生活に息づく模様たち①
こんにちは、坂本澄子です。
今年はどうも空梅雨になりそうですね。どんよりと垂れ込めた雲を見ると、
最近、日々の生活の中で見かける模様が気になってます。
一方、2階、3階(サンルームがあります)の家族のためのスペースは、宮内庁内匠寮の職人たちが担当しました。
窓枠やラジエーター(暖房器具)カバーなど、部屋ごとに異なる模様が施され、妃殿下みずからデザインされたラジエーターカバー、金平糖みたいなかわいい形のランプシェード、さらには排水溝の蓋金具に至るまで、「あら、こんなところにも」なんて、新鮮な発見が次々とあります。
個人のお宅に招かれたような感じで、アート鑑賞できるのもこの美術館ならでは。7月5日まで「メディチ家の至宝展」をやっています。メディチ家の栄枯盛衰の歴史を紐解きながら、肖像画や宝飾品を間近に鑑賞できます。ランチは新館の緑いっぱいのテラスで、そしてアートを楽しんだ後はすぐお隣の自然教育園の散策がオススメ。梅雨の合間をまいっぱい楽しめますよ!
次回はバリ島で見つけた素敵な模様をご紹介します。
アンモナイトの夢
こんにちは、坂本澄子です。
バリ絵画を扱いながら、私自身も絵を描いていることについて、お客様から励ましのメッセージをいただいたり、展覧会を見に来ていただけることもあり、いつも嬉しく思っています。そこで、今日から開催の二科東京支部展のご案内をさせていただきます。
秋の二科展に先立ち、東京支部所属の作家たちの展覧会ですが、会員・会友の作品から公募で選ばれた若い作家さんの作品まで、毎年100点を超える展示で賑わいます。詳しくはこちらをご覧ください。
今回、私が描いたのはこちら、『アンモナイトの夢』という50号の作品。
ある日、インターネットで調べ物をしていたら、ちょっとしたキーの打ち間違いから、とても美しい石の結晶や化石の写真に出会うことができました。人間が生まれるずっと前、数億年という気が遠くなるような時間を経て掘り出されたアンモナイトの化石に、なぜか釘付けになってしまったのです。
いつも大地に心惹かれます。東京に住んでいると土を見ること自体が珍しいですが、硬いアスファルトの隙間から押し出されるように生えている雑草を見ると、覆い尽くされた地面の下に確かに存在する大きな力を感じます。
アンモナイトが棲んでいた海の底が隆起して地表に押し上げられ、様々な地殻変動を経験した長い時間、彼女はいったいどんな光景をみてきたのだろうかと想像してみました。海の底から見上げた明るい海面、大地、そして満点の星空。そんなものが頭の中に浮かんでは消え、いつしかアンモナイトに同化していました。
ところで、私がバリ島を好きな理由もちょっと似ています。自然と人が共存している…というよりも、大きな自然の中に人間が紛れて生活している、そんな感じです。以前、ガムラン奏者の櫻田素子さんも同じようなことを言われたことがありました。大編成のガムラン楽隊はゴーっと地面を揺るがす風の音、竹のリンディックはピチピチと地面が弾むような音。そんなふうに地面に近く生活し、互いに呼応するのだそうです。
地面に手をあててその息遣いを感じてみたくなる、そんな作品に仕上がっていたらいいなあと思います。
最近読んだ本から
こんにちは、坂本澄子です。
ごめんなさい、10日もご無沙汰してしまいました。
実は広島の実家に帰っておりました。滅多に電話をかけてくることのない母から、突然弱った声で、「ふたりとも具合が悪くて…」と連絡があり、さすがに慌てました。その日は朝から出かけていたのですが、着替えも仕事の道具も持たず、そのまま東京駅へ直行、新幹線に飛び乗りました。
おかげさまでそれほど深刻な状態ではなかったのですが、両親とも結構な高齢、父が骨折をして自分では何もできなくなったことに端を発し、負担のかかった母もついにダウン。ほんの数ヶ月前の元気な姿は見る影もなく、親が年をとるということはこういうことなのかと、じわじわ来た次第です。
大学から親元を離れたので、一緒に暮らしていた時間は短く、「便りがないのはよい知らせ」といやみを言われるくらい、淡々とした親子関係だったと思います。これからはもう少し一緒にいる時間を増やすようにという、神様からのメッセージなのかも知れませんね。皆様もどうかご両親を大切になさってください。
いろいろ大変でしたが、いいこともありました。病院の待ち時間、行き帰りの新幹線で、かなり本が読めました。
