次の土曜日はバリアートサロンへ
こんにちは、坂本澄子です。
3月25日土曜日、久しぶりのバリアートサロンを開催します。今回はなんとテレビカメラが入ります。
N放送協会さんのEテレ、人生の折り返し地点に差し掛かった私たちの世代を元気にしたいという新番組で、取り上げていただけることになりました。きっかけは2年前の「夕刊フジ」のコラム「人生二毛作」でご紹介いただいたときの記事。私のちょっと無謀な、会社員からの転身物語を読んでくださったプロデューサーさんから取材の申し込みがあったというわけです。
「本当に私でいいのでしょうか?」
正直悩みましたよ。だって、バリ絵画の仕事も絵描きになる夢も、まだまだこれからですから。もっとカッコよく成果を出している方が他におられると思ったのです。
「いえ。ビジネスをテーマにした番組ではなく、人にフィーテャーし、生き方を紹介する番組ですから」
「なるほど、そうですか」
中に向こう見ずな私のような輩が混じっていても、それはそれでいいかも…と、お受けすることにしました。
取材を受けて驚いたこと。こんなに?と思うほど、丁寧に取材をされるんです。あやふやに答えていると、それはどうしてですか?と鋭いツッコミが(^o^; でも、そのおかげで、この4年間を見つめ直すよい機会になりました。
実は、独立して1年が経った頃が精神的に一番辛かったのです。以前の私は、お客様から頼りにしていただき、部下からも頼りにされ(されてないか^o^;)、それなりに忙しい毎日を過ごしていたのが、いまの私は世の中の役にたっていると言えるだろうか。そんなふうに考えて、社会に繋がれない孤独や焦燥感に飲み込まれそうになったものです。
でも、いまこうして振り返ると、そのつらかった時期があったからこそと思うことが意外に多いのですよね…。そういえば、先日前職時代の仕事仲間と女子会をしたのですが、逞しい彼女たちも同じようなことを言っていました。
「絶好調のときよりも、むしろ苦しかったときに学んだことの方が生きているよね」
挫折したり、傷ついたりしながらも、夢を捨てきれずに走り続けるのは、若者たちの専売特許ではなく、私たちのような折り返し世代にもあてはまるのではないでしょうか。そんな思いを胸に、バリアートサロンでもお話しさせていただきたいと考えています。
取材&撮影が入りますとご案内したせいか、まだお席が残っています^o^; ぜひ遊びにいらしてください。私がバリ島で最初に出会った絵、この仕事を始めたとき背中を押してくれた絵、新たな方向性に気づかせてくれた絵など、この4年間のエピソードを盛り込みながら、バリ絵画の、そして、絵のある暮らしの魅力をお伝えできればと思っています。
第10回バリアートサロン、3月25日(土)14:00〜15:00。詳しくはこちらをどうぞ! お申し込みをお待ちしています!
本物の絵のある暮らしー4羽の野鳥たちのその後
こんにちは、坂本澄子です。
春の訪れを感じる朝です。ケン(フレンチブルドッグ♂5歳)のお散歩コースはハクモクレンが満開。その隣では、銀色の毛皮をまとったネコヤナギが芽吹きの時を静かに待っていました。公園の芝生にはイヌノフグリが青い絨毯、その向こうには黄色いタンポポ。ちょっと心豊かな1日の始まりとなりました。
おかげさまで3月1日、バリアートショールームは4周年を迎えました。これもひとえにみなさまのご愛顧の賜物、本当にありがとうございます。感謝の気持ちをこめて、先週から4周年記念セールを始めました。いままでにない半額の作品もたくさんあります。ぜひこちらのご案内ページをご覧くださいませ。
さて、そんな中、以前展示会で作品をお求めくださったM様から、とっても嬉しいお言葉をいただきました。さっそくご紹介させてください。
奥様と男のお子様2人の4人家族。「この4羽の野鳥の絵を僕たち家族の記念にしたい」と仰って、エベンの花鳥画を購入くださったのは2013年。バリアートショールームができた最初の年でした。(ブログ「バリアートのある暮らし⑤」2013/9/14) その頃、下のお子様はまだ赤ちゃんでしたが、いまは4歳、お兄ちゃんは8歳。少し広めのお部屋に引っ越しされ、賑やかな毎日を送っておられるそうです。
