挑戦し続ける画家 アンタラ
こんにちは、坂本澄子です。
画家には2つのタイプがあるのではないかと思います。
ひとつは作風が確立されており、得意とするモチーフで、安定した制作を行うタイプ。
もうひとつは、新しいものを取り込み、作風がどんどん変化(進化)するタイプです。
後者と言えば…真っ先に思い浮かぶのは、ピカソでしょうか。。
スペインからパリに出て、社会の底辺で生きる人々を悲哀を込めた色調で描いた「青の時代」、恋人を得て幸せな気持ちが作品にも表れた「ばら色の時代」。そしてその2年後には、ピカソは狂ったかとまで言われるほどに、一大センセーションを巻き起こした『アヴィニョンの娘たち』に始まり『ゲルニカ』で大成された、あの形を大きく崩した生き物たち。
生涯にわたってその作品は変わり続けました。
この2つ画家のタイプは、バリ島の画家さんにも当てはまりそうです。
注文する側からすると、前者の画家さんはある意味とてもラクです。
予想した通りの完成品を届けてくれます。
同じ題材が続くと、別ものも描いてみませんかと、お願いしたくなることも ありますけどね。
後者のタイプは、どんな作品になるか、期待半分、ハラハラドキドキ。
ただ、バリの画家さんたちはさすがプロ。ちゃんと注文主の期待値を汲み取って描いてくれますので、「ヒョエ〜!」なんてことは、今の所ありません。
そんな中にあっても、画家として常に新しい表現への挑戦を恐れない姿勢を垣間見るとき、熱いものが迫ってくるように感じることがあります。
そんな画家のひとり、アンタラさんのアトリエに久しぶりに伺いました。
9月に首都ジャカルタで行われる、ダンスをテーマにした企画展に向け、制作の真っ最中でした。
広いアトリエには、完成した作品、制作途中の作品がところ狭しと。
得意の人物を中心にすえた作風は同じですが、色使いにある変化がありました。
ビビッドな色。
それは、人物の動きのダイナミズムに呼応し、内面の明るさ強さを表現しているように感じました。
一方、そこには「アンタラさんの絵」という懐かしさも。
バリの伝統的な生活、文化を何よりも愛し、人を愛し、バリ島に暮らす自身を誇りに思う、
画家の思いが変わらずそこにあったからです。
イーゼルにかかった絵には、今まさにカーテンを開き、姿を現した女性が描かれていました。
まだ描き始めて間もないのに、ひょっこりとキャンバスから出てきそうなほどの存在感。
そして、カーテンの向こうの空間には何があるのだろう…と
想いを馳せて、しばし、見つめました。
今回ご紹介した作品に関する詳細は、お問い合わせからどうぞ。
5周年記念セールにもアンタラさんの作品がありますので、ぜひご覧ください。
今なら、額縁が2種類から選べます!
バリアートのある暮らし こだわりの空間に
こんにちは、坂本澄子です。
関東甲信越地方では、今日「記録的な6月の梅雨明け」を迎えたそうです。
いよいよ熱い夏がやってきますね。
空を見上げると、火星、満月、木星が並んで見えました。
火星のオレンジの光の美しいこと。
さて、今日は「バリアートのある暮らし」をお届けします!
横浜市のI 様に、作品を購入いただいたのは、今年1月のこと。
そして、つい先日お部屋に飾りつけされ、私もご自宅にお邪魔してきました。
6ヶ月も??