特に面白かったのが、原田マハさんの『#9 ナンバーナイン』、上海を舞台にした大人の恋愛小説です。かつてMoMA(ニューヨーク近代美術館)に勤務し、キュレーターでもある原田さん。モダンアートの取引に関わる舞台裏が丁寧に描かれています。中国奥地の寒村に生まれた画家が描いた、心に染み渡る風景は、ウィラナタの棚田の風景を思わせました。「#9」というタイトルの意味は何か、急展開していくストーリーは、終わりに近づくほど、2行一緒に読んでももどかしいくらい。アート好きなあなたにオススメですよ〜。
帰りの新幹線に乗る前に、駅の本屋さんの新刊コーナーでパッと手に取ったのが、村上春樹さんの『村上ラジオ3』。随分昔にイラストレーターの安西水丸さんとコラボされた、『ランゲルハンス島の午後』という絵本がありましたが、この『村上ラジオ』も洗練された文章と素朴なイラストがいい感じで絡み合っています。2000年3月からアンアンで連載されたエッセイが単行本化されたシリーズ第三弾。アンアンの読者=若い女性と村上春樹さんって、なんだかあまり結びつきませんが、余計な雑念がない分、自由に書きたいことが書けたとご本人談。何気ない日常(といっても、多くは海外が舞台なのでオシャレなのは羨ましい限り)の光景が独自の視点で描かれています。
あなたは最近どんな本を読まれましたか?
画家とのご縁を作るお手伝い
こんにちは、坂本澄子です。
5年ぶりに訪れたバリ島でとても素敵な休暇を過ごされたというM様から、お便りをいただきました。
以前お願いしたガイドさんが素晴らしかったので今回もまたお願いしたい。でも、名刺も残っておらず、覚えているのはイッポンさんという名前だけ。インターネットで調べているうちに「バリアートショールーム」に辿り着いたと、初めてメールをくださったのは3月のことでした。
私も3年前イッポンさんにガイドをお願いしたことがあり、その時ブログに書いていたんですね。それをご覧になったM様からイッポンさんに連絡をとりたいと、ご相談があったというわけです。
イッポンさんは日本人の奥様を持ち、その流暢な日本語と礼儀正しさには、敬意を表したくなるほど。
現在はウブドのヴィラのマネジメントの方が忙しく、しばらくガイドのお仕事はしておられなかったそうですが、M様との再会をとても喜ばれ、ガイドも引き受けてもらえたそうです。一緒に旅行されたお母様もバリをとても気に入られたそうで、来年もまた行きたいと今から楽しみにされています。
ちなみに、イッポンさんの名前のいわれは、日本で仕事をされていた頃、時々友人に「タバコをイッポンちょうだい」とおねだりしていたので、いつのまにか親しみを込めてそう呼ばれるようになったのだとか。
バリ島への旅を重ねるうちに、最初は風景や文化に惹かれていたのが、次第に、人との繋がりがバリへの親しみを増す理由になってきますが、M様の場合もまさにそれですね。
絵の注文制作もある意味、バリ島の画家との縁を育むものだと言えるのではないかと思います。数ヶ月もの間、画家はほぼ毎日その作品に向き合い、注文主が想像する以上に、言葉にならない思いを注ぎ込んでいます。絵を見るたびに、エネルギーを感じたり、穏やかで優しい気持ちになれたりするのは、きっと画家のメッセージが波動となって伝わってくるからじゃないかしら。
そんなバリの画家をより身近に感じていただきたくて、制作状況をお知らせする写真には、できるだけ画家も一緒に写ってもらうようにしています。また逆に、納品時にお客様からいただいた感想は、画家に伝えるようにしています。
バリ島を再び訪れるように、同じ作家にリピートでご注文くださる方もあります。こんなとき、お客様と画家とを繋げる小さなお手伝いができたのではないかと感じて、本当に嬉しくなります。
「第9回バリアートサロン」、開催がいよいよ一週間後に迫ってきました。今回はご注文制作の7つの実例をご紹介しながら、その魅力をお伝えしたいと思います。。まだお席がありますので、5月29日(日)11時〜、ご参加をお待ちしています。詳しくはこちらをどうぞ。
作品にこめられた物語
こんにちは、坂本澄子です。
注文制作の愉しみ、第二回は芸術家らしい画家のご紹介です。ウィラナタ。次々と注文が入り、手元に作品が残らないと嘆いている、なんとも羨ましい売れっ子作家です。
独特な世界を持ち、そのいさぎよさは時に気難しい印象を与えることもあります。それでも、彼の作品に対する考えや思いの深さを知ると思わず納得してしまう、それがウィラナタの魅力なのです。
あるお客様からのご注文制作でこんなことがありました。満月をテーマにした作品です。
お客様は真夜中に近い暗い風景をイメージされており、完成間近にお送りした写真をご覧になって、月の明るさが少し気になられたようでした。
