バリアートショールーム オーナーブログ
2014.8.16

絵を買う楽しみ

こんにちは、坂本澄子です。 昨日は展示会でお店番をやっていました。と言っても、いつものバリ絵画ではありません^_^ 中央美術協会(1952年設立の美術公募団体)主催の『アートバザール』展、会員を中心に約40名がはがきサイズから4号サイズまでの小さな作品を数点ずつ出品し、どなたでも購入できる価格で展示販売しています。今年で8回目の開催になりますが、私は今回初出品、Facebookアルバム『バリのパレット』でご紹介した4点を展示させてもらっています。

ブログ161_アートバザール展2東京駅八重洲口から階段を降りたところに広がる八重洲地下街、ここにある「ギャラリー八重洲・東京」が会場。昨日はお盆のためか地下街を通行する人たちも少なめで、来場者の受付をしつつ、ゆっくり鑑賞できました。選考委員の先生による立派な額縁に入った絵でも1〜2万円という値付けに心は動きます。カップに無造作に生けられた花をおもしろいタッチで描いた作品、心が晴れ晴れするような青々とした夏山。金魚ばちをまんまるな目で見ているネコ。金魚の方も食われてたまるかと同じようにまんまるな目をしているのが何とも微笑ましい作品などなど、思わず買いたくなるような絵がいっぱい。あれこれ悩んで楽しい時間をたっぷりと過ごした後、最初の花の絵を購入しました。税込9000円也〜♪

私が絵を描くのは個人的な楽しみとして続けているもので、バリ絵画の活動とは異なるものですが、絵を楽しむことの本質は同じだなと感じたことがありました。

ブログ161_アートバザール展プロ、アマに関わらず、絵を描く時、作者は何かを表現したくて画用紙やキャンバスに向き合っています。実際にある風景や人物を自分の目を通して見た具象として再現する場合もあれば、自分の内部で何らかの化学反応を起こさせて再構成する場合もあります。いずれにしても、作家の内面(Mind, Soul, Spirit)から来る何らかがその作品に宿り、波動として伝わってきます。一方、受け手も日々様々な思いを抱えて生きており、そこにも波動がある。両者の周波数が合ったときに、共振する状態になるのではないかと思いました。よく、心が振えたとか、鳥肌がたったなんて言いますけど、絵という媒体を通しているだけで、実は、人と人が出会うことと全く同じではないでしょうかね、気が合ったと言いますか^_^

これは、美術館で絵を見ているだけではなかなか経験できないことです。(買おうと思えば)買って、持ち帰って、一緒に暮らせるんだという状況下だと、受け手の絵に対する心の開き方が全然違うということを、今回身を以て経験しました。

『アートバザール』展、日曜日16時までやっています。興味を持たれたら、是非足を運んでみてください。絵を買う楽しみがもっともっとフツーのことになればいいなあと願っています。

『アートバザール』展@ギャラリー八重洲・東京  (入場無料)東京駅八重洲口から徒歩2分

 

2014.8.13

満月、そしてビンタンビール

こんにちは、坂本澄子です。

スーパームーン、ご覧になりましたか? 今年最大の大きさだったそう。バリでもとても綺麗な満月が見られたそうです。

ブログ160_ビンタンレモン相変わらずの蒸し暑さですが、こんなとき思い出すのが、バリ島で飲んだビンタンビール。乾いた喉にゴクゴク飲めるライトな感じがたまりません。そのビンタンビールに新しいお味が登場しました。ビンタンラドラー ビール&レモン、通称レモンビール。バリ雑貨通販「ピュア☆ラ☆バリ」のななさんのブログでその存在を知りビックリ。さぞかし、さっぱりした酸味がリフレッシュ効果満点だろうな〜と勝手に想像していたら、実は「甘っ」という感じなのだそう。アルコールも2%とかなり低めなので、ビールの苦みが苦手な人は一度試してみては。詳しくは『バリ雑貨店スタッフたちのへんてこバリ島生活』をどうぞ。

IMG_20140612_093333さて、「バリアートショールーム」のピックアップアーティスト、今回は幻想的な光の風景でファンを魅了するウィラナタを取り上げましたよ。先月末、新作鑑賞会『光の風景』でご来場くださった皆様と一枚の作品を前に語り合いましたが、そんな彼の魅力がぎゅっと詰まった内容になってます!アトリエでインタビュー、制作風景はもちろん、今回特別にご自宅の敷地内を案内してもらい、ばっちりビデオカメラにおさめてきました。バリの民家ってこんなふうになってるんですね^o^

