完成!ガルー新作『朝のセレモニー』
こんにちは、坂本澄子です。
今日はバリ島最大の祭礼のひとつ、ガルンガン。善が悪に打ち勝ったことを祝い、先祖の霊が降臨するお祭りで、一斉に各家の前にベンジョールと呼ばれる竹飾りが立てられます。それはもう壮観ですよ。
バリのお母さんたちは豚を屠り、お祭りのご馳走を作ったり、お供え物の準備をしたりと、ここのところずっと大忙しだったことでしょう。
さて、今日は幻想的な心象風景画で世界を魅了する女流作家、ガルーの新作のご紹介です。
そう言って、そっと見せてもらったのが11月の半ば。その時はまだ6〜7割程度の完成度といったところでしたが、目の前に高い椰子の木がそびえ立つ、ちょっと変わった構図を見ただけで、
横幅3mの大作を始め、
ウブドも近年開発の波が押し寄せ、のどかな田園風景や伝統的なライフスタイルは次第に変わりつつあります。そんな様子に目の当たりにし、この美しい風景がいつまでも続いてほしいと、切なる願いを込めて描かれた作品です。
では、全貌をご覧ください。
コントラストのある描き方をしているため、少し離れた場所から見ると奥行きのある風景画として楽しめます。そして、近づいてみると、物語の場面のような繊細な描写にぐいぐいと引き込まれていくんです。グリコじゃないけど、まさに二度おいしい作品。
この作品、ぜひ実物をご覧いただきたいのですが、次回絵画展は春になるため、ご希望の方には個別に内覧会をご案内します。こちらのフォームからお申し込み下さい。
それにしても、ガルーさんってステキですよね。女性の私から見てもうっとりしちゃいます〜。
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バリ絵画のあるオフィス③ 絵を替えてリフォーム気分
こんにちは、坂本澄子です。
4周年記念感謝セール、おかげさまで対象作品の多くをお買い上げいただきました。残りわずかとなりましたが、まだよい作品があります! またとない価格で早い者勝ち、さっそく「気軽に飾れるバリアート」のページをチェックしてみてください。
さて、今日は以前このブログでもご紹介した、東京・銀座近くにオフィスを構える「薬袋(みない)税理士事務所」様の続編をお届けします。
オフィス用に作品3点をお買い求めいただいたのが2年半前。応接室には、朝のひんやりとした空気が伝わってきそうな、棚田の風景画を飾っておられました。あるとき、バックオフィスにあった、森に棲むヒョウと入れ替えてみたところ、明るい緑がモノトーンの室内に意外に映えることがわかり、以来3点をローテションしていたそうです。
「絵が変わるだけでちょっと新鮮な気分が味わえるんですよ。お客様と話しながら、ふと視界の隅に絵の色合いが入ってくると、ああ、いいなあってね」と、取締役の薬袋様。ご自身がリラックスされることで、相続などで悩まれて来社されるお客様の緊張感もきっとほぐれていることでしょう。また、二度、三度と来社されるお客様もあり、応接室にお通ししたときに、「あれ、前と違う」と思っていただければ、ちょっとしたリフォーム代わりにもなります。そのため、もっと違う絵も飾ってみたいというお考えをお持ちでしたが、
「前に買った絵をどうするかという問題がありました」
確かに壁のスペースは限られていますし、外した絵を置いておくと言っても…
今回風景画2点を追加購入いただくにあたり、お役に立てたのが「下取りサービス」です。バリアートショールームで作品をご購入いただくと、以前お買い上げいただいた作品を下取りするサービスを始めました。(詳しくはお問い合わせください)
絵を架け替えた応接室がこちらです。
ウィラナタの「光の風景」。午後のやわらかな日差しがじんわりと染み込んでくる感じのこの作品、まるで窓から外の景色を見ているようです。お打ち合わせしながら、バリにいる気分を味わっていただけるといいなと、嬉しく拝見しました。
もう一点はガルーの「朝のセレモニー」。こちらは税理士やスタッフのみなさんがお仕事されるバックオフィスです。
「そのうち、応接室のもう一方の壁に移動して、2つの風景を眺められるようにしてもいいかなと思っています」
と、早くもプチ・リフォーム計画が進行中のようです。
え、ヒョウの行方ですか? ちゃんとエントランスでお客様をお迎えしていますよ!