はい。実は、I様ご夫妻はシンガポールでお仕事をされていて、
帰国されるのは年に数回なのです。
しかも、滞在時間は数十時間という超ご多忙ぶり。
昨年、横浜にご自宅を新築され、アンティークの調度品や選りすぐりのアートでこだわりの空間づくりが進行中。
斬新な設計のお住まいですが、中でも素敵なのが、地下にある書斎です。
チベットから届いた、かくれんぼができそうな大きな収納箱。
魔法でも書かれていそうな書物。
ぬくもりのある木の床にゆったりとしたソファ。
照明を抑えた空間にいると、何だかもう別世界です。
そんなお部屋に飾っていただいたのは、幻想的な月あかりに魅入られてしまいそうな、ウィラナタさんの『満月の夜に』です
シンガポールから目と鼻の先のバリ島には何度も足を運ばれ、ギャラリーを訪ねてはいろんな作品をご覧になったそうです。
もちろん、ウィラナタさんの光の風景にも早くから注目されていました。
バリアートショールームのウェブサイトも、以前から見て下さっていたそうです。
最終的に「これにしよう」と決めて連絡を下さったと伺い、感激しました。
凝縮された時間を日本で過ごされ、再びシンガポールに戻られる途中、空港からわざわざお電話をくださり、写真を送って下さいました。
今回のご帰国では、アンタラさんの作品も買ってくださいました。
留守を守っておられるご両親様にも、かわいいと好評だったそうです。
地下へ降りる階段の踊り場には、GAMAさんの緋色の熱帯スイレンが白い壁によく映え、
廊下にはANTARAさんの2人の少女。
書斎までのアプローチは、まるでアートが誘うショートトリップです。
これでまた、帰国される楽しみが増えたらいいなあと、嬉しさのおすそ分けをいただきました。
5周年記念セールを好評開催中。ウィラナタ、アンタラ作品を今だけの特別価格で。
人間・高山辰雄展 森羅万象への道
こんにちは、坂本澄子です。
涼やかな風が頬に心地よく、よい季節ですね。
ある方に勧められ、世田谷美術館で開催中の「人間・高山辰雄展 森羅万象への道」を見に行ってきました。
東急・用賀駅から徒歩20分。閑静な住宅街です。
美術館行きのバスもありますが、様々な花が迎えてくれる美しい街並みを見ながら歩くにはちょうどよい距離。また、美術館は砧公園内にあるため、後半は大きな樹々が作り出す涼しい木陰を通ることができます。
実は、高山辰雄さんの作品を見たのは、今回が初めてでした。
日本画の世界では、東山魁夷、杉山寧と並び、「日展三山」と称された画家。
人間をテーマの中心に据えつつ、自然、宇宙への広がりを感じさせる作品たち。
気がついたら、再入場して二回目を見ていました。
最初は、色に惹かれました。
ゴーギャンに傾倒した時期があったそうです。

『室内』1946年、大分県立芸術会館 収蔵
ゴーギャンについては、偶然にも少し前に映画を見ました。
貧困や家族からも理解されない孤独と戦いながら、自らの芸術を貫く姿に、同じ絵を志すものとして深い感動を覚えた記憶がよみがえりました。
高山辰雄さんも、帝展時代から入選を重ねた日展に落選。一時は絵をやめようかとさえ思ったときに、ゴーギャンの伝記本を読んで勇気を奮い立たせたといいます。
その頃の代表作が『室内』です。
不規則な形をしたいくつもの鮮やかな色がパズルのように組み合わさった背景。そこに二人の女性が溶け込むように(いえ、見方によっては浮き上がっていると感じられるかも)描かれた作品です。
次に惹かれたのは背景でした。
まるで抽象画のように、形をなさない明暗と色だけで表現した背景。あるときはぼんやりと、またあるときは曲線を描くように表現された明るさ。
背景の曖昧さが絵に深みを与え、モチーフを幻想的に浮かび上がらせていると感じました。
作品の前を離れがたく、いつまでも見ていたのがこちらの作品『一軒の家』です。

『一軒の家』
一見どこにでもありそうな片田舎の風景ですが、左に描かれた明るい曲線。これはなんなのだろう。山の端のようにも見えましたが、そうでもなさそうです。
そして、ふと視線を移すと空には細い三日月が架かっています。