その夜は満月でした。アトリエに設えた神棚の前で、ウィラナタさんのお母さんと奥さんが聖水でお清めをされていました。バリにはたくさんの満月の祭礼がありますが、一番有名なのはバリの新年(ニュピ)の前日に行うムラスティ。これは神社のご神体を海岸まで運び海水で清める儀式ですが、家寺(敷地内に建てられたファミリーテンプル)で行うものもあり、満月は一族に永遠の平安をもたらしてくれるのだそうです。

そうそう。9月の絵画展『豊穣の大地』のご案内ページもオープンしましたよ。どちらもどうぞごゆっくり見ていってくださいね^_^

<関連ページ>

ピックアップアーティスト#002  光で心の情景を描き出す画家ウィラナタ

バリ絵画展『豊穣の大地』 バリ島の美術館に選ばれた作家たちの秀作展

2014.8.9

バリ絵画展『豊穣の大地 〜 Golden Harvest』

こんにちは、坂本澄子です。

ブログ159_空を泳ぐ人「これからめいっぱい夏を楽しむぞ〜」と思っていたら、暦の上ではもう立秋(8月6日)。その翌日、ふと空を見上げると、何やら秋を思わせるような雲。そのまま、じーっと見ていたら、「空を泳いでいる人」に見えたのですがどうでしょう?!わかります? あ、頭が下ですよ(7時の角度)^o^ 

ウブドもしばらく雨が続き、肌寒く感じられたそう。気温が20℃を下回った朝もあったとのことで、南半球のバリは冬なんだと実感しました。そんなこんなで、今日は少し早めではありますが、秋の絵画展のお話をしたいと思います。

 

ギャラリー開

ガルー作品展『静謐のとき』
2014年1月 日本橋ギャラリー開にて

今年はミュージアム作家を中心に新作を手がけてきました。1月のガルー作品展『静謐のとき』に始まり、ソキとお客様のコラボレーションによる注文制作『バリ島2 〜誕生、生活、死〜』、8ヶ月間完成を待ちに待ったウィラナタ新作鑑賞会『光の風景』、そして、100cmx150cmの大作を制作中のアンタラ。これらの新作をど〜んとまとめて見ていただける機会を作りました。ソキの作品もご注文主様のご厚意により特別にお借りできることになり、2つの『バリ島』を並べて展示します。

題して「豊穣の大地 〜 Golden Harvest」 。バリの大地が育むのは植物だけではありません。そこに暮らす人々の生活を支え、家族や隣人との関係を豊かにし、その一生をよいもので満たしてくれます。そして、絵画を通じて見る人たちにも、心豊かな時を与えてくれるのです。

 場所は麻布十番のパレットギャラリー。最初の展示会『青い海を描かない作家たち』でお世話になって以来、今回で4回目となりました。駅から徒歩5分の好立地、麻布という洗練された場所でありながら、下町のような温かさを感じる街で、9月18日(木)〜21日(日)の4日間開催します。一流であり、毎日にそっと寄り添ってくれる作品たちに是非会いに来てください。

そしてもうひとつ、ほぼ同時開催するのが『気軽に飾れるバリアート』展@豊洲まちなみ公園。9月13日(土)〜15日(祝)は花鳥画を中心に、9月20日(土)〜23日(祝)は伝統絵画、細密画を展示します。バリアートショールームのウェブサイト『気軽に飾れるバリアート』のコーナーで気になる作品がありましたら、是非この機会に実物を見にいらして下さい。どなたでもご自由にご覧いただけます。

<関連ページ>

ガルー作品展『静謐のとき』

ソキ注文制作『バリ島2 〜誕生、生活、死』

ウィラナタ新作鑑賞会『光の風景』

『気軽に飾れるバリアート』 5万円前後で購入できる一点物をご紹介しています

 

2014.8.6

神社でバリ祭の意外な組合せ

こんにちは、坂本澄子です。いや、暑いですね〜。東京36℃、もう溶けそうです。日陰を選んでジグザグ歩き、御陰で約束に遅れそうになり、走ると汗がドーッ(^o^;