幻想風景画、価格改定の本当のわけ
こんにちは、坂本澄子です。
発表!今年の人気アクセスTOP10
こんにちは、坂本澄子です。秋も徐々に深まってまいりました。秋といえば…新米。明太子でもあろうものなら、困ったことにご飯が何杯でもいけちゃうんですよね〜。バリの人もお米大好き。ご飯にサンバルがこれまたよく合うんです。これはかなり危険^o^;
食欲はさておき、芸術の秋です。11月の第6回バリアートサロン(11月29日)は、今年たくさんのアクセスをいただいた作品を展示・販売します。作家たちの制作への思いや作品解説もたっぷりお伝えします。今年最後の「バリアートサロン」に是非お越しください!
ところで、人気作品と一口に言えども、たくさんの人がアクセスする作品、じっくり時間をかけて見られる作品、もう一度戻って二度見される作品など、人気の中身はさまざま。人数、回数、時間などを元に集計しました。
それでは、2015年アクセス人気ランキングTOP10の発表〜!画像をクリックすると作品全体が、また、以前ブログでご紹介したそれぞれの作品の見どころを「詳しくはこちら」からご覧になれます。よろしかったらあわせてどうぞ!
11月の第6回バリアートサロンでは、これらの他にも上位作品を展示いたします。
ところで、人気のある作品ばかりがよい作品とは限りませんよね。画家と見る人の感性がぴったり合った時に感じる「やっと会えたね〜」という幸福感は、人と人の出会いとまったく同じ。その気持ちをどうか大切にしてくださいね。サイト掲載の中でご覧になりたい作品がありましたら、申し込みフォームのコメント欄にその旨をお書き添えいただければ、会場に展示いたします。また、当日はバリ絵画の変遷と主要スタイルのご説明も致します。詳細とお申込みはこちらをどうぞ!
*『バリ島』SOKIは注文制作のため、展示は行いません。あらかじめご了承くださいませ。
この絵のここがおすすめ
こんにちは、坂本澄子です。
「春のバリ絵画展」記念セールもあと2日となりました。美術館所蔵の著名作家の作品など、10万円以上の作品が10%OFF。普段セールを行わない作品ですので、この機会をどうぞお見逃しなく!
今日はその中から5作品を選び、私のおすすめポイントをご紹介したいと思います。どうぞ最後までおつきあいくださいませ。
インテリアアートとして絵をお探しの方におすすめしたい作品。南国の森に迷い込んだような鮮やかな花々と鳥たち。ご家族の気持ちを明るくし、お客様との素敵な話題になること間違いなしです。金モールの額装でモダンなお部屋にもよく合います。
画家のラジック氏はイタリアの美術評論家ヴィットリオ・スガルビー氏から絶賛されるなど、国内外で高い評価を受ける実力作家です。
他とは違う作品をお探しの方におすすすめ。窓から外を眺めているような気分になれます。外の光の移ろいにより、絵の中でも日暮れが進行しているかのような不思議な錯覚。見る方向によって印象が変わるのもこの絵の魅力です。
持つならいい作家のものを、と思っておられる方には特におすすめです。バリ島のプリ・ルキサン美術館、ネカ美術館に常設展示、「うちにもある」と嬉しくなることでしょう。
細密画でいいものをとお探しの方におすすめ。衣装や光背の細かな描き込みからは、妥協を許さない画家渾身の思いが伝わり、その美しさはためいきが出るほどです。
熟練した職人が一点一点手彫りした彫刻額縁が作品をさらに引き立てているのも魅力。
サラスワティは学問・芸能の神様。大願成就を願うあなたにもおすすめします。
朝の清々しさをこれほど見事に表現している絵には滅多にお目にかかれません。特に、空の繊細な描写は早起きされる方ならどなたでも頷けるあの色合いです。手前にそびえる椰子の木と、淡く霞んで奥へと続く棚田のコントラスト。近づいても遠くからでも楽しめる作品。
