ニューヨークでアートな休日 MET編
こんにちは、坂本澄子です。
前回のMoMA編にコメントをいただきました。展示していない作品(Not on view)も、事前に言っておけば見せてもらえることがあるそう。そういうところ、アメリカっぽいというか、素敵だなと思いました。さて、今回は所蔵点数300万点を超える世界最大級の美術館、メトロポリタン美術館です。
あまりに広く、見どころありすぎ、結局何をみたのかわからなくなってしまった前回。確か20代後半で、アートよりもショッピングに興味があった頃。ニューヨーク出張の際に同僚たちと来て、「じゃあ、◯時にここで待ち合わせ」とロビーで別れた後は、広い館内をただあてもなく歩いてました。そんな反省を踏まえ、今回は見たいコーナーを絞りじっくり鑑賞しました。
10時の開館前、正面出入り口には既に長い列。チケットを買って、展示室に入るまで30分近くかかりましたが、巨大な建物を2Fへ直行する途中、他の人たちは次々と展示室に吸い込まれ、フェルメールの展示室に着いた時には、他に人影もなく独り占め状態。世界に30数点しかないフェルメールの作品が5点も展示されており、30㎝の至近距離から、こころゆくまで鑑賞することができました。特別フェルメールのファンというわけではないですが、やっぱりすごい、鳥肌ものでした。
展示室の中にはお部屋のように内装されているところもあり、個人宅に招かれたような感覚で名画を鑑賞できました。
建物の中はところどころ吹き抜けになっています。天窓から燦々と差し込む自然光の下には彫刻作品が展示されていました。
展示室は500室以上ありますが、よく見ると、各部屋の上部には◯◯ギャラリーと表示があります。実は、膨大な所蔵作品の多くはコレクターから寄贈されたもの。アメリカでは美術品を寄贈すると税金から控除されるため、作品が集めやすいのです。中にはコレクターの蒐集意図が感じられるコレクションもありました。
例えば、印象派の画家ドガの作品はバレエの踊り子たちを描いた作品で有名です。一見、華やかな場面を描いているようで、実は、社会の底辺であえぐ人々を描いているんです。
踊り子のほとんどは恵まれない家庭環境に育ち、家族を助けるために、舞台で脚を上げ、エトワールをめざして稽古に励んでいます。エトワールになれれば給金も上がり、病気のお父さんを助けられ、苦労しずくめのお母さんを楽にしてあげられる、そんな一心。
踊り子の作品には、可憐な少女とはおよそ不釣り合いなオジサンがちょくちょく登場していますが、それは彼女たちを愛人に品定めしているパトロンというわけです。(注:上の絵のオジさんは舞台監督)
モデルを前に制作を行うドガは、そんな踊り子たちのひとり、14歳の少女に様々なポーズをとってもらいスケッチを行いました。それをもとに蝋のフィギュアを何体も作ったほど、しなやかな身体の動きを精緻に再現しようとしました。のちにブロンズに鋳造された10数㎝ほどの小さな彫刻が展示室にもずらりと並んでいました。また、半ば娼婦に身を落とし客待ちをする姿をパステルで描いた連作も多く展示されています。
伝統的な絵画技法を重んじる官展の前で印象派は異端だった時代。芸術の世界で懸命に闘っていたドガは、恵まれないながらも懸命に生きる少女の姿に、魂に共振する何かを感じたのでしょう。よく絵画は時代を映すといいますが、コレクターもそんな背景を捉え、作品を集めていったのかも知れません。
ところで、MoMAもそうでしたが、エアコン寒すぎ。これって何とかならないものでしょうかね^o^;
ニューヨークでアートな休日 MoMA編
こんにちは、坂本澄子です。
先日、4日間ほどニューヨークに行ってきました。きっかけは1枚の絵。以前このブログでもご紹介した原田マハさんの「楽園のキャンバス」に登場するアンリ・ルソーの『夢』。どうしても本物が見たくて、いてもたってもいられなくなりました。ルソーは南のジャングルをモチーフにした作品を20点以上手がけていますが、私をバリ絵画へと導いてくれたのは、これらの作品だったのです。