ブログ157_バリ舞踊祭そんな猛暑の中、さらに熱かったのが阿佐ヶ谷バリ舞踊祭(8月2日、3日)。実は、阿佐ヶ谷でバリのお祭りがあることはこれまでも聞いていましたが、「神社でバリのお祭り…?!」という気持ちが拭えず、参加したのは今回が初めてなんです。で、実際に行ってみて、中身の素晴らしさはもちろんのこと、「なぜ神社?」という疑問もスッキリしました。

阿佐ヶ谷神明宮の境内にはお能も行われるという立派な舞台が設えられ、その前は手入れの行き届いた広い芝生。ゴミ一つない気持ちのよい場所がこのバリ舞踊祭の会場。バリ島でも、奉納舞踊は降臨した神々をもてなすために神社の境内で舞われます。その共通点と、しっくりと調和した神社×バリ、に納得しました。

入場無料、出演者の皆さんはボランティア。広い境内がほぼいっぱいの盛況ぶりです。屋台でビンタンビールにエビせん、テンペ(大豆を発酵させたものを油で揚げた料理、というよりおつまみに近い。納豆とチーズを足して2で割ったようなお味で、結構後をひく)、サテを仕入れ、芝生に座って準備OK。

 ブログ158_老人舞踊は生ガムランとの共演で、花びらを撒くウエルカムの舞に始まり、かわいい傘を持って舞う踊り、迫力いっぱいの闘鶏の舞「サブン・ガン・アヤム」、老人っぽい動作がなんともコミカルな「トペン・トゥア」(写真)と続きます。皆さん、毎年バリまで出かけては研鑽を重ねる踊り手さんばかりですが、10年以上やってもまだほんの入口と思うほど奥が深いのだそう。2日(土)の舞踊の〆は30分にも及ぶ「クビャール・レゴン」。最初は静かな動作で始まり、次第にその激しさを増していく迫力に見入ってしまいました。

ブログ158_ワヤンそして、土曜日のプログラム最後のワヤン(影絵芝居)。私の座っていた場所はちょうどスクリーンを横から見る位置にあたり、舞台裏の様子もしっかり見ることができました。スクリーンのすぐ裏側には大きな油壺がぶら下げられ、そこに差し込んだ木の棒に火をつけて、スクリーンを照らします。

ブログ158_影絵とシルエット板で隔てられているとは言え、語り部の顔のすぐ前で火が赤々と燃えているのは、何とも熱そう。両脇から2人がかりで火に油を注いでは大きな炎を保つ中、語り部は謡のような独特の調子をつけながら古代語と日本語を交互に使い、両手は人形を操り、さらに足は打楽器で効果音をきざみ…、「一体ひとりで何役こなしているのだろう」と思ったとき、このあかりが神社の社を照らし、幻想的な風景を創り出しているのに気づきました。芝生で見ていると涼しい風が。

その夜、バリ祭で可憐な舞を披露された舞踏家のNさんから、こんなメッセージが届きました。

「バリの踊りや絵画がもっと多くの方に知って頂けて、その素晴らしさ感じて頂けると良いですね! そう信じてこれからも精進しようと思います!」

そう思わせる何かがあるんですよね。ボランティアで出演された皆様(ちなみにワヤンの語り部さんは午後の新幹線に飛び乗って浜松から参加されたそう)、会場の観客との調和と一体感。また、来年も会いたい、そう思いました。素敵な時間をありがとうございました。

2014.8.2

アンタラ新作『海の女神に祈りを捧げる』

こんにちは、坂本澄子です。

心洗われるような作品に出会いました。Pickup artist #001でご紹介しているアンタラさんの最新作『海の女神に祈りを捧げる』です。覚えておられる方もおられるかも知れませんが、バリアートショールームの最初の絵画展のタイトルが『青い海を描かない作家たち』でした。同じバリでも、海辺のリゾートとは違う世界があることをお伝えしたかったので、敢えてこのタイトルを選んだのですが、実際、バリ島のおヘソのあたりに位置するウブドの人たちが海に出かけることは滅多にありません。1年に一度の大切な日を除いては。

ブログ156_ムラスティバリ暦の新年ニュピは島中が祈りと静寂に包まれる日、その前には島中を浄化する一連の儀式が行われます。そのひとつがムラスティ。ウブドの寺院のご神体を村人総出で海辺まで運び海水で清める日です。そのムラスティに海辺で祈りを捧げる女性を描いたこの作品、白濁する波しぶきがどこまでも続き、久々に心洗われるような感動を覚えました。