ガルーはバリ島で最も著名な女流画家として、国内外に熱烈なコレクターを持ち、絵画オークションでも安定した評価を得ています。
バリ島の美人画なら文句なしにANTARA氏の作品をおすすめします。人物画は好みが分かれますので、ビビっと来た方のみ以下の蘊蓄をお読みくださいませ。
下地には砂が使われており、コルクのようなマットな質感が特徴。これには光を吸収する効果があり、人物がふんわりと浮び上がって見えます。イヤリング、バングルなどの装飾品には金箔が使われ、素朴な美しさの中にも華やかさを感じる作品です。
首都圏にお住まいの方には、セール対象作品をご自宅にお持ちして、実際に飾ってみていただくこともできます。お部屋との相性を確認の上、納得してお買い物いただければ幸いです。詳しくはこちらをご覧ください。
「春のバリ絵画展」の見どころ
こんにちは、坂本澄子です。
「春のバリ絵画展」、連日多くのお客様に来ていただき、ありがとうございます。50点の展示に「見応えあるね」と言っていただくと、とても嬉しいです。
お客様からお花をいただきました。花瓶に入り切らないほど立派な花束。そこで、道往く人を愉しませるバリ流のおもてなしを真似てみました。ちょっと幸せな気分です。
さて、今日は「春のバリ絵画展」から、「お客様の足がとまる作品」をご紹介します。作品名をクリックすると、作品詳細がご覧になれます。
入ってすぐに足をとめられるスポットがこちら。インテリアアートとしての華やかさ+10万円という値頃感には、ちょっと心くすぐられますよね。
あるお客様、横から透かす様に見ながら、「これは版画ですか?」
「いえいえ、一点物のアクリル画です」
これは見飽きない作品です。バリ島の中に、結婚式あり、火葬式あり。闘鶏に、ケチャダンスに、ガルンガン。バリ島の文化・芸能がぎゅっとつまっています。
「ソキさんはヒロヤマガタを意識されてるんですか?」
確かに、人がたくさん登場してポップな色彩という意味では似てますが…
「’70年代に一世を風靡し、現在もファンの多いヤングアーティスト・スタイル。その原型はバリ島の緻密な伝統絵画から来ています。鮮やかな色使いはオランダ人画家、アリー・スミットがもたらしたものなんです」
「神々に捧げる舞」DJUDJUL と「芸能の神様サラスワティ」DIATMIKA
お隣どうしに飾った作品、それぞれの衣装のきめ細かな描写に見入ってしまう人の多いこと。実際、うっとりするほどきれいです。
「一枚の絵を仕上げるのにどのくらいかかっているのですか?」
大抵この質問をいただきます。
「この大きさだと2〜3ヶ月、もしかすると、それ以上かかっているかも知れません。惜しみなく時間と手間、そして愛情を注ぎ込んで仕上げるのがバリ絵画。だから、優しさが伝わってくるのでしょうね」
バリ島の古典絵画を継承する作品。そのルーツは14世紀の影絵芝居の人形に遡ります。
「こんなの初めて見ました」
布地に描かれた素朴な味わいに、現代アートとは異なるやさしい魅力がじわじわと伝わってきます。
奥の展示室は昼と夜をイメージしてみました。壁の2面に濃紺の壁紙を貼って夜の場を作り、ウィラナタの2作品を。向かいの2面の昼の場にはガルーの5作品を展示しています。
手前の椰子の木と棚田の遠景とのコントラストに、思わず近寄って見たり、遠ざかったり。そんなお客様が多いです。そして一言、
「心が落ち着きますね〜」
「はい、見る人にも穏やかな気持ちになってほしい。それが画家ガルーさんの制作テーマなんです」
壁に掛けたモニターでは美しいバリの風景やウィラナタの幻想的な作品画像を流しています。この部屋では、どうぞ頭を空っぽにしてのんびりお過ごしください。
「春のバリ絵画展」は今週土曜日まで。お会いできるのを楽しみにしています!
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やっぱりガルーが好き!