「ウィラナタさんの考えを訊いてみてもらえませんか」
すぐに連絡を取りました。そしてわかったのが、ウィラナタは満月の風景を誰よりもよく知っているということでした。
日没とともに湖に出かけては夜通し釣りをするのが何よりも好きな風流人。放っておけば何日も続けて出かけ、そのうち家族から苦情が出るほど。だから、時間とともに移ろう空はもちろん、水に映った月や茂みに潜む虫たちの気配など、どれも実際の風景から五感を通じて感じ取ったものなのです。
さらに、心象風景画として、物語と情景描写が一致しているのも彼の作品の特徴です。この作品は、日没間もない8時頃、仕事を終えた父と子が空に明るさが残る畦道を帰る場面だと説明してくれました。改めて作品を見てみると、神々しいばかりの月の青い光に対して、手前のランプの光に親子の関係になんとも言えない温かさを感じました。
「だから、この空の色は自分としてはパーフェクトだと思っている。逆にそれを変えてしまうと、作品全体のコンセプトが壊れてしまうんだ」
こんなやりとりを通じて画家の思いを知り、完成した作品にさらに愛着を感じていただいたできごとでした。こんな経験も注文制作ならではの醍醐味、次はぜひ真夜中の満月をテーマにいかがでしょうか。
「第9回バリアートサロン」5月29日(日)11−12時@東京・有明はこういったご注文制作の実例をいくつもご紹介しながら、世界でただ一つの作品ができあがっていく愉しみをお伝えしたいと思います。詳しくはこちらをどうぞ。
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画家と作りあげた至福の時間 - アンタラ
こんにちは、坂本澄子です。
画家にはいろんなタイプがいます。自分の作風を守り、深みを増していく画家、新しいものにチャレンジし続ける画家。画家としての持ち味はもちろん、人となりに触れられるのは、依頼して描いてもらうときなんです。そこで、3回にわたって、注文制作を通じて感じた、3人の画家のそれぞれの魅力をお伝えしたいと思います。
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一昨年の秋のバリ絵画展で展示した「黄色い絵」を覚えておられるでしょうか。あの作品を描いてもらうまで、アンタラさん=人物画という印象がありました。人物を描くことを通じて、バリの伝統のすばらしさを伝えたいというのが、彼の制作に対する思いでしたから。ところが、その少し前、アトリエをウブド郊外に移した頃から、絵が変わってきました。こんなに風景画もうまい人だったんだと、正直驚いたくらいなのです。
海を描いても、田園風景を描いても、細かい描写にも決して手を抜くことがなく、ひとつの絵にとことん向き合う、忍耐強く静かな情熱は、アンタラさんの人柄そのものでした。そして、絵が完成に近づいたある日、私はひとつの相談をしたのです。
「背景に川や木立を加えてみてはどうでしょうか」
空に溶け込んでいくようにまっすぐに続く田園風景は幻想的ですらあり、素晴らしいと感じました。しかし、その一方で、日本人のお客様を考えたとき、背景に変化がある方が好まれると思ったのです。
私の提案をアンタラさんは快く受け止めてくれました。買い手に求められてこそ、仕事として成り立つ。自分のスタイルを持ちながらも決してひとりよがりにならない、プロとしての意識の高さを感じた瞬間でした。
そして出来上がったのが、絵画展で見ていただいたこちらの作品だったというわけです。
絵画展では堂々の看板作品になってくれましたが、会期中に販売することは叶いませんでした。アジアのコレクターたちが新作を待つ人気画家ですから、すぐにこの作品にも引き合いがきて、バリアートショールームで買い取るか、お返しするかの選択を迫られることとなりました。
結局、大きさを必要とするこの作品は、お客様のお部屋に合わせてご注文制作を受ける方がよいと考え、作品を手放しました。しかし、アンタラさんと率直な意見を交わしながら、ひとつの作品を一緒に作り上げたという充実感と画家への信頼は、今日に至るまで色褪せていません。今度はその時間をお客様とご一緒に味わいたいと、恋い焦がれる毎日です。
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「第9回バリアートサロン」ではこんな実例を交えながら、ご注文制作の楽しみをお伝えします。5月29日(日)11:00〜12:00@有明サロン、申込みしてくださった方に詳細のご案内をお送りします。お申込みはこちらからどうぞ。