モデルは少し若かった頃の奥様(今も十分お綺麗です^_^)、そして、海辺の村サヌールの近くのこの浜辺は、アンタラさんが最も楽しかった思い出として語ってくれた、家族旅行をしたときに見た海だそう。バリの人、特にウブドに住む人たちはバンジャールと呼ばれる共同体で生活しているため、毎週のように共同で行う農作業や祭礼があり、旅行などで村を離れること自体がとても珍しいことなのです。

Ritual in the Temple,150 x120ところでこの作品、今ちょっと考えていることがあり、そのために描いてもらった長さ150cmの大作3点のうちの一つなんです。右の作品『真夏の祭列』もそう。このお話についてはまたの機会にお話しますね。

今日も暑い一日になりそう。お身体に気をつけてお過ごしください!

<関連ページ>

pickup artist アンタラ編

アンタラ作家と作品

バリ島の新年ニュピ (2014/1/29ブログ)

絵画展『青い海を描かない作家たち』 (2013/4月)

 

2014.7.30

一枚の絵を前に語り合った夜

OLYMPUS DIGITAL CAMERAこんにちは、坂本澄子です。昨日はウィラナタ新作鑑賞会『光の風景』にたくさんの方にお越しいただき、ありがとうございました。初めての交流型の展示会で、何かと行き届かない点があったのではないかと思いますが、作品の素晴らしさについては皆様に喜んでいただけたのではないかと思います^_^ 小さなギャラリーがいっぱいになるほどの盛況ぶりで、本当に感激致しました。ささやかな活動ではありますが、これからもバリ島のよい作品をご紹介していきたいと思っています。

『一枚の絵』という名の下、ギャラリーにたった一枚の絵だけを展示するという、本当に贅沢な企画でした。Art Space RONDOのオーナーの丸山則夫さんと小林清美さんが照明を初め様々な工夫してくださって、とても居心地のよい空間ができあがりました。写真のように作品の前に置かれた長椅子に座っていただき、初めて居合わせた人どうしで絵から広がる様々な語らいが始まり、ほとんどの方が1時間近くいてくださいました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA4時のオープニングから時間が経つにしたがって、窓から入る光が移り変わり、実際に絵の中でも日暮れが進行しているような錯覚を覚えるほど。「見るたびに違った印象を受ける絵だよね〜」と、どなたかがおっしゃると、「ほんとそうですよね。こちら側から見ると、棚田の高低差が感じられますよ」「あら、私の方から見ると、たんぼの水面が鏡のように光って見えます」と会話が始まり、そのうち、皆さん場所を移動されたりして^_^  

実は、この会話から気がついたのですが、この作品、どの角度から見ても見どころと言いますか、新たな発見があるのです。さすが、画家が半年以上向き合ってようやく完成されたもの。その間に、あらゆる角度から見てこの絵の空間が美しくあるよう手がかけられたことを改めて感じました。昨日の雰囲気を画家のウィラナタさんにもお伝えしたいと思います。

この作品、こちらにアップしましたので、ぜひご覧くださいませ。

次回展示会は9月18日(木)〜21日(日)@パレットギャラリー麻布十番です。こちらも楽しい企画になるよう準備を進めてまいります。

<関連ページ>

ウィラナタ新作 『光の風景』

 

 

2014.7.19

作家×注文者が創り上げた「一枚の絵」(前編)

こんにちは、坂本澄子です。

SOKI-80x100-b

前作の『BALI ISLAND』。80x100cmの壮大なスケールで
祭礼の島バリを描いてもらいました。

またひとつ、新たな感動が生まれました。以前ブログで注文制作の様子をご紹介したソキ(I KETUT SOKI)『BALI ISLAND』、覚えておいででしょうか。展示会にも特別に展示し、多くの方に見ていただきました。

同じお客様から「まだ具体的なイメージではないんですけどね…」と次の制作のご相談を受けたのは4月頃のこと。

「人生の祭礼を一生のつながりとして表現しながら、常に近くで見守る神々をソキさんが描くとどうなるのかな〜、なんて思っています」

「・・・?!」

最初は正直こんな感じでした。そして、お電話とメールとでやりとりを重ね、お客様がイメージされていることがおぼろげながらわかってきました。誕生→成長→成人→結婚→出産→死と続く人の一生とそれぞれの節目で行われる祭礼、そして、それらを見守る八百万(やおろず)の神々。前回の作品がバリ島各地の文化・風習を描いたものだったのに対し、人の一生と神々の役割いう視点で描くもうひとつのバリ島。それがお客様のご要望でした。