思い立ったが吉日でニューヨーク行きを決めたものの、なんと、MoMA(ニューヨーク近代美術館)に『夢』はなかったのです。どこかに貸し出し中だったのか、隅から隅まで見て歩きましたが、ついにご対面はならず。とても残念でしたが、MoMAには他にもすばらしい作品がたくさんあり、アドレナリン出っ放し。建物全体がアートな空間になっており、どこを切り取っても絵になるのはさすがです。
1997年以来、20年ぶりの再訪。クイーンズに一時移転しての全面建て直しを経て、前回とはまた違った顔を見せてもらいました。今度こそ『夢』を見に、また来よっとw
次回はメトロポリタン美術館から。
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家族の肖像
こんにちは、坂本澄子です。
毎日暑いですね。先日、陽炎が立ち上る猛暑の中、横浜美術館で開催中の、印象派の女流画家、メアリー・カサットの30年ぶりとなる回顧展を見に行ってきました。
今回初来日した『桟敷席にて』は、そんな凛とした画家の性格が窺える作品です。
一方、メアリーは母子像を描いた、優しい作品をたくさん残しているんです。母と子の一瞬の表情を実によく捉えており、そうそう、子供ってよくこういうことするよねと、私も昔娘にほっぺたを引っ張られたことを思い出しました。子供を抱く母の腕は、弾けるような生命力を受け止める優しさと強さに溢れていました。そんな画家を見込んで、家族の肖像画を依頼する人も多かったそう。こんなふうに描いてもらえたらステキですよね〜。
同じように温かな眼差しを母と子に向ける画家がバリ島にいます。イ・ワヤン・バワ・アンタラ、二児の父親でもある彼は、妻と子供をモデルに多くの作品を描いてきました。砂を下地に混ぜることで、光を吸収してふんわりとした立体感を出す独特の手法が生きています。
見ているだけでやさしい気持ちになれる、まさにそんな作品。お子様とのいまの思い出を絵に残し、将来独立されるときや嫁がれるときにプレゼント、なんて、絶対ステキです。スナップ写真をお送りいただければ、サイズや構図などもご相談に応じます。お問い合わせはこちらからどうぞ。
ちなみに、私も以前、自分自身のポートレートを木炭画で描いてもらったことがあるのですが、実物より若く描いてもらえて大満足でしたw
那須で緑の休日
こんにちは、坂本澄子です。
先週のブログでLABA氏の絵をご紹介したら、無性に夏の里山が見たくなり、ドライブがてら那須に行ってきました。数年前、大好きな写真家の澤野新一朗さんが月の写真展を開催された石の美術館に行って以来、那須は私のお気に入りリストにランクイン。御用邸もある関東の伝統的な避暑地、洗練された軽井沢とはまた違った魅力に溢れています。
朝家を出てから車を走らせること2時間半。
まずは、いつも立ち寄るダイニング・カフェ「ボリジ」でひとやすみ。窓際のテーブルは雑木林に面しており、溶け込んでしまいそうなほど、一面の緑に溢れています。丁寧に入れられたハーブティと自家製スイーツをいただくと、もう至福の時間。
このお店のこだわりはアンティークの家具。使いこんで飴色になった皮や木製の椅子は、テーブルごとに違うものが置かれています。異なる個性を組み合わせて統一感を生み出すセンスはさすが。異国で集めたオブジェとも美しく響きあっていました。
休日を楽しむ心の準備ができたら、次は昭和天皇もよく訪れられたという沼ツ原湿原へ。湿原までの山道を含めて、往復一時間の遊歩道がちょうどいいお散歩コース。ニッコウキスゲや湿原ならではの珍しい季節の花を楽しみながら、たっぷり自然と対話できます。
遊歩道の中程を過ぎると、戦後の木材不足を補うために植樹されたカラマツ林に。雰囲気の違う2つの風景が楽しめるので、何だか得した気分です。私が行ったときには、湿地帯を覆うように靄がかかっており、ご覧の通り、ちょっぴり幻想的な雰囲気を醸していました。
林の中には独特の緑の薫りが漂っています。これはフィトンチットと言って、有害な微生物を寄せ付けないために木々が分泌している化学物質。健康促進やストレス解消にも効果があるそうですよ。
湿原を出たところで、かわいい赤ちゃんを連れた野生のサルに出会いました。クマも出るそうなので、そちらは要注意^o^;
