ったら着手するね。ごめんね」という感じです。それもそのはず、210日に一度巡ってくるバリで最も大きなお祭り「ガルンガン」の季節だからです。「ガルンガン」は世の中の善が悪に勝利したことを記念する祝日。この日、各家庭の家寺や村の寺院に神々や自然霊、祖先の霊が降り立ち、バリの人々は様々な供物でもてなし、祈りを捧げます。10日後の「クンニガン」に再び天上界に戻るまで、様々な儀礼が毎日のように続きます。もちろんその準備も大変なもの。
皆さんもバロンやペンジョールは色々なところで目にされると思いますが、この様子はバリ絵画の題材としてもよく取り上げられています。
「ペンジョール」は大きな竹をしならせるように作った竹飾り。各家庭の玄関の右側に立てられます。祖先の霊はこのペンジョールを目印に自分の家に降り立ちます。祖先の霊をお迎えするのは、日本のお盆と同じですね。ペンジョールの独特のしなりは聖山アグン山を表すと言われ、よく見ると先端には、ヤシの葉(シュロの葉が使われることも)を神様の形に切り抜いたラマックと呼ばれる切り紙細工のような人形が取り付けられています。ガルンガンが終わっても35日間はそのままなので、皆さんも写真のような光景をご覧になったことがあるのでは?
「バロン」は善を象徴する聖獣で、日本の獅子舞のように中に人が入って、写真(ソキ「バロンの行列」)のように村中を練り歩きます。子供たちがやっている子供バロンに遭遇することも。ちなみに、バロンに対して悪の象徴は「ランダ」と呼ばれる未亡人の魔女。時に子供を食いちぎるとんでもない魔物です。厄介なのは、死んだと思ってもすぐにまた生き返るゾンビのような性質。つまり、バロンとランダとの戦いは永遠に繰り返されるというわけです。なんだか、良心とちょっと悪い心の間で葛藤が繰り返されるのに似ていますね。「あ、またやっちゃった。成長してない」と自己嫌悪に陥るのもこんな時(^^;;
ところで、バリ島には古くから精霊信仰があり、ウブドの市街地にはいくつかの場所に「精霊の通り道」があります。わずか1〜2m程度の細い道なのですが、村の共同体や地方自治体がお金を出して作っているそうです。また、大きな木やチャンプアン(2つの川が合流する場所)には精霊が宿ると言われており、尊いものを表す黄色い幕が張られています。先祖の霊や自然に宿る霊を大切にしていることが随所に感じられますね。
こんなバリの風習と人々の生活を描いた作品を本場インドネシア料理を楽しみながら鑑賞いただけるミニ絵画展を企画しました。
バリ絵画展『五感を満たす食卓』
期間:11月12日(火)〜20日(水)
展示内容:
★アリミニ…バリの伝統絵画を女性ならではの色彩感覚と流れるような構図で描いた作品
★ライ …クリキ村に伝わる細密画。小品ながら1ヶ月以上かけて丁寧に仕上げた芸術作品
★ソキ …極彩色でポップな作風に思わず元気が出るヤングアーティスト・スタイル。
その第一人者ソキ氏の小品と若手作家ヌアダ氏の作品
ウブドのいまむかし
こんにちは、坂本澄子です。バリとお隣のロンボク島で撮った写真を送っていただきました。向こうの写真を見ていつも思うことは、色彩の豊かさです。原色のパレットのような色のフルラインナップ。その色彩感覚の豊かさが、絵画の世界でもあの美しい色使いを生み出すのだなあと感じています。
さて、前回に続き今日も歴史のお話を。今日のバリの文化の原型はお隣のジャワから伝わったものです。14世紀、ジャワではマジャパヒト王国が全盛時代で、その傀儡政権であるゲルゲル王国がバリ全土を支配していました。その後、イスラム勢力の侵攻により、マジャパヒト王国が滅ぼされ、バリに逃れた王宮の廷臣、僧侶、工芸師など知識階級の人々によって古典文学、影絵芝居、音楽、彫刻など多くの文化がもたらされたのです。バリが古代ジャワ文化の継承者とも言われる所以です。
しかし、11世紀頃には既にバリ独自の王国や文化が存在していたのですよ。これがバリ最古のペジェン王国です。ゴア・ガジャ遺跡やイエ・プル遺跡など、ウブド近郊にその史跡を見ることができます。ウブドは古代バリの中心地だったということですね。