日常の風景が見ているつもりが、いつの間にか非日常の色を帯びてくるのです。
制作のテーマとして「人間」にこだわった画家は、たとえ風景を描いていても、常に人と意識して描いたそうです。
大分県出身の画家は、活動の拠点を東京に持ちながらも、晩年は故郷の風景を題材にした作品を多く描いています。
その代表作が、『由布の里道』。
今回の企画展の図録の表紙を飾っています。
道に沿って右に小さく井戸が見えますが、実際のその場所には井戸はなかったそうです。
しかし、自身がその風景になりきったとき、そこに乾きを覚え、井戸を描いたといいます。
数年後、その場所に本当に水が湧き出たと聞き、大変驚いたと、ご自身も著書『存在追憶 限りなき時の中に』の中で回想しておられます。
日曜日でしたが、六本木や上野の美術館のような混雑はなく、作品を近い距離でじっくりと楽しむことができました。
6月17日まで世田谷美術館で開催中の『高山辰雄展 森羅万象への道』。ぜひ行ってみられてはいかがでしょうか。
太陽の塔のお腹に入ってきました
こんにちは、坂本澄子です。
太陽がいっぱいのGWが終わったら、冷たい雨ですね。
GWはいかがお過ごしでしたか?
私は、岡本太郎さんの『太陽の塔』の内部が復元されたと聞き、大阪に見に行ってきました。
大学〜社会人前半の20年を大阪のしかも北摂で過ごしたので、「太陽の塔」は身近な存在だったはずなのですが、距離的に近いのと、知っているのとはえらい違い。お恥ずかしながら「内部」があったなんて、この再生イベントがあるまで知らなかったのですよ。
なにしろ、万博が閉幕してもう48年。その間、封印されていたのですから。
この企画展、当時を懐かしむ世代や岡本太郎さんのファンが押し寄せ、随分先まで予約で埋まっているそうですが、ふるさと納税の優先予約枠のおかげで、GWにもかかわらずじっくり鑑賞できラッキーでした。
万博記念公園に到着すると、ゲートで30分待ち。それもそのはず、エキスポランドあり、フリマあり、カレーEXPOありとGWはイベント満載。入場後は比較的空いている太陽の塔を囲む芝生に沿って一周し、太陽の塔をまずは外側から360°鑑賞しました。
お腹についている「太陽の顔」は現在を
頂部の「黄金の顔」は未来を
そして、背面の「黒い太陽」は過去を表しています。
ここまでは多くの方がご存知でしょう。
でも、「太陽の塔」には4つ目の顔があったことは、私を含めて意外に知られていないのでは。
塔の内部にあった「地底の顔」です。
太陽の塔は、もともと万博の会期が終わった後はとり壊される予定だったため、閉幕後は展示物は内部から運びだされ、多くは「川崎市岡本太郎美術館」(などで保存・展示されていますが、「地底の太陽」だけはその後行方不明になっているそうです。
顔の直径が3m、左右のフレアを入れると全長11mの巨大な黄金の仮面、一体どこに…と思うと、なんともミステリアスです。
今回の内部公開では、当時の写真を頼りに復元された「地底の太陽」が地下に展示されています。呪術的な存在と言われ、テーマを支えた世界の仮面や神像が共に展示されています。バリ島とおぼしきお面もありました。

「太陽の塔」公式サイトより
70mの塔の内部にそびえ立つのが、高さ41mの「生命の木」。5色に塗り分けられた幹は五大陸を表すそう。
原始生物から人類の祖先クロマニヨン人まで33種の生き物たちが、進化の歴史を追うように上へ向かって配置され、吹きあげるような生命の力を感じます。
ほとんどのオブジェは修復されたり新たに作り直されて、元の枝に戻されたそうですが、一番大きなプロントサウルスとゴリラだけは、動かせなかったのか当時のまま残されていました。
毛に覆われていたはずのゴリラの頭部は機械仕掛けがむき出しになり、形あるものはやがて朽ちる、半世紀の時の流れを目の当たりにしたようでした。
階段を上りながら生き物の進化の過程を追っていきます。