「絵のある家っていいですね。おかげさまでうちは二人とも絵を描くのが好きで、特に次男はしょっちゅうです」
と言って、送ってくださった写真がこちら。『4羽の野鳥』と、手前にはお子さんたちの絵が。きっと、下のヒーローと怪獣たちがおにいちゃん、上のフルーツが弟さんの作品ですね。バナナ、いただきま〜す!この壁が一面にアートで埋め尽くされるまで、まだまだたくさん描いてくださいね。あ、バリ絵画もよろしくお願いします(笑
やっぱり、本物の絵って、複製画とは違う、何かしらこう伝わってくるものがありますよね。それが小さなお子様たちにもいい影響を与えてくれたとしたら、こんなに嬉しいことはありません。
日本の家を絵でいっぱいにしたくて、この仕事を始めました。必需品ではないけれど、人の心を豊かにしてくれる大切なものだと思います。初心を忘れずこれからも頑張っていきます。
ちなみにM様は玄関に飾りたいと、さっそくセールをご利用いただきました。また写真を送っていただけるかなあと楽しみにしています。
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バリ島の人気作家ガルーの風景画小品、アンタラのバリの子供たちがなんと半額を始め、またとない価格が満載です! 3月31日まで
こちらも半額の作品がいっぱい。おこづかいで始める本物の絵のある暮らし。
バリ絵画のあるサロン②
こんにちは、坂本澄子です。
忙しさにかまけて、ブログをご無沙汰してしまいました。スミマセン^o^;「最近ブログが更新されていませんが、どうかされたのですか?」とご心配のメールをあちこちからいただき、こんなことじゃいかんいかんと思っていたところ、鹿児島県始良市のN様からとても嬉しいお便りを頂戴しましたので、さっそくご紹介します。
とても良い絵が届きました!
実物を見た瞬間、あまりの素晴らしさに感動致しました。
最初は、自宅の寝室に飾る予定だったのですが、少しでも多くの方にラバさんの絵を見てもらいたくなって、 私の美容室のカウンター上に飾ることに致しました(^^)
届いてから2日、お客様からも、神秘的でとても癒されると大好評です!。 本当にありがとうございましたm(._.)m
坂本さんには本当に感謝しております!。
ラバさん、体調が悪い中、素敵な絵をかいてくださり、ありがとうございました。
私の一番の宝物です!一生、大切にしていきます。
又、お願いするかもしれません(^^)どうかお元気でいて下さいね。
こんなに感激しておられるのは、もちろんラバさんの絵のすばらしさもあるのですが、ここに至るまで紆余曲折がありました。
すみません、あの作品はもう売れてしまいまして。。。
ほぼ同じ時期に3名の方からお問い合わせをいただいたほどの人気の作品でした。N様は深いグリーンと繊細な感じをとても気に入られており、
どうしてもほしいです、注文制作はできないでしょうか。
一点ものですから全く同じというわけにはいきませんが…とご了解をいただき、お引き受けしたのは、昨年10月のことでした。
ところが、、、
いざ制作となるとラバさんの筆が進まなくなってしまったのです。このサイズですと、1ヶ月もあれば完成とお伝えしていたのですが、下書き途中のキャンバスはアトリエに置かれたまま。息子のアルサナさんにそっとを訊いてみると、どうも体調がよくないらしいとのこと。お元気だと思っていても来年は70歳。
気を揉みながらこの状態は続き、N様に正直に状況をお伝えしたところ、「半年、いえ一年待っても構わないです」とまで言っていただいたのですが、その時はまだ完成に漕ぎ着ける確信が持てず、一旦ご注文をキャンセルしていただきました。
キャンセルのことはラバさんには伝えず、忍耐強く見守る日々が続きました。下絵が完成した後は少しずつ制作に勢いが出始め、完成の連絡を受けたときにはもうやったーっ!です。