こんにちは、坂本澄子です。
春のバリ絵画展、いよいよ一週間後にせまってきました。バリ絵画の代表的なスタイルから厳選した50点を準備しました。
バリ絵画の魅力は何と言っても、多彩なスタイルによる幅の広さとそれぞれの奥深さ。両者のかけ算による質の高さは、世界的にみても相当いいセン行ってるとは、会田誠さんを世に送り出すなど、現代アートで第一線を行くミヅマギャラリーの三潴末雄さん(著書『アートにとって価値とは何か』より)。同じアートと言えども、全く異なるカテゴリーの作品を扱う方からこう言われると、「ですよね〜」って感じです。しかも、バリ絵画には良質かつお求めやすい価格の作品も多く、アートビギナーでも気軽に「本物の絵のある毎日」を愉しむことができるんです。
今日も絵画展に向けて、作品の最終チェック。キャンバスが緩んでいないか、額縁の状態は…と、まだまだやること盛りだくさんです。
さて、こうして作品を見ていると、「やっぱりガルーさんの絵っていいなあ」とつくづく思います。私がバリ絵画を日本に紹介する仕事をはじめたきっかけも、ガルーさんの絵に出会ったから。「バリアートショールーム」でガルーの作品が最も多いのも、そこから来ています。一瞬の光をとらえた淡い色彩を見ていると、心が透明になっていくみたいです。
これに似た構図の彼女の作品は、棚田で有名なジャティ・ルイにある高級ヴィラの特別室にも飾ってあります。
彼女が敬愛するドイツ人画家シュピースが好んだ、異時空間をひとつの絵に表現したこの幻想的な作品も素敵ですが、画家自身がとても気に入っていると言った、『朝のセレモニー』の清々しさはまた格別です。早起きして制作活動をすることが多い彼女だからこそ、出せる色なんでしょうね。
他の作品も淡い色使いが心に染みてきます。幻想的な心象風景画の数々、ぜひ「春のバリ絵画展」でご覧になってください。
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士業オフィスにおすすめのアート
こんにちは、坂本澄子です。
バリ絵画の主要スタイルを全〜部ご覧になれる「春のバリ絵画展」、ご案内はがきが出来上がりました。会場への地図もついていますので、当日お持ちになると便利です。ご希望の方はこちらからご請求くださいませ!
今回もバリ絵画の魅力をたっぷりお伝えしたく、ひとりでも多くの方にご来場いただき、厳選した50点をご覧いただければとても嬉しいです。個人のお客様はもちろん、士業を開業されている方のオフィスにもバリ絵画がおすすめなんです。
オフィスにバリ絵画?、ちょっと意外に思われたでしょうか。 法律事務所、税理士事務所、司法書士事務所…、いずれもモダンアートが似合いそうな場所ですよね。実際、私がお世話になった事務所も、ビビッドな色彩の抽象画を飾っておられました。
確かに切れ者の弁護士さん、有能な税理士さんにぴったりのイメージですが、依頼する側から見ると、何かと重〜い問題を抱えて頼って行く場所。特に初めて訪ねる場合、ちょっと敷居が高い感じもしますよね。
以前、バリ絵画のあるオフィスでご紹介した京橋の薬袋税理士事務所さまもまさに同じことを考えておられました。南国のサロンにお迎えするような気持ちで、お客様に向き合いたいと、オフィスにバリアートを選ばれました。その意外性がお客様の気持ちをとらえ、繊細な暖かさが信頼関係作りに一役買っているそうです。
という訳で、今日は士業オフィスにおすすめの作品をご紹介します。いずれも美術館所蔵の一流作家による作品で、ひとめでいい絵であることがわかります。これなら、絵画に造詣の深いお客様の前でも恥ずかしくありませんよ。
作品詳細は各画像をクリックしてご覧ください。
「朝のセレモニー」GALUH |
「椰子の実の収穫」GALUH |
「光の風景」WIRANATA |
「少年たちの情景」LABA |
「ウィシュヌとガルーダ」ARIMINI |
「神々に捧げる舞」DJULJUL |
これらの作品は、5月18日(月)〜23日(土)の「春のバリ絵画展」で展示します。緻密な描写と繊細な色使い、ぜひ実物でご確認ください。
ちょっと不思議な世界 ひとつの絵に異時空間
こんにちは、坂本澄子です。ここ数日の寒の戻りに、一度納めた厚手のコートをまた引っ張り出しました。この週末は暖かくなってくれるといいですね。
さて、今日は少し私事を含めておつきあいくださいませ。
バリ絵画に最も影響を与えた外国人のひとり、ドイツ人画家ヴァルター・シュピース(Walter Spies)の不思議な作風に魅せられて、没後70年以上経った今も、バリ島にはシュピース・スタイルと呼ばれる幻想的な風景画を描き続ける画家たちがいます。