永久保存が決まってから、補強のため壁を20cm厚くしたり鉄骨部材を入れたことで、その分塔の内部が狭くなり、木の枝がところどころ階段へと突き抜けています。これがなかなかよく、当時の制作意図とは別ですが、一層エネルギーを感じるものになっています。
壁一面が赤い襞のようなオブジェで覆われ、本当に体内にいるような錯覚。音楽、照明が一体となった空間です。
「生命の木」のてっぺんまで上るとそこは踊り場になり、太陽の塔の腕へと繋がっています。
かつては、長さ25mの腕をエスカレーターで斜めに上昇し、腕の先端の開口部から建物の屋上に出ることのできる設計だったそうです。
今はエスカレーターは撤去され、むき出しの鉄骨がライトに照らされ幻想的な光景を描きだしていました。
とにかくスケールが大きく、太陽の塔自体はもちろん、あらゆる展示物が解説などまるで寄せ付けない存在感を放っています。
ほとばしる生命のエネルギーにただ身を任せる…これが「太陽の塔」の正しい鑑賞法のようです。
朝日新聞digital「再生 太陽の塔」に動画付きで紹介されていますので、ぜひどうぞ。
2018年 内宇宙と外宇宙
こんにちは、坂本澄子です。
今日は私自身の制作活動について、書かせていただきたいと思います。
毎年2つの公募展で作品発表しながら、ご注文をいただいて制作する活動を行っています。
昨年のテーマは『Crossover – Tokyo and Bali』でした。
物質的な豊かさを享受し、変化に富んだ都会生活を送ることと、
自然をありのままに受け入れ、共存していく精神的な豊かさ。
そのどちらにも惹かれる、私の心情を描いたものです。
この作品は、昨年9月6日〜18日に新国立美術館で開催された「第102回二科展」に出品したものです。東京とバリの象限を分けることで、一枚の絵に共存させる試みをしました。
それらの間を繋ぐように飛んでいる鳥は、頭の中で常に東京とバリを行ったり来たりしている私自身でもあります。
同じコンセプトでもう2点。これらは11月に東京都美術館で開催された、「第43回現代童画展」に出品しました。
今年はこの2つの世界を1枚の絵に共存させることから、さらに進化させ、対となる2点の作品として描けないかと考えています。
しかし、「対」として描いたつもりでも、その意図が果たして見てくださる方に伝わるかどうか、その難しさに毎日悪戦苦闘しています。
例えば、地球と宇宙との関係に例えると、
前者は前人未踏の外宇宙への飛翔(外宇宙)であり、後者は古代人から続く月への神秘的な想い(内宇宙)といったふうにです。
その第一弾となる小品『水の惑星 〜 外宇宙への飛翔』を、明日から始まる春季現代童画展(4月2日〜8日@銀座アートホール)に出品します。
お近くにお越しの節には、ご高覧いただければ幸いです。(入場無料)
バリアートのある暮らし 濃密な深いエネルギーを感じる風景
こんにちは、坂本澄子です。
突然ですが、
高額な絵の場合、やはり実物をご覧になりたいですよね。
今日お便りをご紹介する、大阪府吹田市のA様も、昨秋のバリアートサロンに申し込みをいただいていたのですが、急にご都合がつかなくなり、「次の機会にぜひ」と申し上げたものの、大阪からではなかなか…。
春の足音を微かに感じる2月のある日、A様からWIRANATAさんの『静寂に包まれる朝』の購入について相談したいと、ご丁寧なメールを頂戴しました。
「もし東京へ来られるついでがありましたら、お姉さんのガルーさんが描かれた風景画など、他にも作品をご覧になって決めていただけますよ」
そうご案内したところ、既にこの作品に決めておられるとのこと。
そこで、お受け取り後、一週間以内であれば、理由に関わらず返品可能であることをお伝えして、ご安心いただきました。
そして、いただいたお便りがこちらです。
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想像以上に、濃密な深いエネルギーを感じています。
朝の太陽の光に包まれながら、大自然の生命が躍動し始め、また、人間の日常も大自然の営みに溶け込んでいる光景、
戻りたい場所に出会えたような、懐かしさと大自然の源のような力強さも感じています。