こうして那須で自然を満喫した後、悩ましいのが帰りの高速渋滞。回避しようとあるとき下道に降りたら、偶然、日帰り温泉を見つけました。杉戸温泉・雅楽の湯(うたのゆ)です。
コンコンと湧き出る46℃のお湯をそのまま使った正真正銘の源泉掛け流し。内湯から出ると広いお庭。そこに、2つの岩風呂、ひとりでゆっくり寛げるつぼ湯、木々がそよぐ空を見上げる寝湯、そして、汗がじわ〜っと出てデトックス効果の炭酸風呂が配置されています。岩盤浴も温度の異なる3つのスペースがあり、女性専用コーナーもあるのでひとりで行っても大丈夫。
さらに嬉しいのは、地元のお野菜をたっぷりいただけるビュッフェ。フリードリンクも充実しており、今回のお気に入りはきゅうりとマンゴのスムージー。宮崎の郷土料理「ひや汁」もあり、汗をかいたあとの水分補給もバッチリ。
これから本格的な暑さを迎え、最近ちょっと夏バテぎみ…と思ったら、こんな休日の過ごし方はいかがですか?
夏の風物詩
こんにちは、坂本澄子です。
雨も上がり、おひさまが顔を見せてくれました。梅雨明けもそろそろでしょうか。昼間は蒸しましたが、夕方からいい風が吹いてきたので、ケンを連れてお散歩に行ってきました。
うちの近所はオリンピック施設の建設予定地で空き地になっているところが多く、草刈りをしても追いつかないほど、たくましい夏の雑草たちにしっかりと覆われています。そこは虫たちの住処。夜になると、澄んだ鳴き声がサラウンドで聴こえてきます。
先日、ラジオを聴いていたら、井上陽水さんの『少年時代』が流れて、今年も夏が来たんだなと感じました。遠い夏の日を懐かしんで綴られた言葉の数々。美しいメロディとともに染み渡っていきました。
日本の夏の風物詩と言えば、
簾の向こうの朝顔
蝉の鳴く声と麦わら帽子
おひさまと向日葵
稲の青い匂いと温んだ水の音
スイカと蚊取り線香 …
言葉が共鳴し合って、情景が次々と呼び起こされていきます。
LABA氏の『少年たちの情景』を見たときにも、同じような懐かしい風が心の中を吹いていきました。遠く離れた島どうしなのに、根っこの部分ではどこか共通することが多いと感じるバリ島です。
今年も夏がきた。そんなちょっぴりワクワクした気持ちを、この絵とともに感じてみませんか?ご注文後、3日でお届けします。作品詳細はこちらをどうぞ。
擬人化された動物たち
こんにちは、坂本澄子です。
もう随分前ですがが、大島弓子さんの漫画作品で、『綿の国星』という猫を擬人化したお話がありました。『LaLa』(白泉社)1978年5月号から1987年3月号に不定期連載
雨の日に諏訪野家に拾われたチビ猫(雌の白い子猫)が主人公で、いつか人間になれると信じているので、右の画像のような、人間の姿をして登場します。チビ猫の目を通して見た諏訪野家の人々、それを取り巻く人間社会、猫社会は、ユニークな視点で描かれ、時折顔を出す非日常は幻想的ですらあります。
私はこのお話と絵が大好きで、高校から大学にかけて繰り返し読み、今でもたまに思い出しては本棚から取り出しています。調べてみたら、今もちゃんと本屋さんで売っているのですね。
バリ島では擬人化された動物たちを多く見かけます。ウブドの観光スポットとして、きっと一度は行かれたことがあるモンキーフォレスト、ここには石を削って作られた様々な動物たちが園内に配置されています。苔むして、今にも動き出すのではないかと思うほどリアルなものも、その顔を覗き込んでみるとなんとも愛らしい。
バリ絵画では真っ先に思い浮かぶのがLABA氏。豹やリス、インコ、フクロウなどを題材に描き続け、68歳の今なお現役の画家です。同じ動物でも、それぞれ表情が違うのが毎回楽しみ。どれも好奇心いっぱいの目が特徴ですが、時にシャイであり、時には甘えん坊であったり、それぞれの性格があらわれているのをぜひご覧になってみてください。LABA作品はこちらです。
私のイチオシはこちら。一張羅の衣装に身を包み、ちょっぴり得意げなインコがなんともかわいい。緑のしっとりとした空気感があり、お部屋に飾ると、いながらにしてバリを感じることができます。こちらの作品、写真の2つの額縁からお好きな方をお選びいただけます。詳しくは作品ページをどうぞ。