これまで注文制作では思わぬ事態を経験することもありましたが、最終的にお客様に喜んでいただくことだけを考えていつも取り組ませていただいています。それだけに感慨深いものがあり、今回のことも、私にとりましても忘れられないできごとになりそうです。
さて、全作品が対象の新春セール、残り4日となりました。この後、しばらくセールの予定はありませんので、どうかこの機会をお見逃しなく。ラバさんの作品もありますよ。あの深い緑にいだかれる感じ、ぜひ体験してみてください。
素敵な絵を買いました
こんにちは、坂本澄子です。
先日、ある作品にひとめぼれして、久しぶりに自分のために絵を買いました。葉書大の小さな抽象画です。
うちには畳1畳分もあるバリ絵画をはじめ、絵で溢れかえっており、最近では私自身が描いた絵も含めて家中の壁を占拠しています。唯一、見つかったスペースが玄関。シンプルな空間に何か我が家らしいアクセントが欲しくなりました。
家族が帰ってきた時にはやさしく「おかえり」、友人が訪ねてくれた時には明るく「いらっしゃい」、そんな、小さくても優しい存在感がある絵があればいいなあと思っていたときでした。
最初は色に惹かれました。一つは暖色系(写真)、もう一つは淡い寒色でまとめたクールな作品です。両方ともそれぞれに魅力があり、どちらかに一方なんてとても決められず、結局その日は買うことができませんでした。
それから2週間後、幸いその絵はまだありました。飽かず眺めていると、どちらも顔に見えてきました。暖色系の方は笑った顔があちらにもこちらにも。なんだかホッとさせられます。寒色系の方はおとぼけロボットや動物たちの顔に見えてきました。
作家の明輪先生に制作意図をお聞きすると、今から10数年前、あるご友人を想いながら、パソコンのグラフィックツールで描いたのが原型。時を経て、不透明水彩で描きなおしたのだそうです。なるほど!人の喜怒哀楽が伝わってくるようなあたたかい雰囲気はそこから来ていたのだと納得しました。そして、それぞれ違ったイマジネーションの世界に引き込まれ、ますますもって決められなくなり。。
さらに2週間後。私のことを待ってくれていたかのように、その絵はまだそこにありました。こうなったらと、二つとも買っちゃいましたというわけです。幸い、玄関には左と正面に壁があり、それぞれ1点ずつ飾ることにしました。
かくして、玄関に絵がある生活の始まり。洗面所とお手洗いに通じるドアがあるため、通行回数は思った以上に多く、どの方向から来るかによって、見える絵が異なるのも楽しみに。そして、見るたびに違ったものが見えたり、一色だと思っていたところに、いろんな色の点描が隠れていたりと、新しい発見もありました。
実は抽象画を購入したのは初めてなんです。初めて絵を買われる方も、きっとこんな気持ちになられるのではないでしょうか。悩んでおられる方、ぜひ思い切って!本物の絵は想像以上にいろんなことを語りかけてくれますよ。
初めて絵を購入されるあなたにも、手頃な価格で質の高いバリ絵画。おすすめです。
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バリ島の美術館に選ばれた作家たち ・・・目の肥えたコレクターにも自信を持ってオススメします。
絵の具からバリ絵画を見ると 番外編
こんにちは、坂本澄子です。
描き手の視点から絵画を見るこの企画、もともと前編・後編の2回のつもりだったのですが、どうしてもこれはお伝えしたくて番外編を作っちゃいました。
バリ絵画でよく使われるアクリル絵の具、苦手なことはグラデーション、でしたね。でも、花鳥画などで花びらや羽毛に柔らかな陰影をつけたいとき、やっぱり必要なのです。そこで登場するのが竹筆。これを使うと、グラデーションがなんと一瞬でできてしまうのです。
竹筆というのはシャープなエッジのついた、竹製のヘラのようなもの。前編でもご紹介した通り、アクリル絵の具は乾くと水に溶けないので、上から色を重ねやすいのが特徴でしたね。その特徴を利用して、少なめの水で溶いた絵の具を竹筆のエッジの部分につけて、最初は強く、後半はシャっと流すようにすると、下色の上に別の色がいい感じにぼけてくれるのです。シャっシャっではなく、狙いを定めてただ一度、シャっ!がポイントです。