素晴らしい絵に出会え、私の日常や地球が豊かな光に包まれていることをあらたて感じ
ています」
**********
本当に嬉しかったです。
私がこの絵から感じたことを、同じように感じてくださる方があり、感動は連鎖するものですね。
A様は昨年NHK Eテレ『明日も晴れ!人生レシピ』をご覧になり、初めてバリ絵画をお知りになったそうです。
私の小さな活動が実を結び始めた嬉しさに、身が引き締まる思いです。
繊細な風景画のように、写真ではお伝えしきれない作品も、現物をご覧いただくことで、ご納得いただけると思います。
地方にお住いの方も、東京方面に来られる機会がございましたら、ぜひお気軽にバリアートショールームにお越しください。(事前にご予約をお願いします)
また、さらに嬉しいことには、A様は番組の中で紹介された、私が描いた桜の絵をご覧になって、
「こぼれるほどに花が咲き誇った桜の木の絵に、何とも言えない感動を受けた」と言ってくださいました。
折しも、桜が咲き誇る季節。
100号の大きな桜の絵を取り出してきて、ひとり夜桜を楽しみました。
花いっぱいの春。
季節のオススメページ「SWEET FLOWERS」もどうぞご覧になってくださいね。
クリキ村に伝わる細密画ができるまで
こんにちは、坂本澄子です。
「これぞバリ絵画」と胸を張ってご紹介できる新作が完成しました。クリキ村に伝わる伝統的な手法で描かれた細密画です。
このところ、飾りやすい花鳥画、風景画が多かったのですが、バリ絵画を扱う者としては、伝統絵画もきちんとご紹介したいという思いがあり、昨年末から題材を検討していました。
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輪廻転生を信じるバリ島では、死は終わりではなく、新たな生の始まりと考えられており、とても盛大な、まるでお祭りのような火葬の儀式が行われます。
きらびやかに装飾された多重の塔は棺を乗せ、火葬する場所まで運ぶもの。最近は下に小さなタイヤがついて、日本のお祭りでも使われる山車のように押して歩けますが、以前は村人総出でお神輿のように担いでいました。
そして、火葬に欠かせないのが、ランブー。牛を象った火葬用の棺です。写真をご覧ください。こんなに大きいのですよ。
そして、会場に着くと、そびえ立つやぐらのようなものを使って、塔から棺を下ろし、張り子状に空洞となった牛の体内にご遺体を移し、火を放ちます。金銀で美しく模様が描かれたランブーが、焼け落ちていくのはもったいないほどです。
そんな壮大な儀式を思いながら、細密画の伝統絵師のライさんにお願いしました。
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それでは、『王家の火葬式』が完成するまでをご覧ください。
まず、画用紙をベニア板に水張りしてもらいました。
水張り?
はい、日本画などでよく行う手法で、画用紙にたっぷりと水を含ませ、濡れた状態でベニア板に張り付け、テープで端を固定します。乾くと紙が縮むため、シワがピーンと伸び、少々水を含んだ絵の具を乗せても、画用紙がヨレヨレになることはありません。
おおらかなバリ島では普通こんなことはしませんが、少しでも良い状態で作品をお届けしたいと、Youtubeで水張りの動画を見てもらったところ、ライさん、興味津々でやってくれました。
次に下絵です。
鉛筆で細かく下絵を描いていきます。バリの伝統絵画の特徴は、下絵をしっかり描くこと。絵の具を塗りながら、形をとっていく西洋絵画とはアプローチが異なります。100人を超える村人たちもひとりひとり丁寧に描かれました。
下絵が終わると、墨で輪郭をとりながら、影になる部分に陰影をつけていきます。墨の薄め加減を調整し、ざっと五段階くらいでしょうか。
そして、彩色にかかります。
塔には様々な装飾が施されていますが、細かい描き込みは一通り色を塗ってから、全体のバランスを見ながら、仕上げていきます。
このように細かい作業を積み重ねて、ようやく完成!!!