新作情報:ウィラナタ
こんにちは、坂本澄子です。
飯田橋にある東京メトロの忘れ物センターへ行ってきました。またまた、忘れ物大王です。東京メトロでの忘れ物はすべてここに集まるとあって10人待ちでしたが、3人の係員の方がテキパキと応対されてました。見ているといろんな忘れ物があります。私の前のお兄さんなんて、三味線。
私がホームのベンチに忘れたのはスケッチブックでした。あまり白紙ページは残っていなかったし、作品の構想をまとめるための下書きが大半ですから、いつもなら諦めるところですが、最後の方に家族の似顔絵を描いていたのです。小さくても私にとっては大切なもの。驚いたのは、東京メトロ区間の往復の切符代を出してくれること。こちらの不注意でご迷惑をかけたのに。大事に預かってもらえて本当に感謝感謝です。
さて、もうすぐ夏。夏といえば夜。ということで、前回は幻想的な風景画に定評がある人気作家ウィラナタの「満月の夜に」をご紹介しました。満月の夜の祭礼という、同じテーマでありながら、雰囲気の異なる新作ができました。
この絵のおもしろさは何といっても、見上げるほどのガジュマルの大樹です。バリ島の寺院には必ず大きな木があり、精霊を宿すと言われ大切にされていますが、このガジュマルは空中に垂れ下がった気根が独特な形を作り出し、ランプの光がそれを幻想的に浮かび上がらせています。
世界中のコレクターが新作を待つ、人気作家ウィラナタ。この作品も既に売約済みですが、ご注文制作を承ります。また、「バリアートショールーム」にはウィラナタ作品の在庫が2点ありますので、繊細で幻想的なタッチをぜひ実物でお確かめになってください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。
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ご注文制作の流れ・・・注文制作は高いと思っておられませんか?!
ウィラナタ特集ページ・・・完売作家ウィラナタの作品の魅力が満載!
夜の魔力に引き込まれて
こんにちは、坂本澄子です。
今週も広島の実家に戻っています。今回は意外な出迎えを受けました。湿気を含んだ夜気に乗って漂ってきたのは、甘く薫り立つクチナシの花です。実家の塀の上に浮かび上がるように、真っ白な花をたくさんつけていました。
「この木、前からここにあった?」
思わずそう尋ねると、私が子供の頃からそこにあったけれど、毎年夏が来る前に植木屋さんが短く刈り込んでしまっていたのだと母。花が咲く前にもったいないとご近所の方に勧められて、数年前からつぼみを残してもらうようにしたのだそう。
そういえば、帰省するのはいつもお盆とお正月。6月に帰ることなんてなかったから気がつかなかったのですね。灯りに照らされて白く浮かび上がる姿は、清楚な外見とは裏腹に妖艶な美魔女のようでもありましたw
夜の持つ魔力に魅せられたのか、無性に会いたくなったのが、ウィラナタの『満月の夜』です。もうすぐ夏がやってくるという今の季節にぴったりの作品です。
湿った草の匂い
椰子の葉がサラサラとそよぐ音
蛙や虫たちが啼く声
ランプの暖かな光
これから始まる厳かな祈り
それらが美しく調和した世界が、額縁に切り取られた窓の向こうに広がっています。
60cmx80cm、オーク材のアンティーク調額縁に入れてお届けします。横に立つとこのくらい、しっかりとした存在感のある作品です。詳細はこちらをどうぞ。
ちょっと手を加えるだけで
こんにちは、坂本澄子です。
ご注文制作でソキさんに描いてもらった『バリ島』が完成し、先日お客様に発送しました。梅雨のモヤモヤ気分を吹き飛ばしてくれる、あかるーい、エネルギーいっぱいの作品に仕上がりました。
ソキさんの人気作品『バリ島』、これまで幾度も見てきましたが、本当に一点一点違うのです。今回の作品は海と空の青さがとてもシャープで、陸地が海から浮き上がるような勢いがありました。さすが肉筆ならではの迫力、元気をたっぷりいただきました!