写真はゴア・カジェン遺跡。左写真の入り口を入ると、中は右写真のように洞窟になっていて、ここにはヒンドゥの三大神プラフマ(宇宙の創造を司る)、ウィシュヌ(宇宙の秩序を司る)、シワ(宇宙の終わりの日に破壊と再生を司る)を表すという三体のリンガ(男性のシンボル)が祀られています。
バリ、とりわけウブドでは、現在もバリ暦に従って祭礼中心の生活が営まれています。私が常宿にしているコテージのご主人テギさんも週に1〜2回はサルン(腰巻き)を巻いてお寺に行き、祭礼やその準備に携わっていました。仕事を度々休まなければならないので、ホテルやレストラン、タクシーなどバリの観光産業に従事しているのは地元の人ではなく、ジャワからの出稼ぎ労働者が多いのはこのためです。ウブドの人たちは農業に携わる人が多く、パンジャールと呼ばれる隣組の単位で、田植え、稲刈りなどを共同作業で行っています。バリの気候は温暖でお米は年に2〜3回とれるので、共同体での生活はまさに生活の基盤。絵画に描かれている農作業の風景や神様に恵みを感謝し供物を捧げる祭礼の様子は、現在進行形の姿なのです。
しかし…、そんなウブドにもここ数年で観光開発の波が押し寄せてきました。ウブドの中心部近くに住む画家ガルーさんのお宅も周囲の田んぼが次々に埋め立てされ、新しいヴィラが建っているとのこと。ちなみにガルーさんも隣に貸家を一軒立てたところ、マッサージ店がテナントとして入ったそうです。安くて質がいいと地元でも評判のお店の2号店で、1時間のオイルマッサージがなんと600円。ガルーさんもさっそく利用されたのかと思いきや、ご主人のしてくれるマッサージの方がいいんですって。あら〜、仲のよろしいこと。失礼しました〜。しかし、あの繊細な作風は目を酷使します。きっと首筋から肩にかけてコリコリでしょう。ご主人も画家です。ガルーさんがプロの画家になったのもご主人の勧めで女流作家ばかりの絵画展に出展したことがきっかけだと伺いましたが、今をときめく人気作家、色んなところにご主人のやさしいサポートがあるのですね^o^
とまあ、便利になるのはよいことですが、初めてバリを訪れた際に思い出させてもらった大切なこと、特に、自らを大自然の一部として素直に受け入れ、そこに宿る神々に感謝の祈りを欠かさないバリの人々の素朴な思いが失われないようにと切に願う今日この頃です。
<参考サイト>
★ガルー 繊細な筆遣いと色合いの幻想風景画
バリの暮らしがわかる絵画たち
★アリミニ 女性画家らしいちょっとかわいい作風
★ライ この細密さはスゴイ、細密画の代名詞クリキスタイルの作品
★ヌアダ ウブドの農村風景をポップな極彩色で
なぜウブドには画家が多いのか?
こんにちは、坂本澄子です。朝晩、ちょっと肌寒くなってきました。これから冬に向かうわずかな間、日本の素晴らしい秋を楽しんで下さいね。
南緯8°に位置するバリ島には季節がほとんどありません。あるのは雨期と乾期です。先日、ブログをお読みいただいたtomu様から「バリに住む友人が、雨期に入って洗濯物が乾かないと嘆いてます」とお便りをいただきました。雨期と言ってもずっと雨が降り続くのではなく、昼過ぎ頃からスコールが1〜2時間降るという感じなのですが、湿度が90%を超えることも多く(ちなみに梅雨時の東京で平均75%)、晴れ間に洗濯物を干しても大人のTシャツだと2日くらいかかりますし、その辺にパンでも置いておこうものなら翌日にはカビちゃってます(^^;;これでも山側のウブドは海側に比べるとまだしのぎやすい方なのですけどね。
さて、私が初めてバリ(ウブド)を訪れるきっかけとなったのは、「画家が集まっている芸術村」があると聞いたことから。興味津々出かけてみてビックリ、本当に画家が多いんです。「バリアートショールーム」がおつきあいしている画家さんたちも、お父さん、兄弟、ついでに隣の家のオジサンまで画家という環境に生まれ育ち、「物心ついた頃にはもう絵筆を握ってました」という人がほとんど。最近は美術学校に行く画家も増えましたが、身内から手ほどきを受け、見よう見まねで描き始め、次第に自身のスタイルを確立していくのがウブド流です。
それにしても、どうしてここまで画家が多いんでしょう?その理由は歴史の中にありました。バリ州の現在の8つの県の原型は17世紀、8つの王国が群雄割拠していた時代に遡ります。特に、イスラム勢力から逃れたジャワの知識階級が住み着いたクルンクン王国には様々な古代ジャワ文化がもたらされ、絵画の分野では、物語の場面を描いた古典絵画(現在のカマサン・スタイル)が発展しました。