上の写真は、画家のエベンさんにバリ絵画の描き方を教わったときのものですが、この技法を使ったのが、白のプルメリアの花びらと中央のバナナの葉の茎の部分のぼかしです。エベンさんはこの竹筆を葉っぱのくっきりとした輪郭線を描く時にも使っていました。余談ですが、輪郭線は東洋絵画に特徴的なもの。光による明暗で立体を表現する西洋絵画ではほとんど見られません。
竹筆は画家が手作りすることが多く、パーツの大小に合わせて様々な幅のものがあります。
花鳥画と言えばこの人!と言われるラジック氏も10本近い様々なサイズの竹筆を使い分けていました。これで、右写真のような花びらのみずみずしさや野鳥の羽毛のやわらかさを表現していくわけですね。
いかがでしたか?絵の具を通してみたバリ絵画。
描き手の感性があふれた絵作りは、写真とは違う絵ならではの魅力ですが、それを下支えしているのは画家の持つ技術力です。今回ご紹介したように、画家それぞれに様々な工夫をしており、それがバリ絵画の質の高さにつながっています。あなたのご自宅にもバリアートをいかがですか?
絵の具からバリ絵画を見ると 後編
こんにちは、坂本澄子です。
箱根の鄙びた温泉に日帰り湯治に来ました。ひんやりとした空気にのって金木犀の香りが漂っています。秋ですね。
これまで、絵がお部屋にあるとこんなにステキですよと、絵を買ってくださる方の立場で書くことが多かったのですが、私自身も絵を描くようになってから、描き手の思いや工夫を知っていただくことで、別の楽しみ方ができるのではないか、と思うようになりました。
小中学校時代、絵を描いた経験がおありでしょう。私の場合は、最初に絵を習った先生から、「この葡萄を見たとき、何て感じましたか?おいしそうと思ったなら、そのおいしさが、みずみずしいと思ったら、そのみずみずしさが表現できているか、それだけを考えて描きなさい。そして、葡萄をよく見たら、紫だけでなくいろんな色が見えてくるでしょ、それらを全部使って描きなさい」と教えられました。写真とは違う「絵ならではのおもしろさ」を教えてくださった最初の恩師です。
さて、アクリル絵の具のお話です。
アクリル絵の具を使っていろんな描き方ができます。薄く溶いて、澄んだ透明な色を塗り重ねることで出せる深みのある色については、前編でお伝えした通りです。
逆に、油彩画のように筆あとを残し、盛り上げて描くこともできます。また、メディウムを使えば、ダイナミックに絵肌を変えることも。メディウムというのは、キャンバスや紙に定着させる糊のようなもので、絵の具だけでなく、いろんなものを混ぜることができます。そこに砂を混ぜたのがアンタラ氏です。
人物画で定評のあるウブドの画家のアンタラ氏は、家族や隣人へのあたたかな眼差しをテーマに、作品を発表し続けています。ある時、下塗りの段階で、砂を絵の具に混ぜることを思いつきました。バリ島に伝わる砂絵が、ヒントになったのでしょう。大きさの異なる砂の粒によって光が拡散することで、ふんわりとやさしい表情を出すことができました。
←『夢見る頃』(部分) ANTARA 60x50cm
実は、そんなアクリル絵の具にも苦手なことがあります。グラデーションです。乾くのが早い分、違う色を混ぜて徐々に変化させるのは難しいのです。乾きを遅くするメディウムを混ぜて、筆の先で少しずつぼかしながら色を馴染ませることもできますが、効果的なのは油絵の具との併用。アクリル絵の具で描いた上に、油絵の具で微妙なニュアンスをつけていくのです。
この方法を用いて描いたのがこちら『豊穣の女神』です。アクリル絵の具で一通り描いた後、人物の肌や遠くの空に溶け込むような霞んだ風景など、繊細な描写が必要な部分を薄めに溶いた油彩で仕上げています。
『豊穣の女神』ANTARA 100x150cm →
しかし、グラデーションを一瞬で作れる伝統的な技法がバリ絵画にはありました。次回はおまけ編として、バリ絵画におけるグラデーションをご紹介します。