さて、このところ傘の出番が増えてきました。やはり、梅雨ですものね。ところが…、何をかくそう、私は忘れ物の大名人。傘なんて、いったいどれだけなくしたことか^o^; だから、いつも傘はビニール傘と決めているのです。電車で扉の上にあるモニターを見ていたら、そんな私にぴったりのCMをやっていました。
取っ手にマスキングテープを巻いてニスでコーティングするだけで、傘立てでひとめで自分の傘だとわかるし、ビニール部分に油性のカラーペンでお絵描きすれば、雨の日もお出かけも気分は明るくなります♬ ちょっと手を加えるだけで、モノに対する思い入れはぐっと強くなりますよね。忘れん坊さんのあなたもぜひ試してみては。私もさっそくやってみます。
自分ならではの何かによって、思い入れがぐっと深くなる。これは絵にも同じことが言えます。思い出の場所や大切な物を描いてもらったり、自分自身や大切な人を描いてもらえば、それはもう間違いなく「ただの絵以上の存在」になります。
冒頭ご紹介したソキさんの「バリ島」も、あなただけのカストマイズが可能なんですよ。例えば、『バリ島』に一番好きな場所を描き込んでもらう。自分自身を描き加えてもらうなんてリクエストも、ソキさんなら喜んで叶えてくれます。
そんな特別な一枚をオーダーしてみませんか。詳しくはこちらをどうぞ。
生活に息づく模様たち②
こんにちは、坂本澄子です。
生活に息づく模様たち②は、バリで見つけた模様をご紹介します。
棚田の景観で有名なジャティルイから戻る途中、ウブド郊外のとある民家で見つけた模様です。
日本のブロック塀にもところどころにこういった透かし模様がありますが、バリ島で見つけたそれは、青銅色をしたタイルで、花びらのような模様がレンガの壁によく似合っていました。
お次はウブドのジャラン・カジェンで見かけた民家の門です。民家の門の上部には、必ずと言っていいほど、目をクリッと見開き、口をガッと開けた像が彫り込まれています。これはボマという魔除けの神様。よく見ると、上の写真の塀の上にも、ボマがちゃんといるのですよ。どこかわかりますか?
バリ島の門は狭く、入ると悪霊よけについたてのような壁があります。通りから見ると、ちょうど目隠しになっていて、石を掘って作った模様が幾重にも重なった美しい門の向こうにどんな風景が広がっているのだろうと、想像をするのも楽しい。
間違って入ってくる観光客がいるのでしょうね。柱に「PRIVATE」と注意書きがしてありました。
最後にご紹介するのは、バリの先住民と言われるトゥンガナン村に伝わる伝統的な織物、グリンシンです。「かすり」模様の一種ですが、縦糸だけでなく横糸もあらかじめ染めてから、2つの糸の位置を合わせながら模様に織り上げていく珍しいもの。複雑な作業を繰り返し、何年もかけてようやく完成する貴重な織物です。
グリン(病気),シン(なし)、無病息災を意味する魔除けとして、舞踊の衣装などに使われており、その幾何学的な模様には意味があるのだそうです。
真ん中の菱形のような文様は,村の四方にある門を表し,その四方位には村を守るサソリが描かれています。他にも、花,果実,馬,犬、寺院,家,星,影絵人形などが見られ,四角形でグラフ用紙のマス目を埋めたような形で構成されています。
こんな伝統的な模様を絵画の中に忠実に再現しているのが、画家のアンタラ氏。背景には彫刻などにもよく用いられるバリ島の草や花の模様が描かれています
下地に砂を混ぜて作る絵肌が光の効果を作り出し、人物がふんわりと浮かび上がって見えますよ。
絵を通じて、バリの伝統や自然と共存する生活を伝えていきたいと、画家としてのチャレンジを続けるアンタラ氏の特集ページはこちらをどうぞ。