ソキさんの大きく力強い手。この手が絵筆を持ち作品が生み出されます

ソキさんの大きく力強い手。
この手が絵筆を持ち作品が生み出されます

しかし…、これをソキさんに何と説明したらよいものやら…。ちなみに、ソキさんは英語は簡単な挨拶程度しかできませんし、かたや私はインドネシア語、バリ語はこれからという状態(^o^; そこで協力してくださったのが、現地パートナーの木村さんとテギさんでした。テギさんは私がウブドでいつも泊まる宿のご主人、以前日本の着物の絵付けの仕事をされていたことがあり、日本語はお上手。しかも、奥様はソキさんの姪という関係なのです。おふたりがお客様のイメージを的確に理解して下さったおかげで、ソキさんからは「初めての試みですが、是非取り組んでみたいと思います」と意欲的なお返事をもらうことができました。

Soki 25-5-2014

下絵の途中。木村さんが何度もアトリエに足を運んでくださり、お客様の意図を再度お伝えして修正をお願いしたことも。

この後も大事な局面が続きました。ソキさんは構想にかなりの時間をかけておられましたが、なかなかこれといったイメージが浮かばない様子。 最初の一ヶ月はスケッチを繰り返す、いわば生みの苦しみでした。

この時のことを後から伺うと、ソキさんは笑って「神様にお祈りを捧げました。すると間もなく、頭の中に構図のイメージを授けられ、タイトルが決まったのです。それからは、下絵の制作から彩色までスムーズに進めることができましたよ」

ソキさんのつけたタイトルは『 LAHIR, HIDUP, MEMINGGAL (誕生、生活、死 ) 』でした。 (次号に続く)

<関連ページ>

SOKI 作家&作品紹介ページ バリ島の主要美術館が作品所蔵する画家の素顔に迫ります

ご注文制作の流れ お客様のイメージをこんな風に作品にしていきます

ヤングアーティスト・スタイル オランダ人画家アリー・スミットから受けた影響とは

 

2014.7.16

幻想的な光の創り出す世界

 

地底湖の上に渡した通路。足下には深さ35mのドラゴンブルーに輝く世界が

地底湖の上に渡した通路。足下には深さ35mのドラゴンブルーに輝く世界が

こんにちは、坂本澄子です。日曜日から東北地方を旅しています。西の生まれの私、実は東京に来るまで地図で青森の下は何県?!みたいなオハズカシイ状態だったのですが、一度旅してからは温泉がいっぱい、風光明媚な緑と水の風景、様々な郷土料理と、すっかり東北地方の魅力にはまってしまいました。

今回訪れたのは岩手県。世界遺産の中尊寺、毛越寺など、奥州藤原氏が三代に渡り栄華を誇った歴史をたどり、世界有数の透明度と水深(98m)を持つ地底湖で知られる龍泉洞で自然の神秘に触れ…と、ひとつひとつご紹介していたらきりがないくらい。

そんな中、印象的だったのがつなぎ温泉で行った「ホタル鑑賞会」。ホタルと言えば、遠い記憶にある、おばあちゃんちの田舎で見た畦道を舞う幻想的な姿、そんななつかしさにつられて参加してみました。場所は御所湖というダムで塞き止められてできた人造湖の近くにある菖蒲園。いました!その数、百匹近く。光を放ちながら飛ぶのはわずか一週間。この間にパートナーを見つけ、水際の苔などに産卵しその一生を終えます。この光るという行為は多くのエネルギーを消費するので、夜通しずっと光っているのではなく、一晩に約3回、だいたい光る時間が決まっているそうです。ちなみにホタルは身体の後ろの下の部分が発光し、アピールするかのように高く飛ぶのはオス。この光景を写真でお見せしたかったのですが、淡いホタルの光は、1分間シャッターを開けっ放しにしないと撮れないそうで、残念ながら私のデジカメではムリでした。