塔の装飾もここまで描き込まれました。
様々な色が使われていますが、全体として落ち着いた色調でまとまっており、伝統絵画らしい格調高い仕上がりです。
ちなみに塔の階数は奇数と決まっており、多層になるほど、身分が高いことを表すそうです。
この塔は数えてみると11層ありますが、11層が最大で王族の儀式であることがわかります。
絵師としたの腕のよさももちろんですが、この細かい作業を継続する集中力と忍耐力は感動もの。
クリキ村はウブドの喧騒から離れ、今でも農業中心の静かな村。細密画発祥の土地として、腕のよい絵師が多いことでも有名です。なかでもライさんは、壮大な構図の作品が描ける高い力量の持ち主。バリアートショールーム5周年にふさわしい作品を描いていただきました。
伝統絵画をお探しなら、ぜひ!自信を持っておすすめします。
季節のオススメ 花の力をいただく
こんにちは、坂本澄子です。
高知での開花宣言第一号を皮切りに、桜前線北上中。東京でも桜のつぼみがふっくら。あと数日で咲き始めそうです。皆様の街ではいかがですか?
年を重ねるごとに時の流れが早くなると感じるこの頃、今年こそはゆっくりと、春の花々を楽しみたいなと思っています。
さて、先日、ラジッグさんの花の新作をご紹介したところ、嬉しい反響をいただきました。
ラジッグさんのいつもの画風と違うので、「あれ?」っと思われた方もあったかもしれません。
実は、ラジッグさん、これまで2回、大きく画風が変わった時期があるのです。
画家の画風が変わることは珍しいことではなく、ピカソなどは、愛する女性が変わるたびに画風が変わったというエピソードもあるくらい。
5年前に初めてアトリエに伺ったときには、既に今回ご紹介したような、花びらを間近にとらえた、大きな絵を描かれていました。
自宅ギャラリーには、おなじみとなった、額からはみ出すように描かれたそれまでの作品と、花の大きな作品がちょうど半分:半分。さらにはご近所の絵描きさんたちの作品も加わり、とても賑やかでした。
日本のお客様には前者の作品のファンも多く、バリアートショールームでは、あえて前のスタイルにこだわり、写真のようなバリ島らしい熱帯花鳥画を中心に制作をお願いしてきました。
画家としての表現スタイルが変わっておられるのに、わざわざ以前の画風で制作をお願いするのはどうなのかしら…と思うところはありましたが、ラジッグさんご本人はいつも快く引き受けてくださっています。
そんな中、今の作風をご紹介したいと思ったきっかけは、あるお客様の「見ていると元気が湧いてくる絵ですね」というお言葉。形よりも、絵から伝わってくるものが大切と、今更ながらに気づきました。
ラジッグさんは花や鳥をしっかりと観察し、花びら一枚一枚の微妙な表情を丁寧に描きわけておられます。
確かな技量が、匂い立つような、みずみずしい花の生命力となり、見る人に元気を与えてくれるのだと思います。
本格的な春はもうすぐそこ。
新生活を始めるお部屋に、春の風を呼び込んでみませんか。
詳しくは、《新作情報》春です!ラジック FLOWERSをご覧ください。3点追加。
LABAさんの絵が繋いでくれたご縁
こんにちは、坂本澄子です。
バリの画家さんたちの絵を扱う傍ら、私自身も画家として小さな歩みを始めています。
昨年、その様子がNHKで紹介され、私の作品にもお問合せをいただけるようになり、とても嬉しく思っています。
そこで、今日はちょっと照れくさいのですが、プンゴセカンの巨匠・故LABAさんの作品が繋いでくれたご縁で、岐阜県の児島さまからご依頼いただいた、とても大きな絵(173x150cm)のお話をさせてください。