<関連ページ>
アンタラ氏のアトリエ youtubeで公開中
ご注文制作の流れ ご注文から完成まで
第9回バリアートサロン 「注文制作を成功させるコツ」
こんにちは、坂本澄子です。
一般の住宅に対して、注文制作を手がけるようになったのは印象派の画家がはじまりと言われています。それまで、絵画のパトロンは教会や貴族だったのですが、市民革命と
住宅が密集したパリ市街は薄暗い住居が多く、シャンデリアや鏡を使って、部屋に光を取り込む工夫がなされていましたが、イーゼルを戸外に持ち出し、目に映る感じるままの風景をキャンバスに写し取った印象派の作品は、明るい陽だまりのような空間を作り出したというわけなんです。
「バリアートショールーム」もご注文制作によって、世界でただひとつ、あなただけの絵作りのお手伝いをしています。制作段階から関わることで、作品に対する思いが何倍にもふくらむ一方で、実際の絵を見て購入するのと違い、どのようなものができあがってくるのか…、ご不安もありますよね。
そこで、「第9回バリアートサロン」は、これまでお客様からご依頼いただいた注文制作の中から、よくある7つの実例をご紹介したいと思います。
画家は、ソキ、ウィラナタ、ラジック、ラバ、ガマ、アンタラ。バリの伝統的なモチーフから、花鳥画、風景画、そして、過去の作品を参考にしたものから、お客様のイメージを形にした全く新しい作品までさまざまな事例ができました。
そういったお手伝いをすることができたのは、「バリアートショールーム」自身、既にある作品を仕入れるだけでなく、画家と直接やりとりをしながら制作を依頼し、できあがった作品を日本で紹介するという経験を、少しづつ重ねてきたからではないかと思っています。私の勉強不足で画家に迷惑をかけてしまったこともありました。そんな中で学んできたものをお伝えできればと考えています。
バリ絵画のいいところは、資産家でなくても手が届くところです。いつかは注文制作をとお考えの方は、ぜひこの機会に参加してみませんか。少人数の気軽な集まりです。
「第9回バリアートサロン 注文制作の実例とイメージを形にするコツ」
場 所:バリアートショールーム 有明サロン
東京都江東区有明1丁目2−11
ゆりかもめ「有明テニスの森」駅 徒歩7分
りんかい線「国際展示場」駅 徒歩16分
日 時:5月29日(日)11:00〜12:00
展 示:風景画, 花鳥画, 風俗画から、注文制作をお受けした画家の作品を中心に
事前登録制につき、お申込みはこちらから。お待ちしています!
ご注文制作についての詳細はこちらのページもどうぞ。
バリ島の昔話から
こんにちは、坂本澄子です。
ある方から、こんなバリ島の昔話を教えていただきました。
昔、バリのジャングルに、ゲッコー(トッケイヤモリ)
ある晩、ゲッコーは、
そこで翌日、王さまがホタルに訳を聞きに行くと、ホタルは、
そこで、王さまは今度はキツツキに訳を聞きに行きました。
キツツキは、
その後、王さまは、ふんころがし、水牛、と訳を聞きに行き、
雨と話をするために、バトゥール山に登った王さまは、
山を降りた王さまは、文句を言っていた動物たちを集め、
こうして、今のバリがあるのです。
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最後のくだりを読んで、いかにもバリらしいいいお話だと思いました。
バトゥール山はバリ島の北東部にある標高1,717mの活火山です。キンタマーニ高原と言った方が聞き覚えがあるかも知れませんね^o^; 噴火でできたカルデラ湖のバトゥール湖を眼下に眺める景色は、ご存知バリ島の観光名所のひとつとなっています。
バリ島では北部の山岳地帯に降った雨が地下水となり、南部の平野部に湧き出ています。その水を公平に各田んぼに分配する仕組みをスバックと言い、もう1000年以上前から続く水利組合です。これがあるおかげで、バリ島では古来水をめぐる争いはほとんどなく、豊かな水と肥沃な大地は多くの恵みをもたらしてきました。
このお話はそんなバリの素朴な暮らしを表現しているように思いました。
ところで、バリの暮らしを題材に絵を描く画家は多くいますが、バリ絵画の伝統技法を踏襲しながら、独自の作風を確立し、多くのファンをひきつけているといえば、やはりアリミニでしょう。
こちら、『ハヌマンの誕生』もヒンドゥ神話の場面とバリの暮らしが融合され描かれています。青く清らかな水が、山々に降り注ぐ恵みの雨を思い出せてくれますね。