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絵の具からバリ絵画を見ると 前編
こんにちは、坂本澄子です。
バリ絵画の多くは、アクリル絵の具で描かれていることをご存知ですか?水て溶いて使う手軽さは水彩と同じ。乾くと水に溶けなくなるので、塗り重ねが自由にできるという利点があります。同じことは油絵の具でもできますが、乾くのになにしろ時間がかかるので、乾いては塗るのを何度も繰り返して、微妙な深〜い色合いを出すという点では断然アクリル絵の具に軍配が上がります。
実は私もバリ絵画との出会いの中で、アクリル絵の具の魅力に触れ、自分でも絵を描くときに使っています。
アクリル絵の具は絵画の歴史の中では比較的新しい画材で、商品化されたのは戦後間もないアメリカで。発色の良さや速乾性からすぐにデザイナーたちに受け入られ、ファインアートの分野でもファンを広げています。
そのアクリル絵の具、なぜバリ島の画家たちの間でこんなに普及しているのか。これは私の想像ですが、バリの自然や風物を表現するのに鮮やかな発色がマッチしていたことと、気候に左右されることなくすぐに乾くことが、ガッチリ彼らのハートをつかんだのではないかと思います。
冒頭でご紹介した塗り重ねの技法を、制作に巧みに生かしているのはLABAさんです。緑いっぱいの花鳥画はバリ島に溢れるほどありますが、やがて見飽きてしまい、何となく安っぽい感じに見えてしまう作品も少なくありません。その原因のひとつは、単調な色使いだと思うのです。
ところが、LABAさんの作品には見ればみるほどさまざまな緑が使われています。色調と明るさの異なる緑が交互に現れ、独特のリズムさえ感じます。薄めに溶いた色を幾重にも塗り重ねる技法によるものですが、透明度の高いカラーセロファンを重ねると下の色が透けて、複雑に色が変化しますよね。これと同じことが絵の具でも起こり、きれいな透明感と同時に深みも作り出しているというわけです。
なかでもおすすめはこちらの『少年たちの情景』。画家が少年時代を懐かしんで描いた作品ですが、絵の手入れをしながら間近に見て、何度「すごい!」と思ったことか。写真だとお伝えしきれないのが残念です。
70x50cmと少し大きめの作品は、前景、中景、背景とそれぞれに見所があります。例えば、雲のようにも波のようにも見え想像力を掻き立ててくれる遠景。風にしなる椰子の木の迫力。模様のように簡略化された稲穂と草地が交互に繰り返されるリズム感など、絵としての面白さに溢れ、また、様々な種類の緑が素朴な表情の少年たちを引き立てながら、全体としてしっとりと調和した作品に仕上がっています。
ところで、アクリル絵の具のもうひとつの特徴はアクリル樹脂が作る強い表面です。一旦乾くと水をつけてゴシゴシやってもビクともしません。私もこれで洋服を何枚だめにしたことか(笑)ですから、絵の前にアクリル板を入れずに額装して、作品そのものの美しさを楽しんでいただければと思っています。おタバコを吸われないのであれば、お手入れは固く絞った柔らかい布でやさしく埃を取るだけでOK。
湿度の高いバリ島では、古い絵のほとんどが朽ちて残っていないという残念な歴史があります。アクリル絵の具の威力で、LABAさんのようないい絵が次の時代に受け継がれていきますようにと、願う今日この頃です。
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3万円で始める絵のある暮らし
こんにちは、坂本澄子です。
先日嬉しいことがありました。友人が私が描いた絵を購入してくれたのです。四年前のちょうど今頃の季節に、ススキと朧月を描いた作品です。
月はあえて実体を描かず、光によってそこにあることを感じさせる構図。自分でも気に入っていた作品だったので、とても嬉しく思いました。ただ、ソフトパステルで描いたので、今見ると、細密さの点で少し物足りない気も。そこで、細部と月の光に手を入れて、改めて完成としました。