ところで、バリのヒンドゥ教の神様というのは普段はお寺にはいません。ガルンガンなど特別な時に降臨する神様を楽しませるためのいわば捧げものとして、舞踊や音楽、絵画・彫刻などの芸術が育まれたのです。そのため、他の7王国にもそれぞれに腕のいい職人がいました。
ところが…、東インド株式会社を設立したオランダはその勢力をインドネシアにも広げ、19世紀末になるとその支配はバリ島にも及びました。他の王国がオランダに徹底して抵抗する中で、ギャニャール王国(ウブド)だけはオランダと同盟し他王国を滅ぼすことに加担したため、王族中心の旧体制を維持することに成功したのです。芸術のスポンサーは主に王族ですから、弱体化した他王国から多くの職人がギャニャール王国に移り住み、シュピース、ボネなどの外国人画家を招聘し積極的に絵画を保護したウブドに画家の多くが集まったというわけです。こう言うと、仲間を裏切り、芸術の中心となったウブドに対して複雑な気持ちを抱かれるかも知れませんね。でも、ウブドにも古代培われた素晴らしい文化がありました。この話は是非別の機会にさせて下さい。
今でもデンパサールからウブドに続く地域は『芸術街道』と呼ばれ、様々な文化が集まっています。木彫りのマス村、銀細工のチュルク村などは、お土産を探しに行かれたことがあるのではないでしょうか? それから舞踊はプリアタンが有名ですね。ウブド市街地にはたくさんのギャラリーがあり、これらを回ってみるのはバリ観光の楽しみのひとつです。ただし、画家が多いということは作品の質も玉石混淆。中には、お土産用に同じパターンで大量製作された作品もありますから、気をつけて下さいね^_^
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今週から、一点から見れる『プライベート絵画展』をやっています。前日のお昼12時までにご覧になりたい作品と時間枠を予約いただくだけ。10月の開催日は23, 25, 26, 30日です。詳しくは開催案内をどうぞ。
<関連サイト>
スタイル別に絵を探す … バリ絵画を代表する主要スタイルとおすすめ作品
10万円以下で絵を探す … おウチに帰るのが楽しくなる!気軽に飾れるバリ絵画
バリではこんな風に過ごしています
こんにちは、坂本澄子です。先日の絵画展で、何人かの方から「バリにはよく行くのですか?」と聞かれました。よくでもありませんが、今年は2回ほど行きましたので、今日はそのお話を。
バリに行く度に常宿にしているのは写真のコテージ。2週間滞在して朝食付き3万円みたいなところですが、それでも満足できるくらいに清潔で、時々ヤモリが入ってくることを除けば快適な暮らしです。一度20センチ以上もあるオオヤモリ(トッケイ)と一夜を共にしたことがありました。天井近くにはり付いたままほとんど動かないのですが、さすがにその夜は眠った気がしませんでした。翌朝、宿のご主人(テギさん)を呼んで捕獲してもらいました。目がクリクリとした愛嬌のある顔をしているわりに、捕まった瞬間は口を180度以上も開けて何やら声も上げて威嚇。獰猛ぶり(?)を発揮していました。
ここに泊まる一番の楽しみはテギさんの奥さんが作ってくれる家庭料理がおいしいこと。大抵はご飯に何種類かのおかずを添えたナシチャンプル、ご飯をおかゆ風にすることも、それから日本でも有名なナシゴレンなどがコピ(バリコーヒー)と一緒に出されます。ニンニクの香ばしい薫りがふわっと漂い、朝から食欲をそそります。このせいかバリに行くと大抵太って帰りますw バリ島にはリタイア後、長期滞在する外国人も多いため、このクラスのコテージやヴィラがたくさんあるんですね。よく見かけるのはオーストラリア人。きっと近いからなのでしょうね。いつか私もこんな滞在の仕方をしてみたいと思います。
初めて来た時はまだ前の仕事をしていた頃で、何もしないことが最高の贅沢とばかりに、コテージのテラスから見える風景をぼーっと眺めては過ごしていました。この時からです、空を見上げるようになったのは。雲の形がとてもおもしろく、また刻一刻とその形を変えていく雲はまるでアーティスト。雨期の天気は変わりやすく、午後過ぎから大抵スコールになります。朝は晴れていた空が見る見るうちにかき曇り、やがてざぁという音と共に雨がやってくる様は、見ていて(聞いていて)スカッとしますよ。