舞台は、築100年を超える古民家です。
以前は土間だった場所をリノベーションし、吹き抜けの玄関ホールが作られたのは10年前のこと。
以来、「壁いっぱいの大きな絵を飾ることが夢だった」とおっしゃる児島さまは、第一弾として、昨年10月、1階部分にLABAさんの遺作『緑にいだかれる午後』を購入されました。
それがご縁となり、2階部分の絵のご相談をいただき、
「LABAさんの絵と横幅(150cm)を合わせて、天井まで届く絵を描いてください」
と、ご依頼を受けるまでになりました。
この玄関ホールには他にはない、「ある特徴」がありました。
それは、天窓から差し込む長方形の光。
磨りガラスを通して、昼間は柔らかな陽射し、夜は幻想的な月の光が、それぞれに空間を彩り、その位置の変化で、季節の移り変わりを感じるのだそう。
児島さまからそんなお話を伺いながら、私の脳裏に浮かんだひとつのイメージが、絵になりました。苦労したのは満月の光の輪。3回失敗してやり直し、4回目でようやく納得の行くところまできました。
そして、3月7日。ついに納品の日がやってきました。
リノベーションを担当された建設会社さんが来られ、4人がかりで、30㎏を超える巨体をひっぱりあげていただきました。
さすがはプロ。足場の不安定さなどものともせず、テキパキと作業は進みます。
ついに、2点の絵が対になりました。おつかれさまでした!
真ん中の和服姿が児島さま、屈強な(?) 男性たちは野村建設さんのみなさんです。
児島さまは着付けの先生。この後、ランチをいただきながら、和の美についてお話が盛り上がりました。私も古典模様に凝っていて、実はこの作品にも蓮の葉の陰の部分に、隠し味的に青海波を描いているんです。
児島さまには1月に東京で制作途中をご覧いただいたのですが、その時のことが、ご自身のブログの中で、着物との掛け合いでとても素敵に紹介されています。
「ひと夜月夜と真綿紬のお正月」も、ぜひご覧になってみてください。
「いつか個展が開けたら、和服でお客様をお迎えしたい」、それが次の目標になりました。
<関連ページ>
この記事を投稿しました後、児島さま、野村建設さま、それぞれに素敵なブログを更新されました。合わせてご紹介させていただきます。
オレンジ色に暮れなずむ空
こんにちは、坂本澄子です。
今日はKepakisan(ケパキサン)さんのステキな新作をご紹介させていただきます!
昨年秋、ウブドのプリ・ルキサン美術館で2ヶ月に渡って開催された、アグンファミリーの作品展。ドイツ人画家シュピースの幻想的な作風を今に受け継ぐ、画家さんたちが大集結。会場は魅力的な作品にあふれていました。
その中で、優しいオレンジの色使いが目を引いたのが、Kepakisanさんの作品でした。
「しばらくご無沙汰している間に、しっかりと腕をあげられた」
そんな印象を受けました。
早速、「この作品と同じ色合いで」とお願いして描いていただいたのがこちらの作品。
優しく一日が暮れていく時間。
牛を引いて帰途に着く農夫。
心身を鎮めてくれるムルカット(沐浴)
側では小さな男の子がおっかなびっくり手を差し出す。
静かなバリの風景。
沐浴については、あるお客様から
「バリ旅行では外せません。あの冷たいけど体が清められ新たなエネルギー行き渡る感じが大好きです!」
と教えていただいて以来、私も興味津々。今度ぜひトライしてみます。
Kepakisanさんには同じサイズでもう一点、棚田の朝の風景を描いていただきました。
近日2点同時入荷、どうぞお楽しみに!