このサイズ(10号)ですと5万円くらいでお引き受けすることが多いのですが、そこは友達ですし、聞けば銀婚式を迎えられたとのこと。あら、それはお祝いをしないとと思っていたところ、嬉しいご提案をいただきました。
「5万円だと一回買ったら次はいつ買えるかな。それ以上だといまはちょっと難しい。もし3万円なら毎年買う楽しみができる。絵の好きな普通のサラリーマンが小遣いで買うとすると、そんな感じじゃないのかな」
私は喜んで3万円でその絵を嫁がせることにしました。だって、一回こっきりより、絵を通じて、買う楽しみと描く楽しみを分かち合える関係が続く方がいいですもの。
友人はその絵を和室の床の間に飾り、さっそく写真を送ってくれました。私はこれだ!と思いました。掛け軸は季節によって掛け替えますよね。絵もそんな感覚で、季節やその時々の気分によって架け替えてもいいんじゃないかと。
私がバリ絵画を扱い始めたのも、まさにこれと同じ発想でした。絵が好きな普通の人がちょっと頑張れば、現地の美術館所蔵の著名作家の作品が買え、お小遣いの範囲でも、質のいい絵が選べる。ただ、現地のギャラリーはコピーも含めて玉石混交なので、心ある作家を選んで紹介していきたいと考えたのです。
そんな大切なことを思い出させてもらった出来事でした。税込3万円台で購入できるいい絵は、こちらをどうぞ!
バリ絵画の歴史③ 光を取り込む風景画
こんにちは、坂本澄子です。
風景画というジャンルを作ったのは印象派の画家たちだったそうです。それまで絵の具は保存が効かず、画家や助手が絵の具を手練りしながら描いていました。ところが、チューブ式の絵の具が開発されると一気に制作の自由度があがり、絵の具とキャンバスを持って、戸外へ出て描けるようになったというわけです。
モネは、パロトンだった実業家・オシュデの次女ブランシュに手伝ってもらい、手押し車に画材一式を積み込んで、制作に出かけたそうです。最初の妻カミーユが亡くなった後、オシュデの妻だったアリスと結婚したので、ブランシュはその後もずっとモネの助手を務めることとなりました。
「自分のアトリエは空の下だ」と言ったように、素早いタッチで一瞬の光と影を捉えたモネの絵。光が移ろうまでのわずかな時間をうまく使うために、ある工夫をしていました。毎日セーヌ川の支流沿いを移動しながら、この時間帯はこの場所でこの絵、次の時間帯は別の場所で別の絵というふうに、複数の作品を同時進行で描いていたのだそうです。こんなふうに描かれた風景画は、パリの密集した住宅の薄暗い部屋にも光を運び込んでくれました。
バリ島で風景画が描かれるようになったのは、ヨーロッパから来た画家たちの影響によるもの。特に、ドイツ人画家シュピースの幻想的なタッチは、いまでもシュピース・スタイルとして人気を博しています。
シュピースがバリ島に滞在した’20〜30年代、彼の弟子だった2人の青年ソプラットとメレゲックは、バリの芸能の徒弟制度にならい、師の描く通りを真似て技術を習得する方法で、絵を学んでいました。模倣から脱せない弟子たちを見たシュピースは、あるとき「僕の絵を真似るのではなく、君たち自身のやり方で描いてごらん」とアドバイスしたそうです。彼らは困惑しながらも自身の表現を模索し、その精神は80年の歳月を超えて受け継がれ、同じアグン・ファミリーにガルー、ウィラナタといった人気作家を輩出しました。
ガルーの作品は空気感のあるふんわりとした柔らかい風景が特徴で、バリ島の風景の雰囲気をよく表していると思います。人物が描かれているので、その人になったつもりで見ると、絵の中に入っていきやすく、より臨場感を持って感じることができます。ひんやりとした朝の空気だったり、風が椰子の葉をそよがせる音だったり。実際、画中の人物は画家自身をなぞらえたものであることが多いそうです。
熱帯の島バリで、屋外にイーゼルを立てて絵を描く画家の姿をみたことはありませんが、バリの民家は建物自体が非常にオープンな作りなので、自然と一体になって生活していると言っても過言ではありません。