現在は仕入れを兼ねて行くため、現地のビジネスパートナーと画家さんを回ります。インターネットなどのインフラが整い始めたのはここ1〜2年。特にウブドはメールで用事を済ませる習慣はまだありません。アトリエを訪問して、顔を見てお話して。当たり前のことですが、こうすることによって、今どんな作品を描いているのか、どんな仕事場(アトリエ)なのか、画家の人となりが伝わってきますので、こういったコミュニケーションを大切にしています。急に訪ねても温かく迎えてもらえるので、それがバリのいい所です。
バリの民家は通常いくつかの棟で構成されています。男の兄弟は結婚した後も家に留まるため、家長の住む棟、家族の住む棟、台所など煮炊きをする棟、儀礼を行う場所、さらにはファミリーテンプルまで、広い敷地にずらっと建屋が並んでいることがよくあります。シュピース・スタイルの画家ウィラナタさんもご自身の家族、お母様、弟のケパキサンさんご家族と同じ敷地内に住んでおられますが、最近ひとつ棟を新築されたそうです。前にも一度ご紹介した、ご自分の絵を飾るギャラリーです。今はひっきりなしの注文をこなすのに精一杯で、中に飾る絵はまだないそうですが、確実に夢の実現に向かって一歩一歩進んでおられるところがすごいなあと思いました。そうそう、アトリエから灰皿が消えていました。禁煙が続いているようですw
一枚から気軽に見れる!プライベート展示会
こんにちは、坂本澄子です。
嬉しいお便りをいただきました。秋のバリ絵画展でガルーさんの作品を見て一目惚れされた東京都町田市のY様からです。
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とうとう買ってしまいました、憧れのガルーさん『残照の家路』。ガルーさんの絵は、田んぼの水面の優しい透明感と、手前から遠景へ次第に淡くなる木々の緑が凄いのです。『早暁の静謐』ブルーの水面も素晴らしいのですが、残照を写した水面の色合いが絶妙です。色を表す語彙が乏しい私にはどう説明していいのか分かりませんし、写真でも簡単には再現できないものなので、実物を見ない限りこの色合いは想像もできないのではと思います。そんな絵を独り占めしていいんだろうか、と、いっぱしのアートコレクターになった気分も味わっています。「今日もたくさん働いたなぁ、満足満足」と登場人物がつぶやいているのが聞こえるような穏やかさが、我が家の玄関にぴったりです。毎晩、家に帰り着いて扉を開けるとそこに「残照の家路」が待っています。おかえりなさ〜いと言ってくれるような気がして、帰宅の足も自然にウキウキしてきます。
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Y様は「バリアートショールーム」のサイトをご覧になって、以前からずっとガルーさんの作品が気になっておられたそうです。そして、10月6日のバリ絵画展で実物を見て、色使いのすばらしさ、繊細さに圧倒され、4日後の朝、ネットで購入いただきました。
「実物」を見る。まさに私も同じことを考えていたところでした。
できるだけ多くの方々にバリ絵画の実物に触れていただきたいと、前回のブログで、モンキーフォレストさんとのジョイント企画、バリ絵画展『五感を満たす食卓』の開催についてお知らせしたところ、多くの方から反響をいただきました。嬉しいのと同時に、身が引き締まる思いです。
そして、今日もうひとつお知らせです。「サイトに掲載されているこの作品が見たい」といった個別のご要望にお応えする企画を考えました。「プライベート展示会」をスタートします。毎月開催日をInformationに掲載しますので、来場の時間枠とご覧になりたい作品を事前予約の上、お越し下さい。1時間枠に1組様のご案内で、東京・有明のビルの最上階にあるラウンジの開放的なスペースで、ゆっくりと作品を鑑賞いただけます。レインボーブリッジや東京湾の抜けるような景観がもれなくついてきますよ。一点からお気軽に。
プライベート展示会の詳しい開催要領はこちらをご覧下さい。