ところで、日本ではホタルは光るものですが、世界に2000種類いると言われるホタル、海外ではむしろ光らないものが多いそう。つまり、見た目は小さめのゴキブリ。あ〜、日本に生まれてよかった。ちなみに、バリ島のウブドで見たホタルも光っていました。そのあたりの田んぼに一匹、また一匹という感じで普通に見られます。しかし、ウブドも開発が進んでいますから、そのうちどこでもというわけにはいかなくなるかも知れないですね。

星空が垂れるようなホタルの乱舞やドラゴンブルーに染まる龍泉洞の光の織りなす光景を見ていると、心豊かなイマジネーションの世界に思いを馳せることができます。見たままを写真に残すことは容易ではありませんが、絵にはその時の思いを込めて残すことができます。子供の頃の情景を幻想的な光と影のコントラストで表現したウィラナタの作品にもまさにそれを感じます。

bnr-area-02一枚の絵を前に感じるままを語り合う、そんな交流もできるイベントを企画しました。もちろん、ひとりでゆっくり鑑賞するもよし。一枚の絵がどれだけ多くのものを与えてくれるかを是非見に来てくださいね。7月29日(火)16:00〜20:00@Art Space RONDO銀座。詳しくはこちらを。

<関連ページ>

ウィラナタ新作鑑賞会『光の光景』開催要領 

2014.7.12

林檎が語りかける”アートのある暮し”

こんにちは、坂本澄子です。台風が去っていったら急に蒸し暑くなりました。いよいよ夏本番ですね。

昨日の夜、東京メトロ有楽町線で帰宅中のこと。「今夜はとても月がきれいです。美しい月を見上げながら気をつけてお帰りください」と車内アナウンスが。なんと風流な車掌さん!地上に出た後、思わず夜空を見上げると、雨上がりの雲が途切れたところからほぼまんまるなお月様がニコニコ顔を出していました。

昨日は銀座のArt Space RONDOに、7月29日のウィラナタ新作鑑賞会『光の風景』の打合せに行ってきました。その前日に届いたウィラナタの風景画は想像を超える出来映えで、ギャラリーのどこに展示しようか、照明はどうしようか、どんなお話をしようか…と、オーナーの丸山則夫さん、小林清美さんと楽しい会話で盛り上がりました。

153_APPaLE展実は、昨日RONDOにお邪魔したのはもうひとつ目的がありまして、金曜日からRONDOで開催中のAPPaLE展「りんごの里帰り」に、半年間手塩にかけて磨いた木の林檎を持っていったのです。通常、彫刻家が作品を最後まで仕上げますが、この企画、最後の磨きの工程を購入してくれた人に委ねるというものなのです。作家は八ヶ岳の麓に住む彫刻家の藤岡孝一さん。153_磨かれる前林檎は左の写真のようにまだゴツゴツと荒削りな状態で、8段階のサンドペーパーとオイルのキット付きで購入者に引き継がれます。「りんごの里帰り」というのは、林檎たちがRONDOに戻ってきて一堂に会するという訳です。

帰ってきた林檎たちを見ると、木の種類や磨き方で成長した姿が随分違います。里親はみんな「うちの子が一番可愛い」と親バカな状態(^o^;なんですが、仕上げにクルミの油を使った人もいれば、庭に咲いた椿のつぼみを砕いて抽出したという手製の椿油で磨いた人もいて、それぞれにこだわりが。IMG_3068オイルは最初のうちぐんぐん入っていきますが、どこかで飽和点に達するみたいで、全体がしっとりと潤った感じになります。

ちなみに、私は昨年12月に楢の木でできたちょい色白の林檎を購入し、オリーブオイルで磨きました。縦横に走った線が楢の持ち味だそうで、繊細な模様が何とも言えない味わいを出しています。この林檎、他と比べると一回り小さめ(右写真の中央)ですが、掌で包んだ時の感じが、手の小さい私にはちょうどいいんです。最初はゴツゴツ、ザラザラしていた表面が磨きが進むにしたがって、滑らかに、そして最後にはツルツルになる。そんな触感の変遷をこの半年間楽しんできました。機会あるごとにそっとなでてやると、これからもさらに表情が変わっていくのだそう。これもアートと暮らすことならではの楽しみですね。

このユニークな企画は、RONDOに集まってくる作家やお客さんたちとの何気ない会話から生まれました。最後まで自分でやらなきゃ気が済まない作家も少なくない中、藤岡さんはとても柔軟に受け止めて、「じゃあ、やりましょうか」と言ってくださったそう。RONDOにはそんな心と心、感性と知性が触れ合うような不思議な雰囲気があります。月に3〜4回、こんな独自性のある企画展示を行っており、今回ご一緒できることをとても楽しみにしています。

このステキな空間を『光の風景』はどんなふうに彩ってくれるでしょうか。ウィラナタ新作鑑賞会『光の風景』、どうぞお気軽にお越しください。7月29日(火)16:00〜20:00@Art Space RONDO 銀座、詳細はこちらです!