生まれてこのかた脳内にインプットされたバリの様々な風景の蓄積が、夢の中の風景のようでいて、リアルに五感に働きかけてくる独特の作品を生み出すインスピレーションの源になっています。
その昔、ヨーロッパのブルジョアたちが愉しんだように、ガルーの作品でお部屋に光を取り込んでみませんか。
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ガルー作品ページ・・・5点在庫があります。実物をご覧いただくこともできます。
ウィラナタ作品ページ・・・ガルーの実弟。違う光の表現がこれまた魅力
バリ絵画の歴史② 買い手が変われば品も変わる
- こんにちは、坂本澄子です。バリ絵画の歴史を西洋絵画と対比させながら解説するシリーズ、第二話をお届けします。
その後ヨーロッパでは、太陽王と呼ばれたフランスのルイ14世に代表される強い王様の時代(絶対王政)がやってきます。ベルサイユ宮殿など、豪華で煌びやかなバロック様式の宮殿を彩ったのは神話や歴史を題材にした壮大な作品の数々。光と影の対比によりドラマチックに演出するのが当時の流行でした。
この時代に活躍したのが、イタリアの画家カラヴァッジョ、オランダの画家ルーベンス、レンブラントなどです。ここでも、おかかえ絵師として注文を受けて描くという基本的なスタイルは同じでした。
それが大きく変わったのは19世紀。その背景には2つの大きな革命がありました。フランス革命を始めとする市民革命、そして、産業革命です。これらによって一般大衆社会が生まれ、ブルジョアと呼ばれるお金持ちの市民が新たに絵画の主要な購入層となりました。
すると、それまで宗教画や歴史画などと比べ低く見られていた、風俗画や肖像画などが好まれ、また一般家庭でも飾りやすい小品が求められるように。やがて、画家たちは注文を受けてではなく、自発的に制作を行い、市場に向けて作品を発表するようになるのです。現在の銀座の画廊で絵を売っているのに近い形ですね。
東インド会社による商業の発達により、早くから市民階級が台頭したオランダでは、既に17世紀にこの形が見られるようになります。フェルメールに大作が少ないのはこのためです。
そして、最も激動の時代を経験したフランスでは、アングル、ドラクロワ、クールベなど、サロン(官展)画家の時代を経て、印象派の画家たちによってこの新しいスタイルが定着しました。
バリ島でも大きな変化が起こりました。1908年のオランダ軍によるバリ全島支配です。当時バリ島は8つの王国による群雄割拠の時代でしたが、早くからオランダと友好な関係を結び、唯一領事という立場で生き残ったギャニャール王国以外は次々と攻め滅ぼされます。
1930年代、「最後の楽園」としてヨーロッパに紹介されると、ヨーロッパの人々は押し寄せるようにバリ島を訪れます。その中には南国の陽光としがらみのない自由な土地を求めて移り住んだ画家たちもいました。ギャニャール王の傍系だったウブド王家のチョコルド・スカワティは、早くから西洋式の教育を受け、ヨーロッパからやってきた芸術家たちを保護する政策にでます。そんな画家のひとりが、すでに何度もご紹介しているドイツ人画家シュピースです。彼はのちにチャンプアンに住まいを構えるまで、ウブド王宮内に住んでいました。
- このようにして西洋絵画と出会ったバリ絵画は、西洋絵画と似た変化をたどります。それまでバリ絵画といえば宗教画が基本でしたが、ヨーロッパから来た画家たちがバリ島の風景や人々の暮らしを珍しがって描くのを見て、目からウロコだったのではないでしょうか。「こんなのもアリなんだ」と新たな買い手となった西洋人に向けて、これらのモチーフを自身の作風で描くようになったのです。
買い手が求めるものを売り物にするのは、古今東西同じですね。そんなウブドには、スポンサーを失った各地の絵師たちが続々と集まり、今の芸術村が形成されていきます。
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バリ島の生活を描いた作品なら
細密画・・・ぎっしりと描き込まれた小さな世界