アリミニの原画のご購入はこちらからどうぞ。
緑にいだかれた午後
こんにちは、坂本澄子です。
ゴールデンウィークですね。ウブドにもにわかに色白の日本人が増えたそうです。このところ円高が進んで、ちょっとラッキーですね^o^
私はというと、初めて新潟に行ってきました。ゴールデンウィークの10日間、「大地の芸術祭」の里 越後妻有2016春が開催中です。
この芸術祭は3年に一度開催されるアートトリエンナーレで直近は昨年開催されました。開催年には列ができるほどの人気作品をゆっくりと楽しめるのが魅力です。
メイン会場の越後妻有里山現代美術館(キナーレ)はモダンな建築で、一面に水を張った中庭をぐるりと取り囲むように設けられた展示室では、モダンアートが楽しめます。
電車の車両をイメージした建物、廃校になった小学校の体育館を活用した倉庫美術館など、各会場共それぞれに面白かったのですが、一番いいと思ったのは、光のアーティスト、ジェームズ・タレルの「光の館」でした。こちらは2000年の回に制作されたものですが、私にとっては、昨夏、瀬戸内海の直島の地中美術館(安藤忠雄設計)で、その不思議な光景にすっかり魅了されて以来、2度目の出会いとなりました。
この「光の館」は瞑想を行う場所として、タレル自ら設計を手掛けた和風建築です。
一番の見所は2階にある12.5畳の和室。屋根がスライドして天井にぽっかりと四角い穴が開くのを、畳の上にごろんと横になって鑑賞できます。
私が行ったときは曇り空でしたが、雲が浮かんだ青空だと、見上げているうちに、逆に空を見下ろしているような錯覚に陥り、落ちそうな気分になるのだそうです。
ところで、この「光の館」には宿泊プログラムもあるのです。
1階にはご覧のような広いお風呂があり、夜になると浴槽にぐるりと埋め込まれた光ファイバーが点灯し、水の中に光の空間ができる仕掛け。
また、先ほどの和室の天井開口部にも秘密が。時間と共に色が変化する間接照明が仕込まれているのです。すると目の錯覚で、空の色まで変わって見えるのだそうです。その他にもいたるところに光の仕掛けがあり、一晩かけてその魅力をたっぷり楽しめるというわけです。
周りはご覧の通り回廊になっており、溢れるような新緑に包まれています。白い雪をかぶった谷川連峰を遠くに眺め、光の移ろいを感じているうちに、自分自身も自然の一部に溶け込んでいきます。そんな時間は、ウブドにいるときと似ています。
次回はぜひ泊まりで来たいと思いました。
バリ芸能の口伝術
こんにちは、坂本澄子です。
先日、素晴らしいガムラン演奏とバリ舞踊を楽しませていただきました。
演奏をされたのは、以前このブログでもご紹介した櫻田素子さん。今回はリンディックという竹でできた木琴のような形をした楽器です。少し高めの、コロコロと弾むような音色。阿佐ヶ谷のバリ舞踊祭でも素晴らしい踊りを見せてくださった荒内琴江さんと高橋恵美子さんが加わり、濃密なバリ空間となりました。
櫻田さんのお話で特に興味深かったのが、バリ島でのガムランの教わり方です。
バリの芸能は基本的に口頭伝授。先生がまずお手本を見せてくれるのですが、ピアノ教室などでよくある、楽譜を見ながら、「じゃあ、まずはここまでやってみましょう」と細切れに進めるのではないのだそう。
延々とノンストップ、「そんなに覚えきれないよ~」という状態になりつつ、先生の方もとことん付き合ってくれるのだそうです。
朝、暑くなる前に先生のお宅に伺い、途中お昼を食べに帰り、午後にまた再開。そんなレッスンを何日も重ね、「滞在中に覚えきれないのでは…」と不安がよぎるある日、ふとできるようになる。自転車に乗れるようになるのと同じで、一度身につくと忘れないのだそう。その曲とよい関係を作るために必要な時間なのですね。効率が重視される昨今、何事にも必要な時間があるのだと、大切なことを思い出させてもらいました。
必要な時間をたっぷりかけるのは絵画の世界も同じ。細密画『少年たちとケチャダンス』はA4程度の小さな作品ですが、画家のライさんは1ヶ月以上もの時間をかけて、この作品に向き合いました。篝火に照らされ赤く染まった少年たちの顔はひとりひとり異なり、葉っぱの一枚一枚まで丁寧に描かれています。
時間をたっぷりかけてもお値段はとってもリーズナブル♪ そこもまた魅力ですね。
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ライ作品ページ 細密画で有名なクリキ村在住の画家