<関連ページ>

Kocoza / Art Space RONDO Facebook page 

ウィラナタ新作鑑賞会『光の風景』開催要領

2014.7.9

12年ぶりに我が家を訪ねて思ったこと

こんにちは、坂本澄子です。

いきなり私事で恐縮ですが、東京に来る前に20年ほど関西に住んでいました。その頃住んでいた家を売却することになり、昨日契約に行ってきました。その家を見るのは引っ越して以来ですから、かれこれ12年ぶり。あのあたりは当時とあまり変わっておらず、懐かしい景色に思わず胸がじーん。「駅からの坂がキツかったなあ」などど、思い出をなぞりました。決して平坦な道ではなかったけれど、それは今の自分に繋がっているんですよね。

相手の方とは初めてお会いしたのですが、同世代の感じのいいご夫婦。嬉しかったのは、その家を買うことを決めて下さった理由が、以前私がその家を買った時と同じ理由だったこと。しかも、「初めて見に来たときに鴬が鳴いたのがとても印象的で、その後も色々物件を見ましたが、やっぱりここに決めようって思いました」と、背中を押された理由まで一緒だったのにはビックリ、そしてとても温かい気持ちになりました。同じ感性を持った人に家を受け継いでもらえる、これもきっと何かのご縁ですね。

変化や多様性に順応し受け入れることが重視されることの多い昨今、こんなふうに変わらないものにほっとする気持ちが、ややもすると進歩がないと受け取られることがあります。人から言われなくても、自分で何となく後ろめたい気持ちになったりとか…(^o^;  でもね、バリの人たちの生き方を見た時に、変わらないものを自分の中心軸として持つことの大切さをいつも思い出させられるんですよ。

刈り取り直前の田んぼウブドなどの農村部に行くと、今でも共同体(バンジャール)を基盤とする伝統的な生活が色濃く残っています。農業に従事していない人であっても祭礼は共同で行いますから、月に何度かは仕事を休んで寺院に出掛け、大きな祭礼の前などは1ヶ月以上も前から準備を行います。そのため、旅行などで島の外に出かけることはあまりないですし、ホテルやレストランなどで働いているのは(労務管理上の理由から)主にはジャワから出稼ぎに来ている人たちです。それくらい、徹底しており、そこには「神々の声に耳を傾け、自然と共存する」という共通の世界観があるように思います。

同じ農耕民族の日本も、少し前までこれに似た価値観がありましたよね。日本人がバリの田園風景画を見て「懐かしい」と感じる理由のひとつがそれではないかと思います。私も初めてバリに出会った時、そう感じました。過去を懐かしむのは一見立ち止まっているように思えるかも知れませんが、歩いて来た道程を振り返ることにより、現在の立ち位置と進むべき道を再確認する行為だとも言えるのではないでしょうか。

bnr-area-02バリの風景画家ウィラナタは、10歳の時に亡くなった父親との思い出から呼び起こされる光の風景を描き続けています。感傷的な想いからというよりも、少年時代の原風景が、現在の画家自身の心の拠り所となり、創作活動においてはインスピレーションの源泉となっているからです。いつもはぶっきらぼうな彼が父親のことを語る時の目は、静かな情熱に満ちています。

そんな画家の素顔を少しでもお伝えできればと写真とビデオを録ってきました。7月29日(火) ウィラナタ新作鑑賞会『光の風景』でご覧いただきたいと思っています。また、作品の繊細な美しさを現物で見ていただきたいので、その日まで敢えてウェブにはアップせずその日を初公開とする予定です。(30日にウェブにも掲載します)

アートと対面し、時の経つのを忘れて一人静かに楽しむのもよし、他の人と会話を楽しむのもよし。そんな空間をご用意してお待ちしています。20時までやっていますので、是非お仕事帰りにお立ち寄りください。

<関連ページ>

ウィラナタ新作鑑賞会『光の風景』 開催概要