それらの作品の一番の特徴は、画家自身を風景の中に置き、その目を通じて見た風景を描いていることです。それによって、見る人もまた、同じ風景の中にいるように感じます。例えば、『光の風景』でウィラナタは、右手前に立つ青年として自身を表現しました。私たちは彼の五感を通じて、傾きかけた陽のまぶしさやけだるい暑さ、水田の青臭さまで感じているわけです。(画像をクリックすると作品詳細がご覧になれます)
そして、もうひとつの特徴が、ひとつの絵に複数の異時空間を描くことです。シュピースは『風景とその子供たち』『鹿狩り』といった作品の中で、木立や水を使って画面を分割しましたが、ガルーの『朝のセレモニー』では、中央に高い椰子の木を置くことで、緩やかな分断を作り出すことに成功しています。(画像をクリックすると作品詳細がご覧になれます)
そういった不思議な感じが何とも好きで、私自身もいつか身近な風景を題材に描いてみたいと思っていました。そして、ある写真にヒントを得て、最近描いたのがこちらです。
実は、この画面分割の技法、源氏物語などの絵巻物で私たちもよく目にしているんですよ。多くは物語の場面が雲によって区切られていますね。このやり方はバリ島でも『ラーマヤナー』など神話を描く際によく用いられました。シュピースはおそらくこの技法をバリ島滞在中に見て、自身の絵にも取り入れたのではないでしょうか。互いに触発されつつ、また新たなアートが生まれて行く。ちょっと素敵ですね〜。
先程の私の作品は16日(木)まで開催中の東京中美展(新宿世界堂6Fのギャラリーフォンテーヌ)に出品しています。入場無料なので、もしお近くに行かれることがありましたら、覗いてみてくださいね。優秀賞をいただいちゃいました^o^
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春のバリ絵画展 5月18日〜23日 サイト掲載作品50点すべてがここに
シュピース – 現代画家に受け継がれる熱情
こんにちは、坂本澄子です。前回に続き、今日もシュピースのお話を。
彼の残された少ない作品の中でもとりわけ有名なのは、『風景とその子供たち』ではないでしょうか。一度見たら忘れられないような強い個性を放ち、主題である牛を連れた農夫がリフレインのように何度も出て来るこの作品。1つのキャンバス上にいくつもの時空間を共存させた、シュピースの作品によく見られる技法が用いられています。
この作品を見て、音楽を感じる人は少なくないと言います。実際、シュピースは羨ましいほど多くの才能に恵まれ、ピアニストであり、作曲家でもありました。ヨーロッパの現代社会の荒廃した世相から逃れるようにバリ島にやってきたシュピースは、第二次世界大戦中にオランダ軍に敵国人として捕らえられジャワ島に抑留されるまで(その2年後に47歳で他界)の約15年間、その地に留まりました。その間に描いた作品の中で、憧れの情景を作品の中に再構成したのでしょう。
ガルーの新作『朝のセレモニー』を初めて見たとき、作品のほぼ中央手前に高くそびえ立つ椰子の木の構図に、シュピースのこの不思議な絵を思わされました。
’95年、シュピースの生誕100年の年に、招待留学でドイツに渡ったガルー(当時27歳)は、彼の作品に直接触れ、圧倒されるほどの強い揺さぶりを感じたそうです。そして、その作品を熱心に研究し、取り入れ、そして、完全に自身の作品として昇華させています。
もうひとり、シュピースに魅せられた人がいます。ガルーの実弟、ウィラナタです。
LALASATI絵画オークションのウェブサイトで、画家としてごく初期の1990年頃に描かれた水彩画の小品2点が17万円で落札されたのを見ました。(写真はそのうちの一点)ほとんど模写のように描かれたこの作品、ウィラナタが当時いかにシュピースに傾倒していたかがわかりますね。
このように初期、前期の作品がオークションで取引されているのを見ると、ウィラナタが画家として多くのコレクターたちを惹き付けていることを感じます。
シュピースの作品は戦争中に多くが失われてしまい、バリ島の美術館でも複製画が展示されているのみです。残された作品はオークションで1億円もの価格で取引され、信奉者の間では伝説的な存在のシュピースですが、同じように南国にわたったゴーギャンなどと比べると、まだまだ過小評価されているのは残念に思います。
そうそう、前回ご紹介したシュピースの著書に走り書きされたメッセージ、まだ解読できておりません。英語、ドイツ語ではないことははっきりしたので、次はフランス語の線をあたっています。ヒントがありましたら、コメントでお知らせいただけると嬉しいです。
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